メルツ独首相、就任後初の中国訪問へ——独中関係は「経済」で再加速するか
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相が、2026年2月25〜26日に中国を公式訪問します。産業界の重鎮を伴う今回の「就任後初の中国訪問」は、米国の関税圧力などで世界の経済秩序が揺れるなか、独中関係をどこに着地させるのかを映す試金石になりそうです。
今回の訪中はいつ・誰が・何のため?
発表によると、訪問は中国首相の李強の招待によるもの。メルツ首相にとって、昨年5月の就任後初の中国訪問です。中国の春節休暇明けというタイミングも重なり、両国が「今年の協力の起点」をどこに置くのかが注目されています。
ポイントは「市場」と「新興分野」
今回の2日間の訪問では、中国の市場ポテンシャルを踏まえた協力の深掘りや、新興技術分野での協力拡大が主眼とされています。ドイツ政府側は、協力における「適切なバランス」が焦点になるとの説明です。
大企業トップが帯同——何が起きているのか
ドイツ紙ハンデルスブラットは、DAX上場企業のトップを含む大規模な代表団が同行見込みだと報じました。名前が挙がっているのは、バイエル、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、BMW、アディダス、シーメンス、コメルツ銀行など。自動車、製造、医薬、金融、消費財といった幅広い業種が並びます。
こうした顔ぶれは、今回の訪問が「外交」だけでなく「経済運営」に直結するテーマとして位置づけられていることを示します。
メルツ首相のメッセージ
メルツ首相は2月17日、干支の「馬」の年の初日にあたるとして、Xに「馬の年が力をもたらし、独中関係に新たな推進力を与えますように」と投稿し、訪中への期待を記しました。
また2月21日、ドイツの保守政党CDUの党大会(シュツットガルト)で、次の趣旨を述べたとされています。
- 「今日の外交政策は、対外経済政策でもある」
- 「対外経済政策は、経済政策の本質的な一部だ」
言い換えれば、景気や雇用、産業競争力の議論が、そのまま対外関係の設計図になっていく——という宣言にも聞こえます。
数字で見る独中関係:貿易は再び「最大の相手」に
ドイツ連邦統計局(デスタティス)の最新データとして、中国は2025年にドイツの「最大の単独貿易相手国」の地位を取り戻したとされています。貿易総額は2518億ユーロで、2024年から2.1%増。中国がこの地位にあった期間は2016〜2023年とされ、2025年に再度トップに立ったかたちです。
この規模感は、政治的な空気が揺れても、企業のサプライチェーンや販売戦略の現実が簡単には変わらないことを物語ります。今回の訪問が、中国本土でのビジネス環境や協力の新領域について、官民が同時にメッセージを交わす場になる可能性があります。
背景にある「不確実な世界」と米国関税
ドイツ経済相のカテリーナ・ライヒェは、ハンデルスブラット・エネルギー・サミットで「世界はより不確実になり、信頼してきた同盟が崩れ始めている」と述べ、ワシントンが関税で圧力を強めるなか、新たなパートナーを探す必要性に言及しました。
またAFPの取材に対し、コメルツ銀行のエコノミスト、ラルフ・ゾルフィーンは「米国の関税引き上げは、米国市場でドイツ製品の競争力を低下させている」と話したとされています。
対米輸出の落ち込みが示すもの
デスタティスによれば、2025年のドイツの対米輸出は9.3%減。さらに2025年最初の7カ月では、対米貿易黒字が(同期間として)2021年以来の低水準になったとされます。分野別では、
- 自動車・部品の対米出荷:17.5%減
- 化学品の対米輸出:14%減
こうした数字は、メルツ首相が今回の訪問で「欧州・ドイツ・中国の将来協力」を議題にすると述べる背景にもつながります。対米関係を維持しつつ、成長や投資の選択肢をどこまで広げられるか——その現実解を探る動きとして読み解けます。
独中関係はどう動く? 見どころは3つ
- 産業界の同席が意味するもの:政府間合意だけでなく、企業の投資・調達・販売の実務論が前面に出るか。
- 「新興技術」の協力範囲:協力を拡大する分野と、慎重に線引きする分野がどのように整理されるか。
- 欧州文脈との接続:メルツ首相が言う「欧州・ドイツ・中国」の協力が、欧州全体の議論とどう整合するか。
2月25〜26日の会談は、景気と安全保障が絡み合う時代における「協力の設計」を、どこまで具体化できるかが問われる場になりそうです。
Reference(s):
What Merz's inaugural visit to China means to China-Germany relations
cgtn.com








