中国本土、世界最大の再エネ・排出量取引へ—2025年までの成果
中国本土の生態環境省は2026年1月28日(現地時間)の記者会見で、14次五カ年計画(2021〜2025)期間に「世界最大のクリーン電力供給システム」などを構築したと説明しました。脱炭素の“規模”が経済や産業のルールに影響しうる点で、いま押さえておきたい動きです。
何が発表されたのか:再エネ、鉄鋼、交通の“規模”
生態環境省の担当者は、2021〜2025年にかけてグリーン発展と炭素排出削減が進んだとし、次の点を挙げました。
- 世界最大のクリーン電力供給システムを確立
- 世界最大のクリーン製鉄生産システムを構築
- 新エネルギー車(NEV)の普及率(市場浸透率)が50%を超過
- 重点地域・重点産業におけるクリーン交通の比率が78%に到達
電力・素材・移動という「排出の大きい3領域」で、供給側と需要側を同時に動かしてきた構図が見えてきます。
排出量取引(カーボン市場):数字で読む“制度の厚み”
同省は、中国本土が世界最大の炭素排出量取引市場を整備したことを「気候変動対策の大きな節目」と位置づけました。排出量取引は、企業などに排出枠(排出枠の許可量)を設定し、余剰や不足を市場で売買できる仕組みです。
発表によると、2025年末までの累計で、炭素排出枠の取引量は8億6500万トン、取引総額は576.63億元(約82.9億ドル)に達しました。
「取引が大きい」ことの意味
市場の規模が拡大すると、価格シグナル(排出のコスト)が企業の投資判断に入りやすくなります。一方で、制度が実際に排出削減へつながるかは、対象範囲、データの精度、ルール運用など“中身”で決まります。規模の発表は出発点で、今後は運用の透明性や実効性が注目点になりそうです。
2026年の視点:移行期に問われる「実装」と「整合性」
2025年末で14次五カ年計画の区切りを迎え、2026年に入った現在は、これまでに整えた電力・産業・交通・市場制度を、どれだけ安定運用し、現場の投資と技術更新につなげられるかが焦点になります。
- 電力:クリーン電力の拡大を、供給安定や系統運用とどう両立させるか
- 産業:クリーン製鉄など重工業の転換を、競争力と雇用の文脈でどう進めるか
- 交通:NEV普及の“量”を、充電・電池回収など“インフラの質”へどう接続するか
- 市場:排出量取引の対象拡大や制度運用の精度向上をどう図るか
追加の制度整備:自主的取引、製品のカーボンフットプリント、適応戦略
生態環境省はこのほか、次の取り組みも挙げました。
- 全国の自主的な温室効果ガス排出量取引市場を開始
- 製品のカーボンフットプリント(製品のライフサイクルで生じる排出量)管理システムの整備を主導
- 気候変動への強靱性(レジリエンス)を高めるため「国家気候変動適応戦略2035」を発表
削減(ミティゲーション)だけでなく、適応(アダプテーション)も同時に進める姿勢を示した形です。
静かな論点:"最大"の先にあるもの
今回の発表は「世界最大」という表現が目立ちます。ただ、気候変動対策は“規模”が大きいほど、制度設計の細部や地域差、企業の実務まで波及します。いま問われているのは、整えた仕組みが現場の意思決定をどう変え、排出削減と成長の両立にどんな手触りを与えるのか——その検証の段階に入りつつある、という点かもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








