中国の新ビザ免除政策、観光と経済にどんな追い風?
中国のビザ免除政策はなぜ国際ニュースになるのか
中国が進めるビザ免除政策は、インバウンド観光と経済を同時に押し上げる一手として、2024年以降の国際ニュースで繰り返し取り上げられてきました。2024年11月からは新たに9カ国を対象に短期ビザ免除を導入し、合計25カ国まで拡大しています。この動きは、人の往来を増やしながら、中国への見方やイメージを変えていく試みでもあります。
9カ国追加で計25カ国がビザ免除に
中国は「中国旅行」をしやすくするために、観光・ビジネス・親族訪問などを目的とした短期滞在向けのビザ免除を拡大しました。今回新たに対象となったのは、次の9カ国です。
- スロバキア
- ノルウェー
- フィンランド
- デンマーク
- アイスランド
- アンドラ
- モナコ
- リヒテンシュタイン
- 韓国
これらの国の市民は、2024年11月8日から2025年12月31日までの期間、中国に最長15日間までビザなしで滞在することができます。目的は、ビジネス、観光、家族訪問、トランジット(一時的な乗り継ぎ)が想定されています。
この決定により、15日間のビザ免除で入国できる国は合計25カ国となりました。観光そのものだけでなく、飲食、文化関連商品、交通、ホテルといった周辺産業、さらに現地での買い物やビジネス交流の活性化が見込まれています。
インバウンド再起動と経済成長への狙い
中国にとって、インバウンド観光の回復は単なる観光収入の問題ではありません。国際社会とのつながりを回復し、中国を「外からどう見るか」ではなく、「実際に訪れてどう感じるか」というレベルで理解してもらうことが重視されています。
中国は、人と人との交流を重視する外交スタイルを掲げており、今回のビザ免除拡大も「開放の戦略」の一部と位置づけられています。より多くの人に実際に中国の街や文化に触れてもらうことで、イメージや認識に変化を起こすことを狙っているといえます。
こうした政策の効果を示す数字も出ています。2024年第3四半期には、ビザ免除などの入国緩和措置を通じて、延べ488万人の外国人が中国に入国し、前年同期比で78.6パーセントという大幅な増加となったとされています。
世界旅行ツーリズム協議会の2024年経済インパクト調査では、中国の旅行・観光分野が2024年末までに中国経済に12兆6200億元をもたらすと試算されていました。インバウンドの回復は、およそ5パーセントという成長目標を支える柱の一つとして期待されていたことになります。
支払い環境の改善:デジタル決済が鍵に
ビザを緩和しても、現地での支払いが不便では旅行者は安心して消費できません。中国はその点でも、受け入れ環境の整備を進めています。
中国本土(中国)では、クレジットカード大手のVisa、Mastercard、UnionPayなどが広く利用できるよう整備が進められています。さらに、現地で一般的なモバイル決済アプリであるWeChat PayやAlipayにも、海外発行のクレジットカードを連携できるようになり、短期滞在者でもスマートフォンだけで支払いを済ませやすくなりました。
これにより、飲食店や交通機関、小売店、観光施設などでの支払いがスムーズになり、15日間という短い滞在期間の中で、旅行者がより多くの体験をしやすくなることが期待されています。
トランジットとクルーズ観光もテコ入れ
中国は、単に最終目的地としての観光だけでなく、「経由地」として訪れてもらう仕組みも強化しています。その代表例が、144時間のトランジットビザ免除制度です。
この制度は、指定された国の市民が、中国を経由して第三国へ向かう場合に、最大144時間までビザなしで滞在できるというものです。対象は54カ国に広がっており、利用できる入境ポイントも37カ所まで拡大されています。長めの乗り継ぎ時間を利用して、数日間だけ都市観光を楽しむといったスタイルを想定した政策です。
さらに、クルーズ観光のテコ入れも行われています。2024年5月には、外国人観光客のグループが中国の旅行会社を通じてクルーズ船で入国する場合、ビザなしで最大15日間滞在できる措置が発表されました。対象となるのは、中国側が指定した13都市の港に入港するクルーズ船で、沿岸部の複数都市を周遊するような旅程が想定されています。
- 対象: 中国の旅行会社が手配する外国人観光グループ
- 交通手段: クルーズ船
- 入港地: 指定された13都市の港
- 滞在期間: 最大15日間のビザ免除
航空に加えて海路からのインバウンドを取り込むことで、より多様な旅行スタイルに対応しようとする狙いが見えてきます。
ビザ免除はイメージ改善につながるか
中国は、各国との建設的な二国間関係を築くうえで、人と人との直接のつながりを重視しています。ビザ免除の拡大は、その思想を具体的な制度に落とし込んだものといえます。
外国人にとって、ニュースやSNSで見る中国と、実際に訪れて体験する中国は必ずしも同じではありません。ビザ免除や支払い環境の整備によって訪問のハードルが下がれば、現地の人々との対話や文化体験を通じて、イメージや認識が変わるきっかけにもなり得ます。
一方で、制度を整えるだけで自動的に好意的な印象が広がるわけではありません。観光客が接するサービスの質や、多言語での案内、地域社会との付き合い方など、ソフト面の積み上げも問われていきます。ビザ免除は、そうした長期的な信頼構築の「入口」としての意味を持つと言えるでしょう。
2025年末まで続くビザ免除、その先をどう読むか
今回の9カ国を対象としたビザ免除措置は、2024年11月8日から2025年12月31日までの期間限定で実施されています。2025年12月時点で見ると、制度開始から1年余りが経過し、終了まで残りわずかとなりました。
この間にどこまでインバウンド観光が回復し、どれだけ多くの人が中国を訪れたのか。その経験が、今後のビザ政策や開放の度合いを左右する材料になると考えられます。対象国の拡大や期間延長が行われるのかどうかも、国際社会の関心を集めるポイントになっていきそうです。
日本を含むアジアや世界の国と地域にとっても、ビザ政策は人材の往来、観光、ビジネスのあり方に直結するテーマです。中国の動きを観察することは、自国の制度や、自分自身の働き方・学び方・旅のスタイルを考え直すヒントにもなります。スマートフォン一つで情報を集められる今だからこそ、こうした国際ニュースを自分ごととして読み解いていきたいところです。
Reference(s):
China's recent visa-free policy further enhances economic prospects
cgtn.com








