COP29と都市レジリエンス:気候リスクにさらされる中国の都市はいま何をすべきか
リード:現在、アゼルバイジャンのバクーで開かれているCOP29では、気候変動への対応が改めて問われています。世界のCO2排出の約7割を占める都市、とりわけ都市化が進む中国の都市が、緩和と適応をどう組み合わせてレジリエンス(しなやかな強さ)を高めるかが焦点になっています。
COP29と揺らぐ気候公約:いま何が問われているのか
国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)が、地球温暖化が進むなかアゼルバイジャンのバクーで開催されています。最近の米国での選挙結果は、各国の気候公約にさらなる不確実性をもたらしていますが、科学が示すメッセージは明確です。気候危機への対応は、今すぐ、そして集団としての行動が不可欠だということです。
都市はなぜ気候変動対策の「主戦場」なのか
都市は、気候変動の被害を受ける最前線であると同時に、解決のカギも握っています。世界で約45億人が都市に暮らし、都市は地球全体のCO2排出量のほぼ75%を占めています。つまり、都市のあり方を変えなければ、地球規模の排出削減は実現しません。
中国の都市化と「人中心」のまちづくり
中国では、常住人口ベースの都市化率がすでに65%を超え、2030年までに70%に達すると見込まれています。この急速な都市化の流れに、気候変動対策をどう統合していくかが重要な課題です。
都市の再開発や更新のプロセスを活用して、気候戦略を組み込むことができれば、「人中心」の都市化戦略を後押しできます。具体的には、次のような狙いがあります。
- エネルギー効率や再生可能エネルギーの導入を進めることで、都市のグリーン成長を促す
- 極端な高温や豪雨に耐えられるインフラを整え、気候リスクに対するレジリエンスを高める
- 都市の更新を通じて、暮らしやすさと安全性を同時に向上させる
WRIの最新分析:3℃の温暖化が中国の都市にもたらすもの
世界資源研究所(WRI)の最新の研究は、今後の気候リスクの厳しい現実を示しています。研究チームは、世界の約1000の主要都市を対象に、気温上昇が1.5℃の場合と3℃の場合の影響を比較しました。
そのうち中国の158都市のデータを詳しく分析した結果、もし地球の平均気温が3℃上昇するシナリオになれば、以下のような変化が予測されています。
- 猛暑日の急増:日最高気温が35℃を超える日数が、中国全体で約70%増加
- 熱波の集中:長期かつ強烈な熱波が、長江デルタや珠江デルタといった大都市圏で特に深刻化
- 地すべりリスクの上昇:極端な降雨による地すべりリスクが約13%増加
- 感染症リスクの拡大:マラリアやデング熱といった蚊を媒介とする感染症が北へ広がり、中国中部・西部・東北部で健康リスクが高まる
こうした変化は、都市のインフラや公共サービスに大きな負荷をかけ、医療・保健体制にも重い負担をもたらします。上下水道や排水システム、交通網、電力網などの設計が、これまで以上に「極端」を前提としたものへと変わっていく必要があります。
「緩和」と「適応」をどう両立させるか
気候変動は、もはや抽象的な将来の懸念ではありません。特に都市部では、猛暑や豪雨、健康リスクの増大としてすでに日常生活に影響を与え始めています。それに対しては、温室効果ガスの排出を減らす「緩和」と、影響を受け止め被害を減らす「適応」の両方が必要です。
中国の前気候変動特使である解振華氏も、気候変動の緩和と協力の在り方をさらに研究し、温室効果ガス排出を抑えつつ、開発途上国が命に関わる課題を軽減できるような政策手段が数多く存在すると指摘しています。つまり、政策の選択肢はすでにあり、それをどう組み合わせて実行するかが問われている段階だということです。
G20とインフラ投資:コストではなく「将来への投資」として
特に大きな責任を負っているのが、世界の温室効果ガス排出量の約80%を占めるG20主要国です。しかし、現在のところ、どの国も自ら掲げたネットゼロ(実質排出ゼロ)の目標に十分なスピードで到達できる軌道には乗っていません。
ここで重要なのは、気候レジリエンスを高めるための投資を「負担」とだけ見なさないことです。WRIは、気候変動による極端な気象現象が激しさを増せば、その被害コストははるかに高くつく可能性があると警告しています。逆に言えば、今のうちにレジリエントなインフラや都市設計に投資することは、将来の大きな損失を避けるための「保険」であり、長期的には合理的な投資ともいえます。
各国、とりわけG20のような大規模経済圏は、次のような取り組みをさらに加速させることが求められています。
- 温室効果ガス排出削減の目標と実行計画の一層の引き上げ
- 省エネや低炭素技術を前提としたインフラ整備へのシフト
- 開発途上国の都市が、気候リスクに備えるための資金や技術の支援
都市に暮らす私たちへの問い:レジリエンスをどう育てるか
都市レジリエンスの議論は、巨大都市だけの話ではありません。人口規模の小さな都市や地方都市、そしてあなたが暮らす街もまた、気候リスクにさらされています。
今回のCOP29とWRIの分析が示すのは、次のような問いかけでもあります。
- 自分の住む都市は、猛暑や豪雨、感染症リスクの増大を前提にした都市計画になっているか
- 都市更新や再開発の議論に、気候変動の視点が十分に組み込まれているか
- 気候対策が、生活の質や経済成長とどう両立するのか
2025年現在、気候変動は世界とアジアの政治・経済・社会のあり方を大きく揺さぶるテーマとなっています。都市に暮らす私たち一人一人が、この問題を「遠い話」ではなく、身近な生活やキャリアの選択とも結びついた課題として捉え直すことが求められています。
国際交渉の行方とともに、各国・各都市の具体的な動きを追いながら、「読みやすいのに考えさせられる」形で議論を共有していくことが、これからのニュースメディアと市民社会の重要な役割になっていきそうです。
Reference(s):
Mitigation and adaptation: Building urban resilience to climate risks
cgtn.com







