COP29バクー会合で「気候資金」が主役に 途上国支援の新たな枠組みとは
11月11日、アゼルバイジャンの首都バクーで開幕した国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)では、各国がどれだけ「気候資金」を動員できるかが最大の焦点になっています。
気候変動を1.5度以内に抑えるという国際目標が揺らぐなか、各国がどのような資金メカニズムとルールづくりに合意できるかは、今後数十年の世界経済と社会の姿を左右します。
COP29の目的:1.5度目標と「現実的な野心」
COP29の大きな目的は、各国が受け入れ可能でありながら十分に野心的な勧告をまとめ、それを国内政策として実行に移すための道筋を示すことです。産業革命前と比べた気温上昇を1.5度以内に抑え、地球規模の深刻な被害を避けることが最終目標とされています。
約30年前にベルリンで第1回会合(COP1)が開かれて以来、国際社会は一貫して温暖化の抑制を目指してきましたが、パリ協定で掲げた削減ペースは遅れており、巻き返しが必要な局面にあります。
なぜ「気候資金」が主役なのか
パリ協定で各国が掲げた温室効果ガス削減目標は、現状のままでは1.5度目標を達成するには不十分とされています。そのギャップを埋めるために不可欠なのが、公的資金と民間資金を組み合わせた「気候資金」の大幅な拡大です。
今回のCOP29では、次のような資金に関する議題が中心になっています。
- 各国の削減目標(NDC)の強化と、その実行を支える資金
- 各国の適応計画(NAP)の策定と資金支援
- 損失・被害基金の拡充による脆弱な国・地域の支援
- 新たな気候資金行動基金(CFAF)の設立構想
- パリ協定に基づく新たな気候資金目標(NCQG)の策定
NDCとNAP:各国に求められる「約束の上乗せ」
会議の準備文書やこれまでの議論によると、COP29では各国に対し、温室効果ガス削減の約束である国別削減目標(NDC)をさらに拡大・強化するよう求める決議が打ち出される見通しです。
各国は2025年までに更新版のNDCを国連に提出することが求められており、そのなかでは、化石燃料の段階的かつ決定的な削減と再生可能エネルギーの大幅な拡大が重視されています。
NDCとは
NDC(Nationally Determined Contributions)は、各国が自ら決めて国連に登録する温室効果ガス削減の目標と行動計画です。世界全体の排出量は、このNDCの合計で決まっていきます。
NAPとは
一方で、気候変動の影響はすでに現れており、適応策の整備も急務です。開催国アゼルバイジャンは、参加国すべてが「国別適応計画(NAP)」を来年までに策定・承認することを期待しており、そのための資金を増やす重要性を強調しています。
損失・被害基金と新基金CFAF:脆弱国をどう支えるか
COP29では、気候変動による被害をすでに受けている国やコミュニティをどう支援するかも重要なテーマです。その中心にあるのが、近年立ち上がった「損失・被害基金」です。
この基金は、とくに小島しょ開発途上国や後発開発途上国など、気候変動の影響に極めて脆弱な国や地域のコミュニティを支援することを目的としています。各国からの拠出を増やし、実際の被害に対応できる規模に育てていくことが求められています。
さらに、COP29では14の新たなイニシアチブを承認することが想定されており、その中でも注目されているのが、バクーに拠点を置く「気候資金アクション基金(CFAF)」の創設案です。
化石燃料産出国でもある開催国アゼルバイジャンは、この基金への初期拠出を行う意向を示しています。CFAFは、化石燃料を産出する国や企業から合計10億ドル規模の初期資金を集め、開発途上国の再生可能エネルギーや気候関連プロジェクトへ投資することを目的としています。
基金が得た利益は、さらに新たなプロジェクトに再投資する仕組みが想定されており、「化石燃料から得られた資金を、再生可能エネルギーと気候対策へ振り向ける」循環をつくれるかどうかが注目されています。
世界全体で必要な金額は:2025年に年1兆ドル、2030年に2.4兆ドル
パリ協定の下では、各国政府は2025年までに新たな気候資金目標を設定することになっており、「新たな集団的数量目標(NCQG)」と呼ばれています。このNCQGについて、バクーでのCOP29での合意が目指されています。
2022年に公表された「独立ハイレベル専門家グループ」の報告書によると、多くの開発途上国が気候目標を達成するには、
- 2025年までに年間約1兆ドル
- 2030年までに年間約2.4兆ドル
という規模の資金が必要になると見積もられています。公的資金だけでなく、国際金融機関や民間資金をどこまで動員できるかが問われています。
1.5度目標と「排出ギャップ」:エネルギー転換のカギ
これまでの推計と現在のトレンドからは、世界全体の二酸化炭素排出量は近い将来ピークに達すると見込まれています。しかし、排出削減のペースは依然として目標に追いついておらず、このまま十分な削減が行われなければ、今世紀末までに世界の平均気温が2.4度上昇する可能性があるとされています。
この「排出ギャップ」を縮めるための具体的なエネルギー目標として、
- 世界の再生可能エネルギー設備容量を3倍にする
- エネルギー効率の改善スピードを2倍にする
ことを2030年までに達成する必要性が強調されています。こうした目標を実現するためにも、十分な気候資金の確保が前提条件になります。
これからの議論のポイント
COP29での気候資金をめぐる議論は、今後数年の国際交渉の方向性を占う試金石になります。とくに次のような点が注目されます。
- 巨額の資金ニーズをどのように公的資金と民間資金で分担し、動員するのか
- 開発途上国のニーズに応えつつ、資金の使途の透明性と成果をどう確保するのか
- 化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を、公正かつ段階的に進めるための仕組みをどう設計するのか
バクーでの合意形成の行方は、1.5度目標を現実のものにできるのか、それとも2度を超える危険なシナリオに向かってしまうのかを左右する重要な分岐点になっています。
私たち一人ひとりにとっても、エネルギーの使い方や投資・消費のあり方を見直すきっかけとして、COP29での「気候資金」をめぐる議論に注目していくことが求められています。
Reference(s):
cgtn.com








