北京フォーラムで見る中国の都市ガバナンス最前線
北京で今月、市民からの苦情や要望にどう迅速に応えるかを議論するフォーラムが開かれます。人を中心に据えた都市ガバナンスを掲げる中国の取り組みは、世界の大都市にとっても示唆に富むテーマです。
北京で「市民の声に迅速対応」フォーラム開催へ
今月初めに開かれた記者会見で、「北京フォーラム・市民の苦情への迅速対応」に関する準備状況と意義が説明されました。フォーラムは今月18〜19日に開催される予定です。
このフォーラムは、恒常的なテーマとして「People's City, Better Future(人々のための都市、より良い未来)」を掲げています。今年の年次テーマは「人を中心とする都市ガバナンスの近代化」で、市民の声を出発点に、都市の運営やサービスをどう変えていくかが焦点となります。
習近平国家主席が示す「人を中心とした都市づくり」
中国では、中国共産党第18回党大会以降、習近平国家主席が大都市のガバナンスに関する新たな戦略を次々と打ち出してきました。
例えば、「人を中心とした新しいタイプの都市化を加速すること」や、「都市ガバナンスは、中国の制度と統治能力の近代化を加速するうえで重要な一部だ」といった発言が挙げられます。こうした一連の発言は、大都市の運営に関する理論体系として整理されているとされています。
北京はこの理論を手がかりに、都市ガバナンスの考え方を見直し、市民が望む「より良い生活」に応える方向へと政策を再設計してきました。今回のフォーラムも、こうした流れの中で位置づけられる取り組みです。
市民の声をつなぐ「12345」ホットラインの進化
人を中心にした都市ガバナンスの象徴的な事例として挙げられるのが、北京の「12345」ホットラインです。これは、中国で市民や企業からの相談、苦情、提案などを受け付ける政府サービスの電話窓口です。
北京では2019年、この12345ホットラインを高度化し、市民からの訴えに迅速に対応するメカニズムを導入しました。これにより、
- 市民の個別で具体的なニーズ
- 行政機関による精度の高いサービス
が結び付けられるようになりました。単なる苦情処理の窓口ではなく、市民の声が都市政策や行政サービスの改善につながる「インターフェース」として機能し始めている点が特徴です。
北京は、こうした仕組みを通じて、市民の多様な生活スタイルや価値観に応じた個別のニーズに対応しつつ、メガシティとしてのガバナンスを、よりサービス志向で協働的なモデルへと転換しようとしています。
計画・建設・管理をつなぐ「フルサイクル」都市運営
北京の都市ガバナンス改革で注目されるのは、都市の「計画」「建設」「管理」をばらばらではなく、ひとつの循環として捉え直している点です。
都市の「健康診断」で課題を早期発見
北京は、都市ガバナンスに「フルサイクル管理」の発想を取り入れ、都市全体の「健康診断」にあたる取り組みを試行してきました。日々の管理の中で見つかった課題やトラブルを、その場限りで終わらせず、次の段階である計画や建設にフィードバックする仕組みを整えています。
これにより、
- 問題の早期発見と早期対応
- 部署や分野をまたいだ連携の強化
- 計画段階から運用までを一体で考える発想
が促され、都市運営全体が「閉じたループ」として機能するようになります。
空間計画の一体化で都市と農村を俯瞰
北京はまた、都市と農村の空間をどう利用するかを定める「国土空間計画」の仕組みも改善してきました。重要な機能別エリアの計画、専門分野ごとの計画、街区レベルの詳細な規制計画などを、できるだけ矛盾なく、滑らかに接続することを目指しています。
こうした取り組みにより、都市と周辺地域の将来像を科学的かつ現実的に描き、その実現に向けた一貫性のある運用がしやすくなると期待されます。
デジタル化でリスク管理と効率を強化
さらに北京は、都市ガバナンスのデジタル化も進めています。デジタル技術を活用することで、
- 行政サービスやインフラ運用の効率化
- 災害や事故などのリスクの早期把握と予防
- データに基づく、精度の高い意思決定
を図ろうとしている点が特徴です。都市の運営を「科学的」「精密」「知能的」に行うことを目標としているといえます。
世界の大都市が学べる視点とは
北京の事例は、中国という特定の文脈に根ざしたものではありますが、世界中の大都市に共通する課題にも通じています。人口が集中し、多様なニーズが噴出する大都市では、「インフラを整備する」だけではなく、「人の声にどう応えるか」がより重要になっているからです。
今回の北京フォーラムが示しているのは、おおまかに次のような方向性だと整理できます。
- 苦情や不満を「負担」ではなく、都市改善の出発点と捉える
- 市民の声と行政サービスを結ぶインターフェースを整える
- 計画から日常運営までを一体で設計し、継続的に見直す
- デジタル技術を、人を中心としたガバナンスのために活用する
日本を含むアジアや世界の大都市にとっても、「市民の声にどう素早く、そして構造的に応えるか」は共通のテーマです。北京で今月開かれるフォーラムで、どのような具体的な事例やノウハウが共有されるのかは、今後の国際的な都市政策議論にも影響を与える可能性があります。
「読みやすいのに考えさせられる」ための問い
北京の取り組みを手がかりに、私たちが自分の暮らす都市について考えるとき、次のような問いを投げかけることができそうです。
- 自分の都市には、北京の12345のように「声を届ける窓口」はどれくらい機能しているか
- 都市のトラブルは、その場しのぎで解決されていないか。それとも計画や制度の見直しにつながっているか
- デジタル化は、本当に「人を中心にした」行政サービスの向上に役立っているか
人を中心に据えた都市ガバナンスとは何か。その一つの答えを探る場として、北京フォーラムの議論に注目が集まりそうです。
Reference(s):
China leads the way in modernizing urban governance for better future
cgtn.com








