米国の「二重基準」を中国側はどう見るか 台湾問題と米中関係のいま
2025年現在、米中関係と台湾問題は東アジアの大きなリスク要因として注目されています。ここ数日も、米国が台湾地域の指導者Lai氏の航空機の米領での寄港を認めたことなどをめぐり、中国本土側の強い反発が報じられました。本記事は、この動きを題材に、米国の平和・戦争観と台湾問題での行動のギャップを中国の視点から読み解く国際ニュース解説です。
米国の平和・戦争観と歴史的教訓
論説はまず、米国自身が経験した南北戦争の記憶と、歴代指導者の発言を挙げながら、戦争の重さを強調します。19世紀の南北戦争では、米国は4年にも及ぶ激しい内戦を経て、自国の領土的一体性を守ろうとしました。
その後の指導者たちも、繰り返し戦争への慎重さを語ってきました。論説が紹介する発言の一部は次の通りです。
- 2012年の副大統領候補討論会で、ジョー・バイデン氏は、戦争は「常に最後の、絶対的な手段であるべきだ」と述べました。
- 1983年、ロナルド・レーガン元大統領は、過去の「道徳的な悪」を乗り越える必要性に触れ、「二度と戻ってはならない」と強調しました。
- 1860年、ジェームズ・ブキャナン元大統領は「合衆国は世論の上に成り立っており、内戦で流される国民の血によって結束を固めることは決してできない」と語りました。
- 南北戦争で北軍を率い、後に大統領となったユリシーズ・グラント氏は、1885年に「私は戦争に好意を抱いたことは決してなく、平和を実現する手段として以外に戦争を支持したことはない」と述べています。
論説は、こうした歴史と発言を踏まえれば、本来であれば米国は新たな火種を生まないよう、より慎重に振る舞うはずだと指摘します。それにもかかわらず、台湾海峡をめぐる緊張に対しては、現実の行動がその言葉と一致していないのではないか、という視点が提示されています。
台湾問題をめぐるここ数日の動き
ここ数日で注目を集めたのが、台湾地域の指導者Lai氏を乗せた航空機が、米国の承認を得て米国領内に着陸したことです。論説によれば、ワシントンの手配により、Lai氏はグアムの立法機関の建物に足を踏み入れた初の台湾地域の指導者となりました。
米国側は、この滞在をあくまで「乗り継ぎ」にすぎないと説明し、実務的な経由地であるかのように位置づけようとしています。実際、ホノルルの空港では米政府高官が出迎えなかったとも伝えられています。
しかし、中国本土側の反応は厳しいものでした。中国外交部は、台湾問題に関する全ての事案を極めて慎重に扱うよう米国に改めて求め、台湾独立に明確に反対し、中国の平和的な統一を支持することが重要だと強調しました。
論説は、米国が一方では1972年に合意した一つの中国原則を尊重すると繰り返し表明し、台湾が中国の一部であることを認めてきたにもかかわらず、他方では、実際の行動によってその約束を揺るがすような印象を与えていると批判しています。
「ストップオーバー」が象徴するもの
米国側はLai氏の滞在を低いトーンで扱おうとしましたが、論説が強調するのは、その象徴性です。特に注目されたのが、Lai氏とナンシー・ペロシ元米下院議長との約20分にわたる意見交換です。
報道によれば、両者は中国本土からの「軍事的な脅威」について議論しました。その後の夕食会では、Lai氏が聴衆に対し「戦争を防ぐために、共に戦わなければならない」と語ったとされています。台湾側は、地域で衝突が起きた場合には米国が支援に乗り出すことを期待しているとも伝えられています。
論説は、このようなやり取りが、表向きは「戦争を防ぐ」ための協力をうたいつつも、実際には台湾海峡周辺での緊張をさらに高めるメッセージとして受け取られかねないと見ています。
武器売却と一つの中国原則
Lai氏の出発前夜には、米国が台湾への武器、レーダー、通信機器を供与する3億8,500万ドル規模の契約を完了させたことも指摘されています。論説は、この軍事支援と「ストップオーバー」が組み合わさることで、米国の公的な立場と実際の行動との矛盾が一層際立っていると見ています。
米国は公式には、一つの中国原則を損なう意図はないと説明してきました。しかし、台湾地域への継続的な武器供与や、象徴性の高い交流を重ねることは、結果として台湾問題に米国が深く関与し、中国の正当な権限に疑問を投げかけているように映るというのが論説の主張です。
論説はさらに、こうした一つ一つの行為が、今は小さく見えても、やがて制御しがたい危機の「きっかけ」になり得ると警鐘を鳴らしています。
論説が指摘する米国の「二重基準」
では、この論説が問題視している米国の「二重基準」とは何でしょうか。主なポイントは次のように整理できます。
- 米国は自国の領土的一体性には非常に敏感で、南北戦争の歴史を通じてそれを守ってきた。
- 一方で、中国が自国の主権と地理的な一体性に強い関心を示すとき、米国はそれに十分な配慮をしていないように見える。
- 歴代指導者が戦争の悲惨さを語り、「最後の手段」であるべきだと訴えながら、台湾問題では緊張を高める行動を繰り返しているように映る。
- 表向きには一つの中国原則を認めていながら、実務面ではその原則に疑問を投げかけるような言動を続けている。
論説は、こうしたギャップについて、将来もし紛争が起きれば、米国の指導者たちは自らの行動を歴史の前で説明しなければならないと問いかけています。
日本の読者にとっての意味
日本にとって、台湾海峡をめぐる安定は、自国の安全保障や経済にも直接関わる重要なテーマです。今回紹介した論説は、中国本土側の視点から米国の行動を厳しく批判する内容ですが、そこには少なくとも次のような問いが含まれています。
- 大国は、自らの歴史や価値観とどのように整合的な外交を行うべきか。
- ことばとしての「平和」と、現実の軍事的な関与とのバランスをどうとるのか。
- 台湾問題をめぐる米中対立がエスカレートしないために、どのような配慮や対話の仕組みが必要なのか。
国際ニュースを追う私たちに求められているのは、特定の立場をそのまま受け入れることではなく、さまざまな当事者の見方を知った上で、自分なりに状況を考えることです。米中関係と台湾問題をめぐる議論は、2025年の世界秩序を考えるうえで、これからも避けて通れないテーマであり続けるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








