0.6秒で3Dプリント:清華大の「DISH」技術が速度記録を更新
3Dプリンターの「速さ」と「精密さ」は両立が難しい――その常識を揺らす研究が、2026年2月12日(木)付の科学誌『Nature』で報告されました。中国本土の研究チームが、ミリメートル級の複雑な立体をわずか0.6秒で高解像度造形できる新技術「DISH」を開発したといいます。
何が起きた?0.6秒で“複雑形状”を造形
発表によると、新技術はミリメートルスケール(数mm程度)の複雑な構造体を短時間で作製できます。従来の高解像度3Dプリントでは、対象が小さくても数十分〜数時間かかるケースが珍しくなく、研究や製造のボトルネックになっていました。
DISHとは:ホログラフィック光場を「合成して一気に固める」発想
研究を率いたのは、中国工程院の院士で清華大学の戴瓊海(Dai Qionghai)氏のチームです。計算光学(計算によって光の振る舞いを設計・制御する考え方)に注目し、光の情報を“撮る”だけでなく、高次元のホログラフィック光場を操って三次元実体を構成するアプローチを掘り下げました。
5年にわたる研究の末、複数視点の光場を高速に変調するなどの課題を乗り越え、digital incoherent synthesis of holographic light fields(DISH)と呼ぶ3Dプリント技術に到達したとしています。
数字で見る性能:12マイクロメートル、333mm³/秒
- 造形時間:ミリメートル級の複雑構造を0.6秒で作製
- 最小造形サイズ:12マイクロメートル(μm)
- 造形速度:最大333立方ミリメートル/秒
論文の責任著者の一人である呉佳敏(Wu Jiamin)氏によると、DISHは点ごと・層ごとに走査していく従来方式の速度制約を避け、複雑な3D光強度分布を極短時間で精密投影することで高速造形を実現したと説明されています。
「装置側の難しさ」も下げる?容器要件がシンプルに
もう一つの特徴として、造形用の容器に特別な構造設計をほとんど求めず、単一の光学的に平坦な面があればよい点が挙げられています。さらに、造形中に容器を動かさず、従来法で必要になりがちな「容器とプローブの高精度な相対運動」を要しないとされています。
どこで役立つ?量産・微小部品・生体モデルまで視野
戴氏は応用先として、フォトニック計算(光を使う計算)デバイスの微小部品やスマートフォンのカメラモジュール、鋭角や複雑な曲面をもつ部品などの量産を挙げています。将来的には、柔軟電子機器、マイクロロボット、高解像度の組織モデル(ティッシュモデル)といった複雑な用途にも広がる可能性があるとしています。
速い3Dプリントが意味すること:試作の「時間感覚」が変わる
3Dプリントは、アイデアを形にして検証する“試作の道具”である一方、時間がかかるほど試行回数が減り、改良のテンポも落ちます。ミリメートル級の精密造形が0.6秒に近づくなら、研究室の実験設計や工場の検査・補修部品づくりなどで、「待ち時間」そのものが再設計されるかもしれません。今後は、材料の選択肢、歩留まり、量産ラインへの統合など、現場での検証がどこまで進むかが注目点になりそうです。
Reference(s):
0.6-second 3D printing: China's new DISH tech shatters records
cgtn.com








