午年を前に「一馬当先」――張洋の馬の絵が映す希望と前進 video poster
2026年の春節(旧正月)を前に、午年(馬の年)の縁起として語られる「一馬当先(いちばとうせん)」が、いま改めて注目されています。速さや先頭を走る力だけでなく、変化の時代に踏み出す勇気や開拓心を象徴する言葉として、アートの世界でもその意味が静かに掘り下げられています。
「一馬当先」が示すもの——スピードだけではない“先頭”の感覚
「一馬当先(yi ma dang xian)」は、直訳すれば「一頭の馬が先頭に立つ」。そこには、競争に勝つための俊敏さだけでなく、ためらいを越えて進む胆力、周囲の流れをつくる推進力といったニュアンスが重なります。
午年の「祝福の言葉」として語られるとき、このフレーズはしばしば“勢い”のイメージで消費されがちです。しかし、現実の先頭は、いつも軽やかとは限りません。迷いがあるからこそ、それでも一歩前に出る——その矛盾を含んだ強さが、言葉の奥に残ります。
画家・張洋が追い続けた馬——旅のスケッチが育てた眼差し
中国の画家・張洋は、若い頃から馬を描くことに打ち込み、内モンゴルや新疆ウイグル自治区などへのスケッチ旅行を重ねてきたといいます。草原や乾いた風のなかで観察を積み上げ、馬を主題にした作品群を築いてきました。
馬を描く行為は、単なる動物画にとどまりません。筋肉の張り、踏み込みの重心、群れの気配——そうした要素を掬い上げるほどに、「生きて進む」こと自体がテーマとして立ち上がってきます。
作品『一馬当先(Taking the Lead)』の読みどころ
張洋の作品『一馬当先(Taking the Lead)』では、力強い黒い馬が草原を自由に駆け、群れを導く姿が描かれます。画面の中心に置かれた先頭の馬は、速さの誇示というより、進路を切り開く意思として提示されているように見えます。
印象に残るポイント
- 先頭の黒馬の存在感:群れのなかでも埋もれない輪郭が、決断の瞬間を連想させます。
- 草原の“余白”:行き先を描き込みすぎず、見る側に想像の余地を残します。
- 群れの方向性:バラバラに走るのではなく、同じ目的地へ向かう「共有のベクトル」が感じられます。
馬はなぜ、希望の比喩になりやすいのか
馬のモチーフは古くから、移動、開拓、労働、そして自由と結びついてきました。一方で、群れで生きる動物でもあるため、「個の突破」と「共同の前進」を同時に語れる稀有な存在でもあります。
『一馬当先』が示すのは、誰かを置き去りにする勝利ではなく、群れ全体の行き先をつくる先頭の役割かもしれません。変化が続くいま、先に走ることの意味を“速さ”から“方向”へと読み替える視点が、作品を一段深くします。
午年を迎える空気のなかで、勢いの言葉としての「一馬当先」ではなく、迷いを抱えたままでも進む姿としての「一馬当先」を見つめ直す——そんな鑑賞体験が、静かな希望として残りそうです。
Reference(s):
Finding hope for the Year of the Horse in artwork 'Taking the Lead'
cgtn.com








