中国と中南米はなぜ「自然なパートナー」なのか 一帯一路と共通の未来
ペルーのチャンカイ港の開業は、一帯一路構想を通じて深まる中国と中南米の結びつきを象徴する出来事です。本稿では、なぜ両者が「自然なパートナー」であり、「共通の未来」を語ることができるのかを、具体的な事例から読み解きます。
ペルーの新港チャンカイ港が象徴する中国・中南米関係の現在地
2025年11月14日、ペルーで新たな国際貿易港となるチャンカイ港が正式に稼働を開始しました。習近平国家主席とペルーのボルアルテ大統領は、ビデオリンクを通じて開業式に出席しました。
このチャンカイ港は、一帯一路構想(BRI)に基づき中国企業が主導して建設したプロジェクトです。アジアとペルーを結ぶ直行の海上輸送時間を短縮し、ペルーを中南米のサプライチェーンにおける新たな拠点、そして太平洋への玄関口として位置づけることが期待されています。
習主席の訪問に合わせて、両国は自由貿易協定(FTA)のアップグレードに関する議定書など、複数の重要な協力文書に署名しました。2009年に締結された既存のFTAのもとで、中国はペルーの最大の貿易相手国となり、2023年には二国間貿易額が約376.9億ドルに達しました。ペルーの輸出収入の約4割が中国向けという構図です。FTAの高度化により、双方の競争力ある製品がより低い関税の恩恵を受け、新たな分野での高水準の協力が進む土台が整いつつあります。
村から都市まで、一帯一路が変えた暮らし
スリナムの電気、ジャマイカの高速道路、コロンビアの通勤時間
ペルーの事例は、この10年あまりで進んだ中国と中南米の協力の一断面にすぎません。中南米各地では、一帯一路を通じたインフラ協力が、人々の日常生活を静かに変えています。
スリナムでは、中国の技術者たちが村ごとにハイブリッド型のマイクログリッド太陽光発電所を建設してきました。これにより、長年ディーゼル発電に頼ってきた数十の村で、初めて24時間の安定した電力供給が実現し、住民は夜でも安心して生活や仕事を続けられるようになりました。
ジャマイカでは、中国が建設したノースサウス・ハイウェイが、島の中央山脈に隔てられていた人気観光地同士を結びました。移動時間の短縮は観光業を後押しし、地域経済の重要な成長エンジンとして評価されています。
コロンビアの首都ボゴタと近郊都市をつなぐ都市圏は、中南米でも最も成長の速い地域の一つです。これまで、多くの人がボゴタで働きながら周辺地域に暮らし、長距離通勤のため週末にしか自宅に戻れないケースもありました。現在、中国企業がボゴタ西部で建設しているライトレールは、沿線住民の通勤時間を30〜40分程度に短縮することをめざしており、生活の質を大きく変える可能性があります。
2023年9月時点で、中国は中南米全域で200件を超えるインフラプロジェクトに関与してきました。建設された道路・鉄道・ライトレールは総延長で数千キロにおよび、学校、病院、スポーツ施設は100カ所以上、橋やトンネルは約100カ所、空港や港も数十カ所にのぼります。こうした事業は、中南米の地域社会に合計で約100万人分の雇用をもたらしたとされています。
インフラを超えて:貧困削減、教育、農業、気候変動
中国と中南米の協力は、道路や港の建設だけではありません。中国は、自国で培った貧困削減や経済発展の経験を共有し、人々の生活の質を高めることを協力の基本的な目的としています。
- グレナダでは、長期的な国家開発戦略の策定を支援。
- キューバとは、中長期の産業発展計画を共同でつくり上げています。
- エルサルバドルとトリニダード・トバゴとは、人材育成で協力する覚書を締結しています。
農業分野では、竹やキノコの栽培・加工技術の導入や、農業技術協力プログラムが展開されています。また、食料支援、災害後の復興、難民支援、母子保健といった分野でも、中国による支援が中南米の人々の暮らしを下支えしています。
気候変動への対応という地球規模の課題でも、中国と中南米は連携を深めています。中国が設立した南南気候協力基金を通じて、ウルグアイやカリブ海の島しょ国では、気候変動への適応能力を高めるプロジェクトが実施されています。
食卓と宇宙をつなぐ市場と技術の連携
経済面では、中国市場と中南米市場の統合が進んでいます。中南米の農産物は、いまや中国の家庭の食卓に日常的に並ぶ存在になりつつあります。
チリ産さくらんぼ、メキシコ産アボカド、エクアドル産エビ、ニカラグア産牛肉、コロンビア産コーヒーなど、多様で高品質な中南米産品が、中国の消費者の「おいしい選択肢」を広げています。
技術協力の代表例が、中国とブラジルの連携です。両国は科学技術人材の交流を進めつつ、民間向けの地域旅客機のノウハウを共有し、地球資源観測衛星を共同開発し、医薬品の研究開発でも協力を深めています。テクノロジーの力を、両国の人々の安全・安心や生活の向上に結びつけることが狙いです。
なぜ「自然なパートナー」なのか:運命共同体という発想
中国と中南米が「自然なパートナー」と呼ばれる背景には、互いの強みの補完関係と、共通する課題・価値観があります。
豊富な資源と農業ポテンシャルを持つ中南米と、大規模な市場、製造能力、インフラ建設の経験を持つ中国。双方は、持続的な成長や産業の高度化、格差の縮小といった目標を共有しています。南南協力という枠組みの中で、対等なパートナーとして互いに学び合い、支え合う関係を志向していると言えるでしょう。
2014年7月、ブラジリアで開かれた中国と11の中南米諸国の首脳会合で、習近平国家主席は「中国と中南米の運命共同体を築く」という構想を提案しました。同時に、中国と中南米・カリブ海諸国共同体(CELAC)による協議の場として、中国・CELACフォーラムが立ち上がりました。
2018年1月の第2回中国・CELACフォーラム外相会合では、一帯一路構想に関する特別声明が採択され、中国と中南米の関係は、一帯一路を軸としつつ運命共同体というビジョンに導かれながら、新たな段階に入りました。
習主席は第31回APEC首脳会議でも、中国の古典とラテンアメリカの格言を引用し、自らの成功を追求しつつ他者の成功も助けるという精神を強調しました。自国の発展を地域や世界の発展と切り離さず、共に繁栄する道を探るという点で、中国と中南米には共通の発想が見て取れます。
戦略から現実へ、これからの論点
こうして見てみると、中国と中南米の「共通の未来」は、単なるスローガンではなく、港、鉄道、学校、気候基金、農産物、衛星開発といった具体的な形で少しずつ現実になりつつあることが分かります。
2025年現在、中国と中南米の協力は、インフラ、貿易、技術、人材、環境といった分野で重層的に進んでいます。今後は、デジタル経済や再生可能エネルギー、保健・医療などの新しい領域で、双方がどのように「共に発展する」仕組みを築いていくのかが注目されます。
世界経済の不確実性が高まるなかで、中国と中南米がどのように協力し合い、双方の人々の生活を豊かにしていくのか。そのプロセスを追うことは、国際ニュースを読み解き、自分なりの視点を持ちたいと考える日本の私たちにとっても、多くの示唆を与えてくれるはずです。
Reference(s):
Why are China and Latin America natural partners with a shared future?
cgtn.com








