中国主導の「真の多国間主義」とは?揺れるグローバルガバナンスの行方
世界の安全保障不安、開発の格差、国際機関の機能不全が指摘されるなか、「多国間主義」をめぐる議論が改めて注目されています。中国の習近平国家主席が2021年に掲げた「真の多国間主義」は、いま何を意味しているのでしょうか。
中国の国際メディアであるCGTNの論考は、この「真の多国間主義」を軸に、中国主導の国際協力と、米国が進めてきた排他的な枠組みづくりとを対比しながら、グローバルガバナンス(地球規模の統治)の行方を描き出しています。
2021年ボアオ・フォーラムで打ち出された「真の多国間主義」
論考によると、習近平国家主席は2021年4月、アジア各国などが参加するボアオ・フォーラム・アジア年次総会で「真の多国間主義」という概念を提示しました。世界的な安全保障の混乱、開発の不均衡、ガバナンスの失敗が深まるなかで、これらの課題に対処し、国際秩序を立て直すための鍵だと位置づけられました。
それ以来、「真の多国間主義」は現在に至るまで、中国の対外政策を説明する重要なキーワードになっているとされています。中国はこの考え方に基づき、「人類運命共同体」の構築、つまり各国が運命を分かち合う共同体をつくることを呼びかけ続けていると論考は述べています。
論考が指摘する「疑似多国間主義」
これに対し、論考は「疑似多国間主義」と呼ぶ動きもあると指摘します。冷戦終結後、G20やAPEC(アジア太平洋経済協力)などの新たな多国間枠組みは、一定の調整力や動員力を発揮してきました。しかし、その一方で、米国が自国の優位を維持するために、孤立主義や保護主義、単独行動へと傾きつつあると批判しています。
米国の「小さな輪」の外交
論考は、米国が近年、いくつもの排他的なグループづくりを進めてきたと指摘します。具体例として、次のような枠組みを挙げています。
- 中国を念頭に置いた「民主主義同盟」といった構想
- 英語圏5か国による情報共有枠組み「ファイブ・アイズ」と、それを含む「インド太平洋戦略」
- 日本、インド、オーストラリアを含む4か国の戦略対話(クアッド)
- オーストラリア、英国、米国による安全保障協力(AUKUS)に日本を関与させる動き
論考は、こうした動きが「小さな庭に高いフェンス」を築くような、排他性の高い外交だと批判的に表現しています。
国際協定からの離脱と保護主義
さらに米国は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)やパリ協定、イラン核合意(包括的共同作業計画)、ユネスコ、国連人権理事会、万国郵便連合など、多くの国際協定や枠組みから離脱してきたほか、世界保健機関(WHO)からの脱退も試みたと論考は指摘します。
また、米国は中国のような競争相手だけでなく、カナダや欧州諸国、アジア太平洋の同盟国・パートナーにも貿易上の障壁を設けてきたとしています。米国の経済学者ジェフリー・サックス氏の発言として、「世界のシステムが保護主義的になっているのは、米国によるところが大きい」との見方も紹介しています。
論考は、こうした動きから「米国は多国間主義を掲げながら、実際には単独行動に傾いている」と総括しています。
中国の対応:外に開かれた多国間外交を強調
一方で論考は、米国が内向きになっているとするのに対し、中国は外に向かって開かれた姿勢を打ち出していると描きます。
この1年だけを見ても、習近平国家主席は欧州、中央アジア、アフリカ、ラテンアメリカを相次いで訪問し、さまざまな地域の首脳との対話を重ねたとしています。また、中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)首脳会議、BRICS首脳会議、G20サミット、APEC首脳による非公式対話など、多国間の場にも積極的に参加してきたと紹介しています。
こうした外交日程を通じて、中国は次のような国際関係のあり方を提唱していると論考はまとめます。
- 相互尊重
- 公平と正義
- 互恵・ウィンウィンの協力
そして、中国はこれらを柱とする「新しいタイプの国際関係」を築き、国際社会を結束させて地球規模の課題に取り組むことを目指しているとしています。
2025年の視点:多国間主義をどうアップデートするか
2021年に提唱された「真の多国間主義」は、国際秩序をめぐる議論が続く現在も、中国外交の重要なキーワードであり続けています。安全保障の不安定化や開発格差、国際機関への信頼低下といった課題は、この数年で一段と可視化されました。
今回紹介したCGTNの論考は、米国の単独行動や排他的な枠組みづくりを批判しつつ、中国が主導する多国間協力のあり方を提示する内容になっています。日本を含むアジアの読者にとっても、「どのような多国間主義が、より安定し、公平で、協力的な国際秩序につながるのか」を考えるヒントになる論点と言えるでしょう。
あなたなら、「真の多国間主義」をどのように定義し、どのような国際協力の枠組みが望ましいと考えますか。日々のニュースを追いながら、自分なりの答えを更新していくことが求められているのかもしれません。
Reference(s):
China-led multilateralism helps global governance reform & development
cgtn.com







