中国本土・雲南で野生アジアゾウ監視強化 春節前の共存を支える現場 video poster
中国本土南西部・雲南省で、野生アジアゾウの“いま”を追う監視チームの動きが注目されています。冬場に食べ物が減る時期と春節(旧正月)前の人流増加が重なり、見守りと早期警戒が人と野生動物の共存のカギになっています。
冬の食料不足で「村に近づく」リスクが上がる
雲南省プーアル市・江城県では、野生のアジアゾウが50頭以上、年間を通じて生息しているとされます。冬に入ると野生の食料が不足しやすくなり、ゾウが食べ物を求めて村や畑に現れる頻度が高まっている状況です。
こうした季節要因に加え、春節に向けて帰省や移動が増える時期は、人や車の往来も増えます。ゾウと人が同じ空間に近づく可能性が上がるため、監視と注意喚起の重要性が一段と高まっています。
約1,000平方キロを見守る——監視員と消防の連携
江城県のゾウ監視チームを率いるのは、ディアオ・ファシン氏(50)。担当範囲は約1,000平方キロメートルに及び、複数の群れの動きをできる限りリアルタイムで追い、危険があれば周辺住民に警戒を呼びかけます。
最近は、現地の森林消防とも連携して監視と警戒を強化。ある日、群れを確認したディアオ氏が近隣住民へ距離を取るよう連絡し、消防隊員のグオ・ユエンフォン氏がドローンを上げて、トウモロコシ畑で採食するゾウの位置を素早く特定したといいます。
ドローン映像では少なくとも10頭を確認。日中のその時間帯に出てくるのは珍しく、群れには子どものゾウも複数含まれ、最も幼い個体は生後約2カ月と見られる、という観察も共有されました。
「毎日わかる」位置情報が、暮らしの判断を変える
警戒はサイレンだけではありません。住民側でも、メッセージグループで日々更新される出没情報をもとに、畑に行く時間やルートを調整するなど、生活の中でリスクを下げる工夫が広がっています。
住民からは、ゾウへの恐怖感が薄れたという声も出ています。たとえば「近くにいるならその場所を避ければいい」といった、具体的な行動につながる情報があることが安心材料になっているようです。長年同じ地域に来る群れを見守り、「子育ての様子に心が温かくなる」と語る住民もいます。
補償制度が“対立”を“調整”に変える:2010年からの仕組み
雲南省では2010年、野生動物による事故に備えた公的な賠償責任保険制度を導入し、費用は政府が負担しているとされます。ゾウによる被害が出た場合、保険会社が住宅や食料作物、換金作物の損害を補償する仕組みです。
ディアオ氏は、警戒だけでなく保険会社に代わって被害査定も担当します。住民からは「補償は現行価格で納得感がある」といった受け止めが語られ、被害の“泣き寝入り”を減らす仕組みとして機能している様子がうかがえます。
アジアゾウ国家公園構想、法整備が追い風に(2026年の新法施行)
制度と現場の工夫に加え、保護の枠組みづくりも進んでいます。2022年、雲南省は国務院に対し「アジアゾウ国家公園」の設立を申請。西双版納、プーアル、臨滄の6県(区)にまたがる区域で、提案面積は38,600ヘクタール超とされています。
現在は、基礎調査、資源の専門調査、生息地の回復、生态修復(生態系の修復)、普及啓発、衝突(コンフリクト)緩和などの準備が着実に進んでいるとされます。さらに、中国の国家公園法が2026年1月1日に施行され、国家公園の設立に向けた法的基盤が強化された点も、直近の重要な動きです。
「見張る」だけではなく、「間に立つ」仕事
監視の仕事は危険も伴います。ディアオ氏は、ドローンがなかった初期には足跡を頼りに徒歩で追跡していたといい、家族に辞めるよう言われたこともあったそうです。それでも、警戒情報がなければ住民が安心して畑で働けない——その思いが続ける理由になったと振り返ります。
国家公園構想についても、ゾウにとっての生息環境を整えながら、人の暮らしの安定も同時に守ることが目標として語られています。監視、情報共有、補償、そして生息地の整備。要素が噛み合ったとき、共存は「理想」ではなく、日々の現実として少しずつ形になっていくのかもしれません。
Reference(s):
Monitoring efforts enhance wild elephant conservation in SW China
cgtn.com








