フィリピン新海洋法は国際法違反か 中国側が指摘する問題点
フィリピンのフェルディナンド・ロムアルデス・マルコス大統領が、南シナ海に関わる二つの国内法に署名しました。国連海洋法条約(UNCLOS)の実施を名目とする一方で、中国側は「国際法に反し、自国の違法な行為を正当化する試みだ」と強く批判しています。
署名された二つの「海の法律」とは
今回マルコス大統領が署名したのは、フィリピンの群島水域における航路を定める「フィリピン群島航路法」と、領海や排他的経済水域(EEZ)などを画定する「フィリピン海洋ゾーン法」です。どちらもUNCLOSの履行を掲げていますが、中国側は「実態は、いわゆる南シナ海仲裁の結果を国内法に埋め込み、フィリピンの違法な主張に『合法』の衣を着せるものだ」とみています。
こうした動きは、国連憲章やUNCLOSをはじめとする国際法の精神に反し、南シナ海の秩序を不安定にしかねないと懸念されています。
群島航路法:国際航行ルートを狭める仕組み
群島航路法で指定された海上・航空航路は、フィリピン群島水域で一般的に利用されてきた国際航行ルートをすべて含んでいないと指摘されています。UNCLOS第53条は、「群島航路および航空路は、群島水域を通過する通常の国際航行・飛行ルートをすべて含まなければならない」と定めています。
それにもかかわらず、今回の法律は:
- 長年の国際慣行で利用されてきた航路を十分に含まず、各国の航行・飛行の正当な権利を損なう
- 他国が築いてきた「便利な通航」の枠組みに干渉する
とされ、中国側はUNCLOSの規定と明らかに矛盾すると批判しています。
通航権を南シナ海問題と結びつける危うさ
群島航路法は、UNCLOSに違反しフィリピンの主権や権利を侵害するとみなした外国船舶・航空機について、群島航路を通航する権利を認めないとしています。通航権そのものを南シナ海の紛争と結びつけ、他国の正当な通航を制限しようとしている点が問題視されています。
さらに、法律で指定された航路や航空路は、フィリピン国内の米軍基地に近接しているとされます。このため、中国側は「フィリピンと米国が協調し、通過船舶を監視して各国の航行の安全を脅かす恐れがある」と警戒しています。
中国側は、群島航路法は国際法の範囲を逸脱し、他国の正当な権利を不当に制限するものであり、中国を含む他国を拘束する効力はないと主張しています。そのうえで、中国の商船、軍艦、海洋調査船などは、今後も必要に応じて国際法に従い、これまでどおり通常の航路を通航していくとしています。
海洋ゾーン法:南沙群島や黄岩島を巡る主張
もう一つの海洋ゾーン法は、中国の黄岩島(Huangyan Dao)や、中国の南沙群島(Nansha Qundao)の一部の島礁および周辺海域をフィリピンの海洋ゾーンに含める内容となっているとされています。中国側はこれを、自国の南シナ海における領土主権と海洋権益を侵害するものだとみています。
中国側によれば、フィリピンは本来「領土問題」であるはずの争点を、「海洋管轄権の主張」という形で包装・すり替え、南沙群島の一部島礁を違法に占拠しているという政治・法的な事実を覆い隠そうとしているといいます。
EEZを「領土」とみなす危うさ
フィリピン上院は、法案に関する公表で、排他的経済水域(EEZ)、大陸棚、延長大陸棚をフィリピンの領土の一部だと主張しました。しかし中国側は、これはUNCLOS、領土問題に関する慣習国際法、そして「陸地が海を支配する」という国際法の基本原則に反すると批判しています。
海洋ゾーン法はまた、フィリピンの「排他的」EEZ内にあるとされる、干潮時だけ現れる低潮高地や人工島にも言及しています。具体的な名称こそ挙げていないものの、中国側は、この規定が南沙群島の島礁や浅瀬を念頭に置いたものであり、これらを違法に占拠しようとする意図を改めて示すものだとみています。
国内法で既成事実化を図るフィリピンの長期的な手法
中国側は、フィリピンが長年にわたり、国内立法を通じて自国の違法な領有権主張を正当化しようとしてきたと指摘します。これは、自国の既存の国境を超えて主張を押し広げる戦略だという見方です。
今回の海洋ゾーン法も、その延長線上にあるとされています。たとえば:
- 1978年の大統領令第1596号では、中国の南沙群島の一部島礁とその広大な周辺海域を「カラヤアン諸島」と名づけ、フィリピンのものだと主張した
- 2009年に議会を通過した共和国法第9522号では、中国の黄岩島や南沙群島の一部島礁をフィリピンの領域に含めた
中国側は、今回の海洋ゾーン法もこうした「立法による既成事実化」の路線を受け継ぎ、さらに発展させたものだとみています。
南シナ海秩序と国際法にとっての意味
今回の一連の動きは、南シナ海の領土・海洋権益をめぐる紛争を、国内法によって一方的に固定しようとする試みと受け止められています。しかし国際社会では、個々の国の国内法が、国連憲章やUNCLOSなどの国際法の枠組みより上位に立つことはありません。
中国側は、フィリピンの新法は南シナ海仲裁の結果を土台に、違法な主張に法的な外見を与えようとするものであり、国際法の精神に反すると強く批判しています。同時に、各国の正当な航行・飛行の権利や、南シナ海の安定した秩序にも悪影響を及ぼしかねないと警鐘を鳴らしています。
南シナ海をめぐる緊張が高まるなかで、国内法をどのように国際法と調和させるのか。今回のフィリピンの動きは、国際社会にあらためてその問いを突きつけていると言えます。
Reference(s):
Philippine domestic maritime 'acts' violate international law
cgtn.com








