2030年カーボンピークへ:中国のエネルギー転換は「グリーン燃料」が焦点に
2030年まで残り5年。中国は「カーボンピーク(CO2排出量のピークアウト)」の政治的コミットメントに向け、次の5年(2026〜2030年)を見据えた政策設計と実装を同時に加速させています。
15次五カ年計画(2026〜2030)案に見える“数値目標”
焦点となるのが、策定が進む第15次五カ年計画(2026〜2030年)です。草案として示された目標には、次のような数字が並びます。
- GDPあたりCO2排出量:累計17%削減
- 一次エネルギーに占める非化石燃料比率:21.7%
「排出量そのもの」だけでなく、経済成長あたりの排出効率と、エネルギー構成の転換を両輪で進める設計です。
全国両会で強調:「グリーン燃料」を国家戦略級へ
転換の“次の主役”として存在感を増しているのがグリーン燃料です。全国両会の場で、中国首相の李強氏は、国家的な低炭素転換基金の設立に加え、水素やグリーン燃料など新たな成長ドライバーの育成を今年の重要任務として示しました(第14期全人代第4回会議の政府活動報告)。
グリーン燃料とは何か——「電化しにくい領域」を動かすエネルギー
グリーン燃料は、再エネ由来の電力などを活用して作る低炭素燃料の総称で、具体的には次が挙げられます。
- グリーン水素
- グリーンメタノール
- グリーンアンモニア
- 持続可能な航空燃料(SAF)
- Power-to-Liquid(合成液体燃料)
重工業、海運、長距離の大型トラックなど、電化(EV化)だけでは難しい分野に直接使える点が特徴です。公式発信では、石油代替、エネルギー安全保障、排出削減、さらに「非電力型」の新エネルギー消費拡大に資する方向性が強調され、新たな“質の高い生産力”の育成とも結びつけられました。
すでにある土台:2025年にグリーン水素能力が年26.5万トン超
国家能源局(NEA)によると、中国のグリーン水素の生産能力は2025年に年26.5万トンを超え、用途も拡大しています。さらに、
- グリーンメタノールやバイオディーゼル:交通燃料の一部を代替
- グリーンアンモニア:工業・海運向けの開発が進展
- SAF:一部路線で試行し、運用経験を蓄積
という形で、燃料ごとに“使いどころ”が具体化しつつあります。
再生可能エネルギーが「燃料化」を支える——2025年の急拡大
グリーン燃料の前提は、原料となるクリーンな電力です。ここで大きいのが、2025年の再生可能エネルギーの伸びです。NEAによれば、2025年末時点で中国の再エネ導入は次の規模に達しました。
- 再エネ設備容量合計:2.34TW(前年比24%増)
- 発電設備全体に占める比率:約60%
- 風力:0.64TW
- 太陽光:1.2TW
- 風力+太陽光合計:1.84TW(全体の47%)
2025年の新規導入は0.452TWで、同年の新規電源の83%を占めたとされます。設備容量だけでなく、発電量にも変化が出ています。
- 2025年の再エネ発電量:3.99兆kWh(前年比15%増)
- 総発電量に占める比率:約38%
特に注目されるのは、再エネ発電の増分5193億kWhが、社会全体の電力消費の増分5161億kWhを上回った点です。需要増を「化石燃料の上積み」で賄うのではなく、再エネ増で受け止めたという構図が読み取れます。
産業の“現場”も動く:超低排出化と投資の連鎖
電力と燃料だけでなく、重工業の改造も同時進行です。生態環境部の大気環境司トップ、李天威氏は2026年2月下旬、14次五カ年計画(2021〜2025年)期間に超低排出化の取り組みが大きく進んだと説明しました。
- 石炭火力:設備容量の95%が超低排出基準に適合
- 鉄鋼:生産能力の90%が超低排出基準に適合
鉄鋼分野の転換だけでも投資は4000億元超に達し、環境保護、クリーン輸送、新エネルギー車など周辺産業を押し上げ、特に新エネルギー大型トラックの市場形成につながったとされています。
技術革新の伸び:グリーン特許が支える“次の競争軸”
政策と投資の裏側で、技術面の伸びも報告されています。国家知識産権局が2025年12月に公表した報告によると、
- 2024年のグリーン・低炭素特許公開:12万件(前年比18.9%増)
- 同分野の世界的な増加分への寄与:49.2%
- 2016〜2024年の有効特許:年平均24.1%増、2024年末に28.3万件
蓄電(年平均18.9%増)やクリーンエネルギーなどが、イノベーションの伸びを牽引しているとされます。
2030年へ向けた見取り図——「電力」「燃料」「産業」の同時転換
ここまでの断片をつなぐと、中国の2030年カーボンピークに向けた動きは、単一の施策ではなく、次の組み合わせで進んでいることが見えてきます。
- 計画目標:15次五カ年計画(2026〜2030)の数値設計
- 供給側:再エネの大規模導入で電力を低炭素化
- 需要側:重工業の超低排出化・設備更新
- 橋渡し:グリーン燃料で“電化しにくい領域”を埋める
- 土台:特許・技術の蓄積で継続的に改善
2030年という期限が近づくほど、政策の「方向性」だけでなく、電力・燃料・産業のそれぞれで実装の速度と整合性が問われていきます。今後公表される15次五カ年計画の具体像は、こうした同時転換の“設計図”として注目を集めそうです。
Reference(s):
cgtn.com








