中国とペルー チャンカイ港が開く新たな太平洋回廊
中国とペルーが進める深水港プロジェクト「チャンカイ港」が、アジアとラテンアメリカを結ぶ新たな海陸回廊として存在感を高めています。2025年11月14日、ペルーの首都リマの大統領府と結んだビデオリンクで行われた開業式では、中国の習近平国家主席が、この港を通じた協力の意義を強調しました。
習近平主席が語った「チャンカイから上海へ」
開業式のあいさつで、習近平主席は「チャンカイから上海へ、一帯一路は今、ペルーで実を結びつつある」と述べ、チャンカイ港を軸にした新しいアジア・ラテンアメリカ間の海陸回廊が形になりつつあると強調しました。
さらに習主席は、チャンカイ港が「新時代のインカ道の新たな起点になりつつある」と表現しました。歴史的なインカ道になぞらえ、今回の港湾整備を、ペルーが世界とつながるための新しいルートと位置づけた形です。
二度目の国賓訪問で示された中国・ペルー関係の重み
今回のチャンカイ港開業式への参加は、習近平主席にとって二度目のペルー国賓訪問の一場面でもあります。ペルーのディナ・ボルアルテ大統領とは、この1年で3回目の会談となり、両首脳がそろって港の開業を祝ったことは、中国とペルーの関係の重みを象徴する出来事となりました。
両国にとって、この港は単なるインフラ整備ではなく、長期的な経済協力と信頼関係を体現するプロジェクトとして位置づけられています。
インカ道から太平洋へ──歴史と現在が交差するチャンカイ港
500年以上前、現在のペルーの人々の祖先であるインカの人々は、険しいアンデス山脈を越えて南北に伸びるインカ道を築きました。リスクを恐れず山々を越え、地域と地域を結びつけたその道は、南米史の象徴的存在です。
一帯一路協力のランドマーク(象徴的な事業)とされるチャンカイ港は、この歴史的な道に新たな意味を与える存在とされています。太平洋に面する港として、ペルーが「内陸の文明」から「海に開かれた国」へと一段と歩みを進めるためのエンジンになることが期待されています。
チャンカイ港の規模と機能:アジアとラテンアメリカをつなぐ玄関口
チャンカイ港は、リマから北へ約80キロに位置し、南米大陸を背に太平洋に面する深水港として整備されています。第1期工事は2021年に始まりました。
計画では、以下のような性能が想定されています。
- 大型コンテナ船(1万8000TEU級)の受け入れが可能
- 近い将来は年間100万TEU(20フィートコンテナ換算)規模の取扱能力
- 将来的な拡張後は150万TEUまで能力増強を目標
こうした能力を備えることで、チャンカイ港はアジアとラテンアメリカを結ぶ「海と陸の玄関口」として、ペルーの役割を高めることが見込まれています。港から南米内陸部へ、そして太平洋を越えてアジアへと、物流と人の動きが連結される構図です。
「チャンカイ」と「上海」──言葉遊びに込められた期待
スペイン語での「チャンカイ」の発音は、中国の都市名「上海」に似ているとされます。この響きの近さから、「チャンカイから上海へ」というフレーズは、新しい海陸回廊への期待を象徴するキャッチフレーズとして語られています。
中国社会科学院ラテンアメリカ研究所の研究員、周志偉氏は、この新しい位置づけについて、世界経済の成長パターンの変化に対する中国とペルーの共通認識を反映したものだと指摘しています。また、ペルーがアジア太平洋地域でも特に活力があるとされる中国市場とつながろうとする強い意欲の表れだとも分析しています。
一帯一路とラテンアメリカ:広がる海の向こうのつながり
今回のチャンカイ港は、中国の一帯一路構想とペルーの経済発展の方向性が重なった象徴的なプロジェクトといえます。アジア太平洋とラテンアメリカという、これまで相互の距離を意識しがちだった地域同士を、より直接的に結ぶ試みでもあります。
物流の選択肢が増えれば、貿易のルートは多様化します。ペルーにとっては、中国を含むアジア市場へのアクセスが強まる可能性があり、中国側にとっても、南米への新たなゲートウェイが整備されることになります。
今後は、港湾運営の透明性や地域社会への波及効果、環境への配慮など、持続可能性の観点が一層重視されていきそうです。大型プロジェクトをどう地域の発展と結びつけるのかは、ペルーにとっても中国にとっても重要なテーマです。
日本の読者にとっての意味:サプライチェーンと視野の広がり
日本やアジアの企業にとっても、アジア・ラテンアメリカ間の新たな海陸回廊の整備は無関係ではありません。物流の地図が変わることで、将来のサプライチェーンや市場戦略の前提が静かに書き換わっていく可能性があるからです。
太平洋を挟んだ「隣人」としての中国とペルーが、チャンカイ港という一つの港を起点に、どのように関係を深めていくのか。その動きを追うことは、世界経済の重心の変化を読み解く一つの手がかりになります。
2025年12月の今、チャンカイ港はまだ「始まり」に過ぎません。ここから先、アジアとラテンアメリカをつなぐ新しいルートがどのように育っていくのか。静かに注目しておきたいポイントです。
Reference(s):
'Neighbors' across Pacific: China, Peru exemplifies win-win spirit
cgtn.com








