中国科学院、ウェアラブル発電に向く柔軟な熱電ポリマーを開発
ウェアラブル機器やIoTセンサーを「熱」で動かす——そんな発想を後押しする柔軟素材が、2026年3月6日付の米科学誌「Science」に報告されました。
何が起きた?——柔らかい「熱電」材料で高効率を達成
中国科学院・化学研究所の研究チーム(朱道本教授、邸崇安教授ら)が、高効率の柔軟な熱電ポリマー材料を開発したと発表しました。新材料は「IHP-TEP(不規則な階層型多孔質の熱電ポリマー)」とされ、343K(約70℃)でZT値1.64を達成。柔軟な熱電材料として、この温度域で新たな目安を示したといいます。
熱電材料とは?——温度差を電気に変える仕組み
熱電材料は、温度差(熱)と電気エネルギーを相互に変換できる材料です。研究では、燃料を使わず、汚染を出さないプロセスとして説明されています。世界のエネルギーのうち、60%以上が廃熱として失われているという統計も示され、廃熱を再利用する技術の伸びしろが改めて注目されています。
既存材料の課題——性能と作りやすさの両立が壁に
研究によると、熱電材料には大きく2系統があります。
- 柔軟な無機系:室温でZT値1.4に到達
- 有機系:ZT値1.2に到達する一方、複雑な製造プロセスが実用化のボトルネックになりやすい
今回のIHP-TEPは、この「柔軟性」「高効率」「作りやすさ」の同時達成に狙いがある内容です。
ポイントは構造——熱は通しにくく、電気は流れやすく
IHP-TEPの特徴として研究は、独特の多孔質構造が熱の伝わり(熱伝導)を抑えつつ、電荷が動きやすい経路(電荷輸送チャネル)を確保すると説明しています。結果として、熱電材料の「理想モデル」に近い効率的な電荷輸送に寄与した、という位置づけです。
量産のイメージが変わる?——スプレー塗工で大面積・低コストへ
もう一つの注目点は製造面です。IHP-TEPのフィルムはスプレーコーティング(吹き付け塗工)に対応し、研究では新聞印刷のように大面積・低コストの製造につながる可能性が示されています。柔軟素材は曲面にも貼り付きやすく、用途の幅が広がります。
どこで使える?——体温、建物外壁、屋外の温度差が電源に
研究が挙げる応用先は、ウェアラブル機器、粘着型の冷却、Internet of Things(モノのインターネット)センサーなどです。特にセンサー用途では、
- 人体の表面
- 建物の外壁
- 屋外フィールド
のように温度差がある場所なら継続的に電力を供給できる可能性があるとされています。「電池交換が難しい場所のセンサー」に対して、電源設計の選択肢を増やす話として受け止められそうです。
次の焦点——“貼って発電”が日常になる条件
熱電は、エネルギーを「作る」よりも「捨てない」発想に近い技術です。今回の報告は、材料の性能だけでなく、作り方や貼りやすさまで含めて、実装に一歩近づける内容として注目されます。今後は、実際の環境での耐久性や発電量の設計、デバイス側の省電力化といった組み合わせが、使いどころを決めていきそうです。
Reference(s):
China develops flexible material for wearable power generation
cgtn.com








