内モンゴル発の音楽家Asr、馬頭琴と喉歌を“世界仕様”に再構築 video poster
中国本土の内モンゴル自治区出身の音楽家Asrが、馬頭琴や喉歌といった伝統的なモンゴル音楽を核にしながら、ジャズやエレクトロ、西アフリカ由来の要素まで織り交ぜたサウンドで、欧州など海外の観客にも届けています。ルーツを「守る」のではなく「動かしながら響かせる」——その作り方が、いま静かに注目を集めています。
内モンゴル自治区から北京へ。10年以上の時間が作った“複層”
Asrは中国本土の内モンゴル自治区にルーツを持ち、北京で10年以上活動してきたとされます。土地の歌や音色を身体に残したまま、大都市で多様な音楽家やリスナーと交わり続けてきた時間が、いまの「混ざり方」を形づくっているようです。
拠点を移すと、表現は薄まるのでしょうか。Asrの事例はむしろ逆で、移動や共同制作が、伝統の輪郭を別の角度から照らしているようにも見えます。
音の中心にあるもの:馬頭琴と喉歌
Asrの核にあるのは、モンゴル音楽の象徴的な要素です。
- 馬頭琴:馬の頭をかたどった装飾で知られる弦楽器。伸びやかな音色が特徴です。
- 喉歌(スロートシンギング):倍音を響かせる独特の発声法。ひとつの声が複数の音に聴こえるのが魅力です。
これらは「そのまま提示する伝統」ではなく、他ジャンルと並べて置いたときに、むしろ存在感が際立つタイプの音でもあります。
ジャズ、エレクトロ、西アフリカ——影響を“引用”ではなく“合成”へ
断片的な要素を貼り合わせるだけなら、融合は単なる装飾になりがちです。一方でAsrは、伝統モンゴル音楽の「間」や「うねり」を軸に、ジャズの即興性、電子音のテクスチャー、西アフリカ由来のリズム感などを重ねていくスタイルだと紹介されています。
その結果、ルーツが背景に退くのではなく、現代的な編成の中で“前景化”して聴こえる——そんな逆転が起きます。
2つのバンドで広がる表現:NaraBaraとMola Oddity
Asrはキーボーディスト兼コンポーザーとして、境界を押し広げる2つのバンド、NaraBaraとMola Oddityに参加しているとされています。これらのプロジェクトを通じて、欧州など海外の観客にも独自のサウンドを届けてきました。
同じ人物でも、編成や役割が変わると、ルーツの出し方も変わります。ある場面では旋律の芯として、別の場面ではリズムや響きの設計思想として——伝統が“固定された名刺”ではなく、楽曲ごとに形を変える素材として扱われている点が興味深いところです。
楊(ヤン)記者の取材:ルーツは「遠くから持ち帰るもの」ではなく「今ここで鳴るもの」
取材を行った楊(ヤン)記者は、Asrが自身のルーツを、懐かしさの対象や博物館的な保存物としてではなく、創作の現在進行形として語っていることを伝えています。世界のどこで演奏しても、出自は説明のためのラベルではなく、音の設計に入り込む“手触り”として現れる——その感覚が、国境を越えて伝わっているのかもしれません。
聴きどころ:初見の人が追いやすい3つのポイント
- 伝統要素が「イントロ」だけで終わらない:曲の途中で形を変えながら戻ってくるか。
- 即興と反復のバランス:ジャズ的な自由さと、民謡的な循環がどう共存しているか。
- 電子音の使い方:派手さよりも、空気感や奥行きづくりに寄与しているか。
2026年のいま、音楽は配信で簡単に世界へ届く一方、表現の「出どころ」も問われやすくなっています。Asrの歩みは、ルーツを強調しすぎず、消しもしない——その中間で、文化を“更新しながら継ぐ”方法を示しているように見えます。
Reference(s):
Musician keeps Mongolia's cultural roots embedded on world stage
cgtn.com








