中国本土の光格子時計が10⁻¹⁹精度へ:300億年で1秒のストロンチウム時計
「時計が300億年で1秒しかずれない」——そんな表現が、誇張ではなく技術的な目標値として語られる段階に入りました。中国本土の中国科学技術大学の研究チームが、ストロンチウム光格子時計で安定度・不確かさともに10⁻¹⁹レベルを達成したと発表し、国際計量学誌「Metrologia」に今週3月5日(木)掲載されたといいます。
今回の何がすごいのか:10⁻¹⁹レベルの「安定度」と「不確かさ」
光時計は、原子内の電子がエネルギー準位を移る際に関わる「光の周波数」を基準に時間を測ります。研究チームはストロンチウム(Sr)を用いた光格子時計で、性能指標の中心となる次の2つをともに10⁻¹⁹レベルに押し上げたとしています。
- 安定度:測定を続けたときの揺らぎの小ささ
- 不確かさ:系統誤差などを含む、基準としての確からしさ
この水準は、言い換えると「約300億年で1秒未満の進み・遅れ」に相当すると説明されています。
光時計は「時刻合わせ」だけの話ではない
超高精度の時刻基準は、衛星測位、通信、精密計測など、現代インフラの土台に直結します。さらに光時計は、基礎物理の検証にも使える実験プラットフォームとして注目されています。
- 一般相対性理論の検証
- 重力波やダークマターの検出に向けた試み
ミリメートル級の「重力ポテンシャル・高度」測定が視野に
研究チームは、10⁻¹⁹レベルの達成により、重力ポテンシャルや高度をミリメートル級で測る応用が開けるとしています。具体例として、次のような観測・モニタリングへの貢献が挙げられました。
- 地殻変動の監視
- 地下水変化の把握
- 火山活動のモニタリング
- 防災や資源探査に向けたジオイド(基準となる重力の面)の地図精度向上
「時間の精度」を突き詰める研究が、結果として「地球の状態を読む精度」に跳ね返ってくる、という構図が見えてきます。
ダークマター探索にも:低周波の一過性信号を捉える発想
もう一つの興味深い方向性として、ダークマターとの相互作用で生じうる「一時的で低周波の信号」を捉える新しいアプローチが示されています。日常の時間計測からは遠いテーマに見えますが、超安定な基準があるほど、微弱な変化を“変化として”見つけやすくなります。
世界の到達点の更新:10⁻¹⁸から10⁻¹⁹へ
入力情報によれば、これまで多くの光時計は、安定度と不確かさを合わせた性能で10⁻¹⁸レベルが主流でした。一方、米国の国立標準技術研究所(NIST)や、ドイツのPhysikalisch-Technische Bundesanstalt(PTB)など一部の先端機関がこの水準に迫っていたとされます。今回の成果は、その次の桁である10⁻¹⁹を見据えた具体的な到達例として位置づけられます。
次に起きそうなこと:携帯型・宇宙搭載、そして世界標準へ
研究チームは、この成果が携帯型や宇宙ベースの光時計の実現に向けた「現実的な技術ルート」を示すと述べています。将来的な応用としては、基礎法則の精密検証、次世代の衛星測位、そして超高精度なグローバル時刻標準の統一といった方向が挙げられました。
時計の話は地味に見えますが、精度の一段の更新は、測位・通信・地球観測・基礎科学を同じ一本の軸でつなぎ直します。10⁻¹⁹という数字は、その結節点が一つ先へ進んだサインなのかもしれません。
Reference(s):
Chinese optical clock accurate to within 1 second over 30 bln years
cgtn.com








