COP29バクー会議とUAE・中国の協力 気候行動の新時代へ
リード:現在、アゼルバイジャンの首都バクーで開催中のCOP29(国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議)では、UAE(アラブ首長国連邦)と中国が主導する国際協力が、気候行動の新しいステージを切り開こうとしています。本記事では、その背景とポイントを整理します。
COP28の「UAEコンセンサス」が示した転換点
昨年2024年にドバイで開かれたCOP28では、198の締約国が「UAEコンセンサス」と呼ばれる歴史的な合意に到達しました。これは、パリ協定の進捗を評価する初の「グローバル・ストックテイク(世界全体の棚卸し)」に対する、もっとも野心的な回答を示すことを目指したものです。
UAEコンセンサスを主導したCOP28議長国のUAEは、交渉テキストの枠を超えた「アクション・アジェンダ」を打ち出し、次の4つの柱に沿って議論と行動を加速させました。
- 公正で秩序あるエネルギー転換の加速
- 利用しやすく、負担可能で、アクセスしやすい気候資金への改革
- 人間、自然、生命、生計を中心に据えた対策
- あらゆるステークホルダーが参加する「包摂的な」気候行動
UAEのアブドラ・バララ外務次官補(エネルギー・持続可能性担当)は、こうした経験を土台に、「COP29は、世界全体の野心をさらに高め、より多くの声を届け、行動につなげるためのチャンスだ」と強調しています。
UAEと中国の協力がつくる「エネルギーオアシス」
UAEと中国は、再生可能エネルギー分野で密接なパートナーシップを築いてきました。その象徴が、UAEのアル・ダフラ太陽光発電プロジェクトです。
このプロジェクトでは、中国企業が重要な役割を果たし、広大な砂漠地帯に巨大な太陽光パネル群という「エネルギーのオアシス」を生み出しました。発電された電力はドバイの数十万世帯をまかない、年間最大240万トンの二酸化炭素削減につながるとされています。
さらに、ドバイ電力・水道局は2025年に、中国企業との協力を触媒(カタリスト)となるプロジェクトで強化する方針を示しています。世界最大級の単一サイト太陽光発電所の一つである「モハメッド・ビン・ラシッド・アル・マクトゥーム・ソーラーパーク」第4期も、2024年2月に商業運転段階へ入り、毎年160万トンのCO2削減が見込まれています。
グリーン水素・CCUS・インフラ:次の協力フロンティア
UAEと中国の協力は、太陽光だけにとどまりません。両国は、次のような分野での連携強化を視野に入れています。
- グリーン水素:再生可能エネルギー由来の電力で水素を生産し、重工業や輸送の脱炭素に活用する技術。
- カーボンキャプチャー(CCUS):排出された二酸化炭素を回収・貯留・利用することで、排出量を実質的に削減する取り組み。
- 持続可能なインフラ:省エネ型の都市開発や送電網の高度化など、長期的な気候レジリエンス(回復力)を高める投資。
バララ氏は、UAEと中国が新興国や「グローバル・サウス」に焦点を当て、低炭素・グリーン開発を後押ししている点を強調します。中国の「南南協力気候ファンド」は、気候の影響を受けやすい地域で数百件規模の適応・レジリエンスプロジェクトを支援しています。
一方、UAEはグローバル・クライメート・ファイナンシャル・センターの設立や、民間投資ビークル「アルテラ(Alterra)」を通じて、2030年までに2,500億ドル規模の機関投資を呼び込むことを目指しています。これらは、気候解決に向けた資金の大きな流れをつくり、投資家の資金をインパクト投資へと誘導する試みです。
損失と被害基金(FRLD)が本格稼働へ
COP28で大きな注目を集めたのが、「損失と被害への対応基金(Fund for Responding to Loss and Damage:FRLD)」の設立と資金拠出の合意でした。気候変動の影響の「最前線」にいる国や地域を支えることを目的としたこの基金は、COP28初日に運用と資金拠出の枠組みが合意され、立ち上げから48時間で8億5,000万ドル以上の拠出表明が集まりました。
現在開催中のCOP29では、このFRLDが「本格的な運用段階」に移行し、2025年に見込まれるプロジェクト資金への拠出を受け付け始めています。気候災害による損失が拡大するなか、脆弱な立場にある国々が復旧・復興に必要な資金へ公平にアクセスできるかどうかは、国際社会の信頼性を左右するテーマでもあります。
UAEが気候資金分野で培ってきた経験は、FRLDの透明性と実効性を高めるうえでも重要な役割を果たすとみられます。
COP29で私たちが注目すべきポイント
バクーでのCOP29は、UAEコンセンサスを次のステージへとつなげる場であると同時に、UAEと中国を含む多くの国が「協調によるリーダーシップ」をどう具体化するかが試される場でもあります。
とくに、次のような点が注目されます。
- エネルギー転換のスピードをさらに上げるための、具体的な目標と実行計画
- FRLDを含む気候資金メカニズムが、最も脆弱な国や地域にどれだけ届くか
- UAEと中国による技術・資金協力が、新興国のグリーン成長モデルとしてどのように位置づけられるか
- 市民社会、企業、若者など、多様なアクターがどこまで意思決定プロセスに参加できるか
気候危機は、どこか遠い国の出来事ではなく、私たち一人ひとりの生活や仕事、ビジネスに直結するテーマです。UAEと中国を軸とした国際協力がどのような「新しい標準(ニューノーマル)」をつくり出すのか。COP29の議論を追うことは、ポスト2025年の世界の経済と社会の行方を考えるうえでも、重要なヒントを与えてくれます。
Reference(s):
Global collaboration paves the way for a new era of climate action
cgtn.com








