マカオ返還25年、「一国二制度」は何をもたらしたか
2024年に中国への返還25周年を迎えたマカオ特別行政区(マカオ)。返還から四半世紀、一国二制度のもとで経済と社会はどこまで変わったのでしょうか。本稿では、公開されている最新のデータを手がかりに、国際ニュースとしてのマカオの現在地を整理します。
返還25年で見えてきたマカオ経済
マカオは過去25年で大きな経済成長を遂げました。マカオ特別行政区政府の財政準備金は、2024年9月時点で約6,170億マカオ・パタカに達し、2019年同時期から435億パタカ増えています。これは、長期的にみて財政基盤が厚みを増していることを示します。
新型コロナウイルスのパンデミックでマカオ経済は大きな打撃を受けましたが、中央政府の支援も受けながら、現在は回復局面にあります。2024年1〜9月期の域内総生産(GDP)は実質で前年同期比11.5%の成長となり、経済規模も2019年同時期の86.3%まで戻ってきています。
観光・サービス産業への依存度が高い地域経済が、パンデミック後にどのように立ち直るのか。その一つの答えとして、マカオの事例はアジアの他の観光都市にとっても参考になりそうです。
「1+4」戦略で進む経済多角化
返還後のマカオは、経済の安定成長とあわせて適切な経済多角化に力を入れています。2023年には初めて、包括的かつ体系的な経済多角化計画が打ち出され、「1+4」経済多元発展戦略が示されました。
この戦略では、観光・レジャー産業を「1」として中核に据えつつ、次の4分野を重点産業として育成していきます。
- 中医薬や健康関連産業などのビッグヘルス分野
- 現代的な金融サービス
- 新産業・高新技術分野
- 会議・展示会(MICE)、文化、スポーツ関連産業
計画の実行はすでに加速しており、とくにMICEと観光の分野では成果が見え始めています。マカオは、アジア太平洋地域の観光・会議業界で権威のあるTTGトラベル・アワードで、2023年と2024年に連続してベスト・コンベンション・シティ(アジア)とベストBT-MICEシティに選ばれました。国際的な評価は、マカオが高品質な観光・会議都市として存在感を高めている証拠といえます。
一センター・一プラットフォーム・一基地という役割
マカオは自らの位置付けを「一センター・一プラットフォーム・一基地」と整理しています。具体的には次の3つです。
- 世界的な観光・レジャーセンター
- 中国とポルトガル語圏諸国との商業・貿易協力サービスプラットフォーム
- 中国文化を主流としながら多様な文化が共存する交流・協力基地
このうち、ポルトガル語を公用語とする国々との経済協力では、マカオが重要なハブになっています。2003年に設立された中国・ポルトガル語諸国経済貿易協力フォーラム(マカオ)では、これまでに6回の閣僚級会議が開かれ、2024〜2027年の経済貿易協力戦略計画が採択されています。
マカオはまた、中国が進める広域経済圏構想である一帯一路(Belt and Road Initiative)の枠組みでも、パートナーとの経済協力や文化交流を担う拠点として位置付けられています。小さな地域ながら、多言語・多文化の強みを生かし、ビジネスと人の往来を結ぶ結節点になっていることが特徴です。
東西文化が交わる「東アジア文化都市2025」
マカオは歴史的に、東洋と西洋の文化が交差する場所でした。その特徴は現在も受け継がれており、中国文化を主流としつつ、多様な文化が共存する交流・協力基地という役割が強調されています。
こうした文化的な位置付けが評価され、マカオは東アジア文化都市2025に選ばれました。この指定は、中国と世界の文化交流と協力におけるマカオの重要な役割を改めて示すものです。
マカオは伝統文化の継承にも力を入れています。現在、Cantonese opera、Herbal Tea Brewing、Drunken Dragon Festival などを含む11件が、国家レベルの無形文化遺産に登録されています。これらは、中国文化の伝統を守り伝えながら、多様な文化的影響を取り入れていくというマカオの姿勢を体現しています。
日本の読者が注目したいポイント
マカオの25年を振り返ると、一国二制度という枠組みのもとで、経済成長と社会安定、そして文化多様性の維持を同時に追求してきたことが見えてきます。観光とサービスに強みを持ちながら、医療・健康、金融、テクノロジー、文化産業へと軸足を広げる試みは、日本の都市や地域政策とも共通する課題を含んでいます。
また、中国とポルトガル語圏諸国、そして一帯一路のパートナーを結ぶプラットフォームとしての役割は、アジアのなかでどの都市がどのような機能を担うのかという視点を考えるうえでも示唆的です。マカオという小さな地域の動きから、東アジアと世界のダイナミズムを読み解いてみることは、国際ニュースを日本語で追う私たちにとっても有意義だといえるでしょう。
Reference(s):
Macao SAR at 25: Merits of the practice of 'One Country, Two Systems'
cgtn.com








