COP29の陰で進む「グリーン保護主義」 私たちの脱炭素を鈍らせる理由
バクーで開かれている国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)では、各国首脳や専門家が気候変動への対策強化を議論しています。その一方で、脱炭素を掲げながら実は自国産業を守る「グリーン保護主義」が広がり、世界全体のグリーン転換を妨げかねないと指摘されています。
バクーのCOP29と高まる危機感
今回のCOP29は、地球温暖化を抑えるために各国がどこまで排出削減を加速できるか、そして気候資金をどう拡充するかが焦点となっています。ところが、環境対策を名目にした保護主義的な通商政策が、国際協力の足並みを乱すリスクが注目されています。
グリーン保護主義とは何か
グリーン保護主義とは、一見すると環境にやさしい政策のように見えながら、実際には自国産業を守るために貿易や投資をゆがめる措置のことを指します。この記事が取り上げる論点は、次のような動きに向けられています。
- 競争力の高い電気自動車(EV)や太陽光発電設備などの輸入に、高い関税を課す動き
- 豊富な財政力を持つ先進国が、自国のグリーン産業に巨額の補助金や税控除を与えること
- 輸入品に追加コストを課す国境炭素税(いわゆる炭素国境調整措置)の導入をめぐる議論
これらは「環境のため」と説明される一方で、実際には自国企業の競争力を高め、他国、とくに開発途上国の産業育成を難しくする側面があります。
脱炭素のスピードを遅らせる理由
グリーン保護主義が本当に問題なのは、地球全体の脱炭素を遅らせてしまう点です。そのメカニズムは、次のように整理できます。
1. 技術普及のブレーキになる
EVや太陽光発電などのグリーン技術は、世界に広く普及するほど温室効果ガスの削減に貢献します。しかし、競争力のある製品に高い関税がかけられると、導入コストが上昇し、市場への展開が遅れてしまいます。その結果、各国が掲げる排出削減目標の達成も先送りされかねません。
2. 先進国と開発途上国の格差を広げる
豊かな先進国は、自国のグリーン産業に手厚い補助金を出すことができます。一方、多くの開発途上国には同様の財政余力がなく、自国の企業を十分に支援できません。しかも、先進国は毎年1,000億ドル規模の気候資金を供与する約束をしながら、十分に履行できていないとされています。
その結果、グリーン産業の育成に必要な資金も技術も十分に得られない国々が取り残され、世界全体の気候対策が非対称で不公平なものになるリスクがあります。
3. 消費者コストを押し上げ、需要を冷やす
高関税や補助金競争のツケは、最終的には消費者に回ってきます。EVや再生可能エネルギー関連製品の価格が高止まりすると、人々の「グリーン製品を選ぼう」という意欲がそがれ、需要が伸びにくくなります。競争が乏しい市場では、企業側の技術革新インセンティブも弱まりかねません。
WTOルールと多国間貿易への影響
グリーン保護主義は、世界貿易機関(WTO)のルールにも反すると指摘されています。具体的には、次の2つの原則が問題視されています。
- 内国民待遇原則:輸入品と国産品を差別して扱ってはならないとするルール
- 最恵国待遇原則:特定の国だけを優遇・差別してはならないとするルール
アメリカのインフレ抑制法に盛り込まれたグリーン産業向けの補助金や税額控除は、国産品を事実上優遇しているとして、内国民待遇に反するとの見方があります。また、欧州連合(EU)が検討している国境炭素税は、特定の国や開発途上国に不利に働く可能性があり、最恵国待遇の原則と緊張関係にあるとされています。
こうした動きがエスカレートすると、関税の引き上げ合戦や補助金の出し合いによる「貿易戦争」「関税戦争」「補助金戦争」に発展し、グリーン分野で本来必要な国際協力が損なわれかねません。
日本とアジアの読者が押さえたいポイント
日本やアジアの国々にとっても、グリーン保護主義は決して他人事ではありません。EVや再生可能エネルギー、蓄電池などの分野で競争力を持つ企業は、保護主義的な関税や規制の影響を直接受ける可能性があります。
一方で、国内の脱炭素を進める立場から見ると、世界市場での競争が抑えられることは、導入コストの上昇や技術革新の停滞につながる恐れがあります。結果として、家庭や企業が求める「安くて性能の良いグリーン技術」が手に入りにくくなるかもしれません。
バクーでのCOP29をきっかけに、私たちは次のような問いを意識する必要があります。
- 環境と産業政策をどう両立させるのか
- 開発途上国を含むすべての国が参加しやすい、公平なグリーン貿易ルールとは何か
- 未達となっている気候資金の約束を、どう具体的に履行していくのか
おわりに:共有の「緑の未来」を守るために
気候危機が深刻化する中で、世界にはこれまで以上に強く、協調的な行動が求められています。グリーン保護主義が広がれば、地球規模の温暖化対策も、多国間貿易体制への信頼も揺らぎかねません。
本当に必要なのは、「自国だけが得をするグリーン政策」ではなく、技術や資金を分かち合いながら、すべての国が参加できる形で脱炭素を進める仕組みづくりです。バクーのCOP29で交わされる議論や合意は、その方向性を占う重要な試金石となります。ニュースを追うときには、排出削減目標だけでなく、貿易ルールや気候資金をめぐる議論にも目を向けておきたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








