中国本土・広州で、高さ約170メートルのタワーが「ほぼゼロエネルギー(Near-Zero Energy)」という発想を超高層で形にし、注目を集めています。外壁で発電し、風で建物を冷やし、エレベーターの動きまで電力に変える――都市のエネルギー消費をどう減らすかを考える上で、具体的なヒントが詰まっています。
「ほぼゼロエネルギー」とは何を目指すのか
このタワーが掲げるのは、建物の省エネ性能を徹底して高めたうえで、建物内(または建物の一部)で生み出す再生可能エネルギーを組み合わせ、運用時のエネルギー負担を限りなく小さくするという方向性です。2026年現在、脱炭素と電力需要の増加が同時に進む中で、「建物そのものを発電・換気・冷却の装置として設計する」アプローチの重要性は増しています。
外壁が発電する「ソーラースキン」:約8,000㎡で電力の約25%をまかなう
特徴のひとつは、ファサード(外壁)に設置された太陽光パネルです。約8,000平方メートルのパネルが、建物が使う電力の約25%を生み出すとされています。
- 屋上だけでなく「外壁」も発電面にすることで、設置面積を大きく確保
- 高層ビルで課題になりやすいエネルギー需要を、建物側の工夫で押し下げる狙い
一方で、約25%という数字は「残りの電力をどうするか」という次の論点も同時に示します。省エネ設計・運用改善・外部電力の低炭素化など、複数の手段を重ねる必要があることが読み取れます。
風を通して冷やす「自然の空調」:クールレーンとソーラーチムニー
もうひとつの柱が、風を活かした冷却・換気です。タワーには、川からの風(川風)を建物全体に引き込むための仕掛けとして、「クールレーン」やソーラーチムニー(太陽熱で上昇気流をつくる煙突状の構造)が使われています。
- クールレーン:風の通り道を設計として確保し、建物内へ導く
- ソーラーチムニー:熱の力で空気を引き上げ、流れを生み出す
空調負荷(冷やすための電力)を下げられれば、必要な発電量も小さくできます。太陽光の「つくる」だけでなく、そもそも「使わない」設計を重視している点がポイントです。
エレベーターの動きも電気に:回生の発想を縦移動へ
高層ビルで無視できないのが、縦移動に伴うエネルギーです。このタワーでは、エレベーターの動き(運動)を電気に変える仕組みも取り入れられています。いわゆる回生の考え方を、ビルの“日常動作”に組み込んだ形です。
派手さはなくても、毎日繰り返される移動から電力を回収する発想は、積み上げ型の省エネとして現実的です。
建設プロセスも変える:「クラウド工場」で1フロア7日→4日へ
省エネは運用だけでなく、建設の効率にも及びます。このタワーでは、現場内の「クラウド工場」(オンサイトで部材加工などを高度に行う仕組み)が導入され、建設速度が1フロアあたり7日から4日へ短縮されたとされています。
- 現場に近い場所で加工・段取りを最適化し、手戻りや待ち時間を減らす
- 工期短縮は、コストや周辺負荷の低減にもつながり得る
「省エネ建築」は完成後の性能が注目されがちですが、都市が更新され続ける限り、建設のやり方そのものも重要な変数になります。
このビルが投げかける、次の問い
広州の170メートル級タワーが示しているのは、「超高層でも、エネルギーの出入りを設計でコントロールできる」という実例です。同時に、読者として押さえておきたい問いも残ります。
- 再現性:川風などの条件が違う都市でも同じ効果を出せるのか
- 運用:高度な設備や仕組みを、長期にわたり安定して運用できるのか
- 全体最適:発電(約25%)をどう補い、建物全体としてのエネルギー収支をどう詰めるのか
近年、都市は「高密度化」と「低炭素化」を同時に求められています。超高層ビルがその矛盾をどうやってほどくのか――広州の事例は、設計・運用・施工を束ねて考えるヒントになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








