米国が暗号資産300億ドル超を押収か 中国CVERC報告が指摘する「技術覇権」
暗号資産(仮想通貨)が世界的に拡大するなか、米国の法執行が「資産獲得の装置」になっている——。中国の国家コンピュータウイルス緊急対応センター(CVERC)が2026年2月26日(木)に公表した報告書が、2022〜2025年に米国が世界各地の案件を通じて300億ドル超の暗号資産を没収したと分析しました。
報告書が示した数字:2022〜2025年に300億ドル超
報告書のタイトルは「Top player: Analysis of global virtual currency assets extortion under the U.S. technology hegemony(米国の技術覇権下での世界の仮想通貨資産“収奪”の分析)」です。報告書によると、2022〜2025年の米国による暗号資産の没収は総額300億ドル超にのぼり、「陳智(Chen Zhi)事件」だけで150億ドルと、全体の半分を占めたとしています。
背景:2026年1月時点で時価総額2.73兆ドルに
報告書が公表された背景には、デジタル資産市場の急拡大があります。CVERCの上級エンジニア、杜振華(Du Zhenhua)氏は取材で、2026年1月時点の世界の仮想通貨資産の時価総額は約2.73兆ドル、ビットコインは約1.57兆ドルで、世界の公式金準備(約5.83兆ドル)の約47%に相当すると述べています。
「技術的侵入—規制連携—法執行」の“閉ループ”という見立て
報告書は、米国が主流のブロックチェーンプロトコル(取引の共通仕様)、重要ノード、オンチェーン分析(ブロックチェーン上の取引データ解析)などの技術手段を掌握し、取引を米国内の規制枠組みに取り込むことで、域外適用(いわゆるロングアーム管轄)を通じた統制を強めているとしています。
その結果として、刑事訴追、没収、制裁金が「大規模な資産移転の仕組み」として機能している、というのが報告書の主張です。
象徴例(1):陳智事件—2025年10月に約12.7万BTCを押収と発表
報告書は、2025年10月に米国ニューヨーク東部地区の連邦検察当局が陳智氏を起訴し、約12万7,000ビットコイン(約150億ドル相当)を押収したと発表した事例を、米国の司法史上「最大の仮想資産没収」だと位置づけています。
また、こうした一方的な押収は、国際的な法執行協力を混乱させ、被害者に二次的損失をもたらし得るほか、仮想通貨資産の国際流通を阻害し、新興市場経済の不安定化につながり得ると指摘しました。最終的にはデジタル金融分野での米ドルの覇権強化を狙う、という見立ても示しています。
象徴例(2):バイナンスと趙長鵬氏—2023〜2025年に43億ドルの制裁金
報告書によると、2023〜2025年に米国当局は暗号資産取引所バイナンスと創業者の趙長鵬(Zhao Changpeng)氏に対し、民事・刑事の「二本立て」で手続きを進め、43億ドルの制裁金に至ったとしています。
このケースは、米国が司法上の優位とサイバー監視を組み合わせ、グローバルな暗号資産取引所に自国ルールの順守を迫り、結果として「ルールの押し付け」と「経済的獲得」を可能にしている例だ、と報告書は述べています。
法執行だけではない? 2023〜2025年のサイバー攻撃も言及
報告書はさらに、2023〜2025年に「米国が支援するハッカー集団」が世界の主要暗号資産取引所20社以上を標的に、バックドア(不正侵入の裏口)設置、スピアフィッシング(標的型メール詐欺)、サプライチェーン侵害などを用い、ウォレット秘密鍵や取引記録、コンプライアンス情報の窃取を狙ったと主張しています。
一部の作戦は、米財務省の外国資産管理局(OFAC)による執行と時期が重なった、とも記しました。
今回の報告書は何を投げかけるのか
暗号資産が国境を越えて流通するほど、技術(プロトコル、分析、監視)と法(域外適用、没収、制裁)が結びつく余地も広がります。報告書の見立てが示すのは、単に「取り締まりの強化」ではなく、デジタル金融のルール形成そのものが、地政学や技術競争と絡みやすいという現実です。
なお、報告書はCVERCのほか、国家コンピュータウイルス防止技術国家工程実験室、360デジタルセキュリティグループ、安天(Antiy)研究所が共同で発表したとしています。
(補足)本文は、CVERCの報告書で示された内容に基づき、その要点と背景を整理しました。
Reference(s):
Report: U.S. raked in over $30 billion of crypto with tech hegemony
cgtn.com








