中国科学院、35.6テスラの全超伝導磁石を達成 研究用「ユーザー磁石」で新記録
中国科学院(CAS)は2026年1月27日(火)、北京の実験施設で中心磁場35.6テスラの「全超伝導磁石」を実現し、新記録を達成したと発表しました。材料科学や生命科学などの最先端研究に必要な“超強磁場”の実験環境が、利用しやすい形で一段押し上げられた点が注目されています。
今回の記録:35.6テスラ、口径35ミリの実験用磁石
発表によると、実験は北京の「Synergetic Extreme Condition User Facility(協同極限条件ユーザー施設)」で行われました。完成した磁石は、研究者が共同利用できる「ユーザー磁石」として設計され、国内外の研究チームの研究を支える用途が想定されています。
- 中心磁場:35.6テスラ
- 有効口径:35ミリメートル
- 位置づけ:共同利用を前提とした研究用(ユーザー)磁石
MRIの“最大24倍”級:日常感覚から見た磁場の強さ
CASは、この磁場が医療用MRI(一般に人が日常で接する中で最も強い磁場の代表例)のおよそ12〜24倍に相当すると説明しています。また、地球磁場と比べると70万倍以上とされ、微小な世界(ミクロ領域)の現象を際立たせて観測するうえで重要な条件になります。
「全超伝導磁石」とは? 強磁場を“低消費電力”で安定生成
高磁場の超伝導磁石は、極低温環境で電気抵抗がゼロになる超伝導の性質を利用し、強い磁場を作り出す装置です。CASは、こうした磁石の特徴として「高い磁場強度」「均一性」「安定性」「低いエネルギー消費」を挙げています。
研究現場では、磁場が強く、かつ揺らぎが小さいほど、物質の性質変化や生体関連分子の反応など、微細な変化を切り分けて捉えやすくなるとされています。
開発の体制:設計・製造・統合と、計測・監視の課題解決
今回の全超伝導ユーザー磁石は、中国科学院 電工研究所が超伝導磁石システムの設計・製造・統合を担い、中国科学院 物理研究所が高温超伝導磁石の健康監視(状態モニタリング)や精密計測などの課題解決に取り組んだとされています。CASは、両機関の共同研究による成果だと説明しています。
何が変わる? 研究インフラとしての意味
CASは、この達成が材料科学や生命科学などの最先端研究に不可欠な「超強磁場の実験条件」を提供するとしています。特に、未知の現象の探索や、基礎研究から高端装置製造に至る技術革新を後押しする基盤として、利用が広がる可能性があります。
強磁場の超伝導磁石は、現代技術の中核的な設備の一つとして、国家級の科学技術インフラ、高度な科学機器、高端医療機器、エネルギー、交通などで応用価値が大きいとも述べられました。
次に注目したいポイント
- 共同利用(ユーザー利用)として、どの分野・テーマに優先的に供されるか
- 運用面での安定性(連続運転、再現性、保守のしやすさ)がどこまで確立されるか
- 材料・生命科学に加え、計測技術や高端装置製造への波及がどう進むか
“強い磁場を作れる”こと自体が目的というより、強磁場を道具として使い、どんな現象を解き明かしていくのか。2026年の研究インフラの動きとして、静かに注目が集まりそうです。
Reference(s):
China achieves major breakthrough in all-superconducting magnet
cgtn.com








