中国本土でT1100級炭素繊維を安定量産 高強度素材の供給が新局面へ
中国本土で最高強度クラスの「T1100級」炭素繊維が安定的に量産できる段階に入ったと、2026年1月13日に中国メディアが報じました。高強度・軽量という特性から航空宇宙などで使われる戦略素材だけに、供給の選択肢が広がる動きとして注目されます。
何が起きたのか:T1100級の「安定量産」を報道
報道によると、華南の深圳大学と、華北のChang Sheng Technology Co., Ltd.(河北省廊坊市)の連携により、T1100級炭素繊維の安定的な大量生産が実現しました。廊坊の生産ラインでは、T1100級炭素繊維が継続的に出荷できる水準で生産され、合格率は一貫して95%に達しているとされています。
T1100級炭素繊維とは:鋼の約7倍の強度、重さは4分の1
T1100は、産業用途で使われる炭素繊維の中でも最高強度クラスのグレードの一つとされます。報道では、引張強度はおよそ7,000メガパスカル(高強度鋼の約7倍)で、重量は鋼のおよそ4分の1。一本の繊維(フィラメント)の直径は約5マイクロメートルで、人の髪の毛より細い一方、非常に大きな機械的負荷に耐えられると説明されています。
量産の壁は「前駆体(ぜんくたい)」:微小な孔が品質を左右
高強度炭素繊維の量産で難所になりやすいのが、炭素繊維になる前段階の材料である「繊維前駆体(プリカーサー)」の形成です。深圳大学・化学環境工学学院の朱才鎮(Zhu Caizhen)教授は、製造条件の調整が適切でないと前駆体に膨潤した孔(ポア)が生じることがあると指摘しました。孔が小さいほど、最終的な炭素繊維はより強くなるとも述べています。
こうした欠陥は大規模生産の過程で取り除きにくく、強度グレードが高いほど品質のばらつきを抑えるのが難しいとされます。
どうやって突破したのか:30回超の試作で孔の発生率を約60%低減
報道によれば、研究チームは実験室レベルで30回以上の試作・改良を重ね、重要なパラメータ(工程条件)を最適化。その結果、前駆体繊維の孔の発生率を約60%低減し、T1100級の量産につなげたといいます。
意味すること:海外供給に偏っていた高強度素材が「選べる」時代へ
これまでT1100級のような超高強度炭素繊維は、海外メーカーが大きな供給シェアを持つ領域とされてきました。今回の安定量産は、中国本土における輸入依存の低下につながり、戦略素材の調達面での安定性(素材セキュリティ)を高める動きと位置づけられます。
一方で、超高強度素材は「作れる」だけでなく、用途ごとの品質の一貫性、長期的な供給、コスト、評価データの蓄積が普及を左右します。安定量産の報道を起点に、今後どの分野で採用が広がっていくのかが次の焦点になりそうです。
Reference(s):
China achieves stable mass production of T1100-grade carbon fiber
cgtn.com








