中国本土、高齢者介護を後押し:土地利用コスト減へ18項目の新パッケージ
中国本土で高齢化が進むなか、介護サービスの「供給不足」と「運営コスト高」に土地政策から手を入れる動きが出てきました。1月28日(水)、自然資源部・民政部・国家衛生健康委員会が連名で、土地利用の負担を下げ、既存建物の転用を進める新たな政策パッケージを公表しています。
何が発表された?――「土地コスト」と「空き資産」を同時に動かす設計
今回の政策は18項目で、柱は大きく3つです。
- コストの引き下げ(特に土地関連費用)
- 既存の土地・建物の活用(転用しやすくする)
- 実施体制の強化(監督・モニタリング)
背景として、当局は介護分野の運営コストの高さや、供給の限界を課題として挙げています。
数字で見る高齢化:2024年末に60歳以上が約3.1億人
公表された資料によると、2024年末時点で60歳以上は約3億1000万人で、総人口の22%に達しました。高齢者ケアの「量」と「価格」の両方をどう整えるかが、政策の優先順位を押し上げている構図がうかがえます。
ポイント1:非営利は「無償配分」で土地負担を軽く
非営利の高齢者ケア施設について、地方政府は土地供給を「直接配分」で確保し、土地の譲渡金(いわゆる土地代)を免除することが求められます。初期投資の重さが参入・拡張の壁になりやすい分野だけに、固定費の圧縮を狙った設計です。
ポイント2:営利事業は「長期賃貸」「先に賃貸→後に譲渡」など柔軟化
営利プロジェクトには、より柔軟な土地利用の選択肢が促されます。具体的には以下のような手法です。
- 長期賃貸
- 「賃貸を先に、譲渡は後で」(lease-before-transfer)
- 土地のプレミアム(追加負担)の分割払い(最長2年)
一括で資金を固定化しにくい事業者にとって、資金繰りの設計自由度が増える内容といえます。
ポイント3:都市も農村も「遊休スペース」を介護に転用
都市:古い住宅コミュニティの小規模地などを再活用
都市部では、古い住宅コミュニティ内の小さな区画や低利用地を高齢者ケア施設へ転用することが想定されています。また、建物を介護用途に転用する場合、最長5年間は元の土地用途区分を維持でき、追加費用を課さない運用が示されました。
農村:集体(共同体)土地の遊休分を優先活用
農村部では、遊休となっている集体土地の活用を優先し、集体の営利性建設用地については賃貸や譲渡で介護プロジェクトに回せる枠組みが盛り込まれています。
実施を担保する仕組み:統一データベースで動的モニタリング
「制度はあるが現場で進まない」を避けるため、当局は多部門による協調監督体制を整備するとしています。介護施設向けに指定された土地は、統一された国の空間計画データベースに組み込み、動的にモニタリング。無断の用途変更は厳格に禁止する方針です。
2019年政策の“アップグレード”――次は地方運用と効果測定へ
今回の措置は2019年の土地利用政策を基礎にした「更新版」と位置づけられ、今後は地方政府への具体的な運用ガイド、関係機関の調整、全国での影響把握(効果測定)に重点を置くとされています。
「新しい街・新しい住宅」には介護拠点を同時整備へ
あわせて、包摂的(インクルーシブ)な高齢者ケアの拡充を掲げ、新たに開発される都市エリアや住宅プロジェクトでは、計画基準に沿って介護サービス施設を同時に整備することが求められます。後追いで施設用地を確保する難しさを、都市計画の段階で減らす狙いが読み取れます。
土地の扱いは、施設の「数」だけでなく、利用者が支払う「価格」にも波及しやすい領域です。コストを抑えつつ、既存ストックをどう安全・快適に転用するのか――中国本土の高齢者ケアをめぐる次の焦点は、制度設計から実装・検証の局面へ移りつつあります。
Reference(s):
China streamlines land-use policies to boost elderly care services
cgtn.com








