中国の研究開発費が過去最高に:第15次五カ年計画で示した4つの重点
2026年3月5日、中国の科学技術相・陰和俊氏が全国人民代表大会(全人代)の場で、2025年の研究開発(R&D)投資が過去最高に達したと明らかにしました。2026〜2030年の「第15次五カ年計画」期間を、科学技術の自立と強化に向けた重要段階と位置づけています。
全人代の場で示された「いま」の数字
陰氏は、北京の人民大会堂で開かれた第14期全人代・第4回会議の「部长通道(閣僚対応エリア)」で発言しました。公表された主なポイントは次のとおりです。
- 2025年のR&D投資総額:3.92兆元超(約5680億ドル)
- R&D投資の対GDP比(R&D強度):2.8%
- 基礎研究費:2800億元近く(R&D全体の7.08%)
基礎研究比率が7%を初めて超えた点は、短期の事業化だけでなく、時間のかかる土台づくりにも資金が向かっていることを示す数字として注目されます。
2026〜2030年は「自立と強化」の節目に
陰氏は、第15次五カ年計画(2026〜2030年)を、中国が科学技術分野で「より高い自立」と「強さ」を獲得し、世界的な科学技術の拠点を目指すうえでの重要な時期だと述べました。
同時に、国際競争が激しくなるなかで、研究開発の量だけでなく「質」と「成果の社会実装」が問われやすい局面に入っている、という読み方もできそうです。
今後5年の優先事項:4つの柱
陰氏が示した今後5年の優先事項は4点です。政策の方向性を、なるべく噛み砕いて整理します。
1)高品質な科学技術供給を強化
国家レベルの大型プロジェクトを複数立ち上げ、産業発展を後押しする方針です。重点分野として、以下が挙げられました。
- 集積回路(半導体)
- 人工知能(AI)
- バイオものづくり(biomanufacturing)
- 量子技術
- ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)
- 核融合エネルギー
2)企業の「イノベーション主役化」
技術を牽引する企業を育成し、研究資源を企業へより多く配分する考えを示しました。産学研連携(産業・大学・研究機関の協力)や、複数主体が組む「イノベーション共同体」の企業主導も後押しします。
また、R&D費用の税制優遇(税引前の追加控除)をさらに拡充し、企業投資を促す方針も示されています。
3)研究成果の移転・活用を効率化
研究結果を社会で使える形に移す「商業化」を進めるため、改革を深めるとしています。具体的には、概念実証(PoC)やパイロット試験のプラットフォーム整備、技術の適用シーン拡大、資金の呼び込みなどを挙げました。
投資の向かう先として「初期段階」「小規模」「長期」「ハードテック(高度な基盤技術)」が明確に言及された点は、足の長い技術育成を意識したメッセージと読めます。
4)地方のパイロット政策を支援
地域の実情に合わせた試行(パイロット)を支え、地域間連携や都市クラスター(近接都市の連携)を促進するとしています。「新しい質の生産力」という言い回しで、各地の条件に応じた産業高度化を後押しする姿勢が示されました。
成果として挙がった例:ロボット、AIモデル、創薬
陰氏は、科学技術分野の進展例として、先進的なヒューマノイドロボット、世界をリードするオープンソースの大規模モデル(LLM)、チップ研究の新たな進展、革新的医薬品の成長を挙げました。
- 2025年に承認された革新的医薬品:76件
- 海外向けライセンス取引:1300億ドル超
また、中国の世界イノベーションランキングが10位に上昇したとも述べています。
数字の「大きさ」だけでなく、次に見えてくる焦点
R&D投資の記録更新は分かりやすいニュースですが、今後の焦点は、①基礎研究の比率がどこまで安定して伸びるか、②企業主導の連携が実際に成果へつながるか、③PoCやパイロット整備が新技術の社会実装をどれだけ加速させるか——といった点に移っていきそうです。
2026年に入り、第15次五カ年計画が走り出したいま、掲げた重点がどの分野で最初に形になるのか。今後の政策発表や各地の実装事例が、次の手がかりになります。
Reference(s):
cgtn.com








