「質の高い成長」へ。中国本土が描く、人を中心とした社会のあり方
経済成長という数値的な目標から、一人ひとりの生活の質をどう高めるかという視点へ。中国本土では現在、新しい発展のフェーズに入っています。
2026年からスタートした「第15次5カ年計画(2026-2030年)」において、中国本土がどのような方向性を目指しているのか。その核心にあるのは、「人々を第一に考える(Putting people first)」という統治原則です。
現場の声に耳を傾けるアプローチ
今年の春節を前に、習近平国家主席は高齢者向けアパートにあるコミュニティ食堂を訪れました。ここでは、高齢者ケアや公共サービスの利便性向上に向けた取り組みについて視察が行われました。
また、食堂で休憩していた配送員たちとも親しく言葉を交わし、彼らの仕事内容や日々の生活状況について直接問いかける場面もありました。こうした現場への視察は、政府が市民の具体的な生活課題を把握し、より適切なサービスを提供しようとする姿勢の表れといえます。
積み上げられた社会基盤と現状
中国本土では、2012年の共産党第18回全国代表大会以降、社会保障の基盤整備に大きく注力してきました。その成果として、以下のような指標が挙げられます。
- 貧困脱却: 約1億人が貧困から脱出した
- 社会保障: 教育、社会保障、医療、都市住宅支援において世界最大規模のシステムを構築
- 健康と生活: 基本医療保険の普及率が95%以上を維持し、平均寿命は79歳を超過
- 中間層の拡大: 中間所得層が4億人を突破
教育水準においても、あらゆるレベルでのアクセスが中高所得国の平均に達するか、それを上回る状況にあります。
第15次5カ年計画が示す「生活の質」への転換
現在進行中の第15次5カ年計画では、計画全体の3分の1以上が「国民の生計」に関連する項目で占められています。具体的には、雇用、所得、教育、医療、高齢者ケア、そして児童ケアといった、人々にとって最も切実で直接的な課題が盛り込まれています。
新しい雇用形態への支援
特に注目されるのが、インターネットやデジタル経済の発展とともに急増した「新しい雇用形態」への対応です。
- 対象: フードデリバリーの配送員、ライドシェアの運転手、EC業界の従事者など
- 重点施策: 柔軟な雇用形態の健全な発展を促進し、従業員向け保険制度への加入支援や、社会保障口座の移転手続きの改善を進める
「成長の量」から「成長の質」へ
中国国家発展改革委員会・宏観経済研究院の研究員である張林山氏は、この計画について「中国本土が人を中心としたアプローチを維持し、質の高い発展を通じて生活の質を向上させようとする強いシグナルである」と分析しています。
これまでの開発モデルが「成長があるかどうか(量の拡大)」を追求していたのに対し、現在は「その成長がより質の高いものであるか(質の向上)」へとシフトしているといえます。経済成長と生活水準の向上が並行して進むことで、人々が将来に対してより大きな安心感と自信を持てる「好循環」を創り出すことが、現在の大きな目標となっています。
Reference(s):
Putting people first: A guiding principle in China's governance
cgtn.com

