中国科学院が高温超電導テープ戦略報告、REBCO普及へ「10の課題」提示
高温超電導の「実用化の次」をどう進めるのか。その道筋をまとめた戦略報告が、2026年1月26日、中国科学院(CAS)傘下の物理研究所(IOP)から公表されました。焦点は、REBCO(レアアース・バリウム・銅酸化物)高温超電導テープの大規模応用で、研究開発から産業化、用途展開までを俯瞰し、分野が直面する「10の重要課題」を初めて体系的に示したとしています。
何が発表された?――「高温超電導テープ」のロードマップ
IOPが公表したのは、高温超電導テープ(REBCO)に特化した戦略研究報告です。世界の研究開発(R&D)、産業化、応用の状況を整理し、今後の大規模利用に向けたロードマップ(道筋)を提示したとされています。
報告の特徴は次の2点です。
- REBCO高温超電導テープの「現状」を、研究から産業・用途まで一つの流れとして整理
- 大規模応用を阻む「10の重要な科学・技術課題」を初めて体系化して提示
そもそも超電導とは:なぜ「温度」がボトルネックになるのか
超電導材料は、電気抵抗がゼロになることや、完全反磁性(磁場を内部に通さない性質)といった特性を持つとされます。エネルギー、交通、医療、科学研究など幅広い分野での応用が期待され、将来の技術的ブレークスルーの基盤になり得る素材として位置づけられています。
一方で、従来型の超電導材料は「極低温」での運用が必要で、冷却コストが高くなりやすいこと、さらにヘリウム資源への依存が課題になってきました。このため、ここ数十年の応用は粒子加速器やMRI(磁気共鳴画像)など、限られた領域に集中してきた、という整理です。
REBCO高温超電導テープのポイント:液体窒素温度を上回る臨界温度
報告が中心に据えるREBCOは、高温超電導材料の一種です。液体窒素(約マイナス196℃)の温度を上回る臨界温度を持つとされ、冷却コストを大きく下げられる可能性がある点が重要だと説明されています。
加えて、電流を多く流せる能力(電流容量)が高いことや、強い磁場に耐えやすいことも特徴として挙げられ、より広い用途に向けた基盤になる、という位置づけです。
どこで使われ始めているのか:商用生産から用途拡大へ
報告によると、REBCO高温超電導テープは2006年に商用生産を達成して以降、複数分野で応用可能性が示されてきました。具体例として、次の領域が挙げられています。
- 磁場閉じ込め方式の核融合
- 高性能の医療機器
- 大型の科学施設
- 超電導の電力機器
応用の方向性は大きく「電力システム」と「磁石(マグネット)システム」の2つに集約される、という整理です。つまり、送配電など“電気を運ぶ・変換する”側と、核融合や医療・研究で必要な“強い磁場を作る”側が両輪になっている構図です。
「早期商用化」でも、性能向上の余地は大きい――10の重要課題とは
報告は、REBCOテープが早期の商用化段階に入っている一方、性能改善の余地は大きいと指摘します。今後の鍵は、材料、製造(作り込み)、応用(使い方)を切り分けず、全体として連動させる「協調的なイノベーション」を系統立てて進めることだとしています。
また、研究開発から応用まで産業チェーン全体を精査した結果として、大規模応用を妨げる「10の重要な科学・技術課題」を初めて抽出したとしました。
中国科学院の方忠(Fang Zhong)氏(CAS院士、IOP所長)は、核融合や超電導送電網などの主要ニーズと、現状材料と実運用のギャップを踏まえ、「『使える』から『優れた』へ進むために、取り組むべき方向を明確にした」との趣旨を述べています。
IOPの程金光(Cheng Jinguang)氏(副所長)も、核心課題を可視化することで、多様な分野のイノベーションを結集し、協調的なブレークスルーにつなげたい、との期待を示しました。
今回のニュースが示すもの:技術の「点」を「面」に広げる設計図
超電導は、実験室の成果がそのまま社会実装につながりにくい分野でもあります。冷却、コスト、信頼性、量産、用途側の設計要件などが絡み合うためです。今回の報告は、材料単体の性能競争だけでなく、用途(電力・マグネット)まで含む全体最適の課題設定を明確にした、という点で注目されます。
「10の課題」の中身がどのような優先順位で解かれていくのか。核融合や電力インフラ、医療機器といった現場で、どの“採用条件”が次に動くのか。2026年の材料・エネルギー技術の議論で、静かに重要度を増しそうです。
Reference(s):
Chinese report outlines roadmap for high-temperature superconductors
cgtn.com







