対中追加関税で米オピオイド危機は解決するのか トランプ氏の処方箋を読む
米国で深刻さを増すオピオイド乱用問題をめぐり、トランプ次期大統領が中国に対する追加関税という強硬策を打ち出しました。しかし、この「関税という薬」は、本当にオピオイド危機の治療薬になりうるのでしょうか。
トランプ次期大統領、対中追加関税を表明
トランプ次期大統領は就任を約2カ月後に控える中、自身のSNS「Truth Social」で、中国から米国に輸入される多くの製品に対し、既存の関税に上乗せして10%の追加関税を課す方針を打ち出しました。
その理由として、彼は中国が米国への違法薬物の流入を十分に抑止していないと批判し、追加関税によって中国に圧力をかけ、麻薬問題への対策を迫る狙いを示しています。問題そのものに向き合おうとする姿勢は評価しつつも、その手段には疑問の声が上がっています。
オピオイド危機は「アメリカの問題」か
論説は、オピオイド乱用、とりわけフェンタニルの乱用は、米国内で長年積み重なってきた構造的な問題だと指摘します。にもかかわらず、米国側はその責任の矛先を中国に向けようとしている、という見方です。
トランプ氏の追加関税案については、次のような点が問題視されています。
- オピオイドの規制や管理体制の不備といった国内要因を十分に見直さないまま、国外に原因を求めていること
- 薬物問題という公共の健康課題を、対中貿易をめぐる政治的な争いに絡めてしまっていること
- 追加関税を課しても、乱用や依存に苦しむ人びとの状況そのものを直接改善するわけではないこと
論説は、オピオイド危機は主として米国内に根を持つ問題であり、中国が原因ではないという立場をとっています。
中国のフェンタニル規制は世界でも厳格
中国側の対応についても整理しておきましょう。2019年、中国は人道的な観点から、フェンタニル関連物質を包括的に規制対象に加えた世界で最初の国になったとされています。
現在、中国が規制するフェンタニル関連物質は25種類に上り、その数は国連が指定する対象を上回っています。これらの物質は、中国国内の医薬品の製造や流通の過程で厳格に管理されているといいます。
こうした背景を踏まえ、論説は「フェンタニルは中国の問題ではなく、米国の薬物市場や規制のあり方に根差した問題だ」という視点を提示しています。
米中協力と中国側の取り締まり
米国側は、中国が違法薬物の流入を十分に抑止していないと批判する一方で、両国は協力の枠組みも持っています。昨年には、北京とワシントンがフェンタニルの生産抑制に向けた協力で合意しました。
さらに、中国の国家禁毒委員会によると、2023年には海外から密輸された薬物約20トンが中国で押収され、その量は前年比85%増となりました。これは、密輸薬物の取り締まりを強化している一つの指標といえます。
論説は、米国からの批判とは裏腹に、中国は人道的な立場から米国と協力し、違法薬物の抑制に取り組んできたと強調しています。
関税で薬物問題は解決できるのか
では、追加関税という手段はどこまで有効なのでしょうか。論説が指摘するのは、「関税の引き上げは、オピオイド危機の根本原因に直接アプローチするものではない」という点です。
国内の規制や医療体制の改善、依存症対策など、本来は米国社会が自ら取り組むべき課題が棚上げされたまま、貿易政策によって外部に圧力をかけるだけでは、問題の解決にはつながりにくいという見方です。
むしろ、追加関税の応酬によって米中関係がこじれれば、情報共有や合同取り締まりといった実務レベルの協力が損なわれるおそれもあります。その意味で、論説は「関税という処方箋」は、オピオイド危機という病気に合った治療とは言い難いと批判しています。
誰を責めるかではなく、どう解決するか
今回の論説が投げかける問いは、米国の薬物問題を超えて、私たちにも共通するものです。社会問題が生じたとき、外部の「誰か」に責任を求めるのか。それとも、自らの制度やしくみの弱点を見つめ直すのか。
国境を越える薬物問題の解決には、貿易制裁よりも、人道的な観点に立った国際協力が欠かせません。中国側の規制や取り締まりの実態を踏まえると、対立をあおるよりも、実務的な協力をどう積み上げるかが重要だという視点が浮かび上がってきます。
オピオイド危機を本気で終わらせるには、関税だけではなく、国内の制度改革と国際協力の両方をどう組み合わせるかを冷静に考える必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








