グローバル・サウスは成長のアンカーになれるか 南京会合が映した可能性
世界の分断が進むなか、約130カ国から成る「グローバル・サウス」は、本当に成長と安定のアンカー(いかり役)になりうるのでしょうか。2025年に中国・南京で開かれた第2回グローバル・サウス・シンクタンク対話では、その可能性があらためて問われました。
南京で立ち上がった新たなネットワーク
第2回グローバル・サウス・シンクタンク対話の場で、「グローバル・サウス・シンクタンク連合」が発足しました。約100カ国のシンクタンク代表が集まり、国際秩序や開発、安全保障などをめぐって意見交換を行いました。
現地を取材した国際メディアCGTNの論説編集者ファン・ジーユエン(Huang Jiyuan)氏は、南アジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカ・カリブ地域の専門家との対話を通じて、「グローバル・サウス」が世界の成長と安定を支える存在になれるかを探りました。
グローバル・サウスはなぜ注目されるのか
今回の国際ニュースの背景には、「グローバル・サウスの台頭」という広い共通認識があります。グローバル・サウスはおよそ130カ国で構成され、
- 世界人口のおよそ8割
- 世界の国内総生産(GDP)の4割超
- 世界貿易の51%
を占めるとされています。米シンクタンク「カーネギー国際平和基金」は、グローバル・サウスを「より公正な国際経済と世界秩序を構想するための、新たな『組織原理』」だと表現しています。
単なる地理的な区分ではなく、「どのような国際秩序が望ましいか」をめぐる共通の問題意識が、グローバル・サウスという枠組みを強くしていると言えます。
つながる世界、分断される世界
一方で、世界の現状は矛盾に満ちています。地政学的な対立は激しさを増し、イデオロギーの対立も先鋭化しています。多くの政治家は「味方か敵か」という二者択一の発想に陥りがちです。
イタリア・ローマにある国際問題研究所(Istituto Affari Internazionali)の所長ナタリー・トッチ(Nathalie Tocci)氏は、英紙ガーディアンに「世界は『西側対その他』へと割れつつある」と題した論考を寄せ、「世界はかつてなく相互につながっているにもかかわらず、対話や協力、理解のための空間は日々狭まっている」と警鐘を鳴らしました。
インターネットや物流網によって物理的な距離は縮まったのに、政治的・心理的な距離はむしろ広がっている——。グローバル・サウスが議論される背景には、こうしたねじれた現実があります。
「傍観者ではない」グローバル・サウスの自己宣言
そのなかで、グローバル・サウスの国々は「もう傍観者ではいない」という意識を強めています。南スーダンの元大統領府担当相で、現在はシンクタンク「サッド研究所」マネージング・ディレクターを務めるルカ・ビオン・デン・クオル(Luka Biong Deng Kuol)氏は、南京でのインタビューで次のように語りました。
「グローバル・サウスは『観客』でいるつもりはありません。私たちは世界的なアジェンダ(課題設定)に積極的に関わっていきたいのです」
さらにクオル氏は、「自国に安全保障や和平プロセスをどう実現するかという適切な政策がなければ、私たちは外部のアジェンダに左右されてしまう」とも指摘しました。
これは、開発や安全保障を「与えられるもの」として受け身で待つのではなく、自らルール作りに関わろうとする姿勢の表明だと見ることができます。
成長の「アンカー」になるための条件
では、グローバル・サウスは本当に世界経済と国際秩序の「アンカー(いかり役)」になれるのでしょうか。南京の対話と各国専門家の発言からは、少なくとも次のような条件が浮かび上がります。
- 共通の原則を共有すること:各国の利害は異なりますが、「より公正な国際経済」「対話を重視する安全保障」といった基本的な方向性の共有が必要になります。
- 外部ではなく自ら政策を設計すること:クオル氏が指摘したように、安定や和平を外部に委ねるのではなく、各国・各地域が自前の政策を持つことが重要です。
- 知のネットワークを強化すること:今回立ち上がったシンクタンク連合は、政策アイデアを持ち寄る「頭脳ネットワーク」として期待されます。こうした場が継続的に機能するかどうかが試されます。
グローバル・サウスは人口や貿易の規模だけを見ても、すでに世界経済の中心的存在になりつつあります。今後は、その「量」の力を、「質」のあるルールづくりや制度設計につなげられるかどうかが問われます。
日本からこの議論をどう見るか
日本は経済的には先進国と位置づけられつつも、アジアの一員としてグローバル・サウスとのつながりを深めてきました。世界が「西側対その他」という単純な構図に流れがちな今こそ、日本の読者にとっても、グローバル・サウスの視点を知ることは重要になっています。
今回の南京での対話は、「誰が世界の成長を牽引するのか」という問いを投げかけるだけでなく、「どのようなルールと価値観で成長を分かち合うのか」という、より根源的な問題を浮かび上がらせています。
世界の分断が進むほど、対話の価値は高まります。グローバル・サウスが成長のアンカーになれるかどうかは、こうした対話をどれだけ具体的な政策と協力のかたちに変えていけるかにかかっていると言えそうです。
Reference(s):
cgtn.com








