核時計へ前進:中国本土チームが148.4nm連続波VUVレーザーを実現
核時計(ニュークリアクロック)研究の“最後の技術的障壁”とされてきた「148ナノメートル帯の連続波(CW)レーザー光源」について、中国本土の研究チームが重要な前進を報告しました。超精密な時間計測が、実験室の枠を越える可能性を少し現実寄りにしたニュースです。
何が起きたのか(ポイント)
研究チームは、波長148.4nmの連続波・真空紫外(VUV)レーザーを開発したと報告しました。英科学誌Natureに今週掲載されたとされています。
チームを率いたのは、清華大学の丁士謙(Ding Shiqian)准教授(北京量子情報科学研究院の研究者)です。
- 実現したのは「148.4nmのCW VUVレーザー」
- 線幅(レーザーの“色の純度”)は100Hzを大きく下回る超狭線幅
- コヒーレントな核相互作用を支えるのに十分な出力を確保
なぜ「核時計」に効くのか:原子時計の次を目指す発想
研究者によると、現在の原子時計は非常に高精度である一方、電磁的な外乱の影響を受けやすく、利用は主に研究室に限られてきた面があるといいます。
これに対し核時計は、より高い精度と、干渉への強い耐性が期待される概念として語られてきました。ただし長い間、研究を前に進めるうえで「148nm付近の連続波レーザーがない」ことが大きな制約になっていた、というのが今回の文脈です。
148.4nmのCWレーザーをどう作った?(技術の要点をやさしく)
真空紫外(VUV)は、空気中で吸収されやすいなど取り扱いが難しく、超安定レーザー技術をこの帯域へ拡張すること自体が高いハードルでした。今回の報告では、カドミウム蒸気中での四波混合(FWM、複数の光を混ぜて別の波長の光を作る非線形光学過程)を使い、148.4nmのCW VUVレーザーを生成しています。
研究チームは、この成果によって「真空紫外帯の超安定レーザーシステムの基盤を築き、国際的な関連研究プログラムにおける重要ステップを満たした」と位置づけています。
応用は“時計”だけにとどまらない
報告によれば、このプラットフォームは核時計研究に加え、次の分野にも広がり得るとされています。
- 原子時計
- 量子情報
- 凝縮系分光(物質の性質を光で調べる手法)
さらに、将来的な用途として自律航法、深宇宙探査、高精度の地球物理・重力測定、真空紫外の計量(メトロロジー)や先端試験装置なども挙げられました。時間の“ものさし”が精密になるほど、位置・物性・地球の変化の読み取り方も変わっていく——そんな波及を示す並びです。
同じ週の動き:光時計「NIM-Sr1」が国際原子時(TAI)の校正に寄与
また今週、中国の国家市場監督管理総局は、中国で開発された光時計(光学時計)「NIM-Sr1」が国際原子時(TAI)の校正に貢献したと発表したとされています。
TAIは、世界の時刻の基準づくりに関わる重要な枠組みです。核時計は“次の候補”として語られることが多い一方で、光時計が国際的な時間基準の運用に入り込んでいく動きも、同時進行で進んでいることが読み取れます。
これから注目したい3点
- 148.4nm光源を核時計のシステムとしてどう統合するか(光源単体から「時計」へ)
- 安定運用と再現性(研究室レベルの成果が、どこまで標準化できるか)
- 精密計測の“用途側”の準備(航法・探査・計量など、活用する側の技術が追いつくか)
今回の報告は、派手な実用化宣言というより、「揃わなかった部品がついに揃い始めた」タイプのニュースです。時間を測る技術は、しばしば社会の“見える解像度”を上げます。次に上がる解像度が、どこを照らすのかが気になるところです。
Reference(s):
cgtn.com








