内モンゴル・フフホトで「風が回すデータセンター」グリーン計算力が急拡大
中国本土・内モンゴル自治区の首府フフホトでは、草原の風が生み出す電力がデータセンターを動かし、AI時代の“計算力”を支える拠点づくりが進んでいます。電力コストと冷却のしやすさを武器に、国家戦略「東数西算(東のデータを西で計算)」の要所として存在感を高めています。
草原の風が、サーバーの電力になる
フフホト近郊のホリンゴル新区では、風力発電の電気が大規模タービンから生まれ、情報をミリ秒単位で処理するサーバー群を稼働させています。世界的にデジタル経済が伸びる一方、データセンターの電力消費とCO2排出が課題になるなか、中国は風力・太陽光など再生可能エネルギーが豊富な内陸部に、この高電力産業を置く動きを強めています。
「東数西算」とは? 何が起きているのか
フフホトのある内モンゴルは、「東数西算」戦略のもとで全国8つの計算ハブの一つに位置づけられています。狙いは、経済活動が集中する東部で生まれるデータを、資源条件の良い内陸部で蓄積・計算処理し、全国一体の計算ネットワークを育てることです。
コストを左右するのは“電気代”
中国華電の担当者、李翔氏は「計算産業の運用コストの約半分は電力消費。電気代が競争力を決める」と説明します。フフホトでは、風力発電所からデータセンターへ専用線で電力を直接流し、送電網の費用(いわゆるグリッド関連費用)を抑えられる点が強みだとされています。
涼しい気候が“天然の冷却装置”に
フフホトの平均年間気温は7.7度で、最大で年の半分ほどは自然冷却を活用でき、空調コストの削減につながるといいます。ホリンゴル新区の「京蒙インテリジェント計算センター」を率いる白洋氏は、北京のデータセンター案件と比べて「電力コストが約3分の2減った」と述べています。
計算力は12万2000ペタフロップスへ——設備産業も集積
フフホトの計算力は合計で12万2000ペタフロップスを超え、そのうち96%がインテリジェント計算(AIなど)向けだとされています。この規模が呼び水となり、サーバーやキャビネット、センサーなどを生産する45社が進出し、供給網(サプライチェーン)が形成されたという点も注目されています。
「計算力をネット通販のように」使うための仕組み
巨大な計算力は、必要な人に届いて初めて価値になります。現地の計算資源プラットフォームを統括する孫文達氏は、計算力の調達が「オンラインショッピングのように便利」になったと話します。資源を統合してスケジューリングや課金を効率化し、北京など他拠点とも接続しているといいます。
北京—フフホト間、往復5ミリ秒未満
プラットフォーム利用者の肖亮鵬氏は、北京とフフホトの間で「瞬きする間に50回往復する」ほどの応答性だと説明し、往復遅延が5ミリ秒未満だと述べています。リアルタイム性が求められる研究や、次世代AIモデルの学習などに使いやすい条件になります。
研究から酪農、都市の暮らしまで——“日常”に入る計算力
このグリーン計算力は、スーパーコンピューティング基盤として現在3600件超の研究プロジェクトを支援しているとされます。また、大手テック企業が開発する次世代AIモデルの訓練環境としての役割も担っています。
一方で、デジタルの外側にも波及しています。酪農分野では、牛の活動量や乳量、睡眠パターンをリアルタイムに把握し、無人搾乳設備が消毒から装着、搾乳までを標準化された手順で担う仕組みが紹介されています。
都市部でも、スマート駐車や交通の流れの最適化、AIを使った医療スクリーニング支援などに活用され、住民の生活をより機敏にする用途が広がっているといいます。
いま注目される理由:成長とグリーン転換を同時に進める実験場
2026年現在、データセンターとAIの拡大は電力需要を押し上げやすく、各地で「どこで、どんな電源で動かすか」が焦点になっています。フフホトの事例は、風力などの再生可能エネルギーと、冷却に有利な気候、さらに低遅延ネットワークという条件を組み合わせ、計算力産業を“持続可能性の前提”から組み立てようとする動きとして読めます。
同時に、計算力の集積が設備産業や地域産業の高度化にどう結びつくのか、そして需要拡大のスピードに対し電力・ネットワーク・人材の整備がどう追いつくのか。フフホトの次の一手は、デジタル経済の現実的な設計図を考える材料にもなりそうです。
Reference(s):
Prairie wind propels green computing power development in north China
cgtn.com








