中国経済の高品質発展、2024年までの包括的な成果
中国経済の「高品質発展」は、2020〜2025年の第14次五カ年計画の中核テーマです。計画の山場となった2024年までに、産業構造の高度化や技術革新、知的財産戦略などでどこまで成果が積み上がったのかを整理します。
2024年、計画達成に向けた「山場」の一年
第14次五カ年計画(2020〜2025年)は、単に成長率だけでなく質と持続可能性を重視する方針を掲げています。2024年はその目標達成に向けた重要な年と位置づけられ、中国経済は国内外の不確実性の中でも、全体として安定と着実な前進を維持し、強い回復力と活力を示しました。
サービス産業と先端製造業が成長エンジンに
中国の高品質な発展を語るうえで欠かせないのが、経済構造の転換です。2023年には、第3次産業(サービス産業)が国内総生産(GDP)に占める比率が56.3%に達し、経済成長の主要な牽引役となりました。
同時に、産業の高度化も進みました。高技術製造業や戦略的新興産業の成長は、従来型の製造業を大きく上回り、次のような特徴が見られます。
- 研究開発負荷の高い分野への資本と人材のシフト
- デジタル化・自動化を軸とした生産性の向上
- グリーン技術や新エネルギーなど新産業の台頭
これらは、「現代的な産業システム」の構築を目指す取り組みの一環と位置付けられます。
内陸部で進む地域間バランスの改善
地域政策の面では、「協調的な地域発展」戦略が成果を上げました。中部・西部地域では固定資産投資の伸びが速く、従来、沿海地域に偏りがちだった投資と産業の集積が、よりバランスの取れた姿へと変わりつつあります。
技術革新を核とする成長戦略
中国が掲げる高品質発展の中心には「イノベーション主導」があります。2024年7月の中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議と、同年12月の中央経済工作会議では、技術革新の重要性が改めて強調されました。戦略産業の発展を支えるため、政策やガバナンス(統治)制度の改善が呼びかけられています。
象徴的なプロジェクトが示す技術力
こうした方針のもと、実際のプロジェクトでも成果が相次ぎました。象徴的な例として、次のような事例が挙げられます。
- 2024年1月、国産大型クルーズ船「アドラ・マジックシティ」が商業運航を開始し、造船産業の重要なマイルストーンとなった。
- 電動航空機AG60Eの初飛行が成功し、新しい航空技術の可能性を示した。
- 月の裏側からサンプルを持ち帰った探月機「嫦娥6号」ミッションが成功し、世界初の成果として中国の宇宙科学技術力を印象づけた。
これらの取り組みは、中国の科学技術力を高めるだけでなく、宇宙探査や次世代交通など、世界全体の科学技術の進展にも寄与するものと位置づけられます。
企業レベルで広がる研究開発投資
技術革新の裏側には、企業の研究開発(R&D)投資の拡大があります。2024年8月30日時点の集計によると、A株(中国本土の株式市場)に上場する4,915社の2024年上期のR&D投資額は7,125億元(約976億ドル)となり、前年同期比3%増加しました。
売上高に対するR&D比率(R&D投資強度)の面では、以下の5つの産業で5%を超える水準に達しています。
- コンピューター関連
- 国防・軍需産業
- 電子産業
- 機械・設備
- 医薬・バイオ
R&Dへの継続的な投資は、長期的な競争力と技術自立を支える基盤といえます。
知的財産の強化と2035年ビジョン
研究開発の成果を経済価値につなげるには、知的財産の保護と活用が欠かせません。中国国家知識産権局が公表した「2024年知的財産強国建設発展報告」によると、2035年までに知的財産の総合競争力を世界トップクラスの水準に引き上げ、より完備した知的財産制度の構築を目指すとされています。
こうした戦略のもと、中国は世界知的所有権機関(WIPO)の「グローバル・イノベーション・インデックス(GII)」においても存在感を高めています。2024年のランキングでは、中国は前年より1つ順位を上げて11位となりました。
さらに、中国には世界の科学技術クラスター上位100のうち26クラスターが存在し、この数は世界最多です。研究機関や企業が集中するこれらのクラスターは、イノベーションを生み出すエコシステムとして機能しているとみられます。
日本からどう捉えるか
第14次五カ年計画は2025年に最終年を迎えます。2024年までに積み上がった高品質発展の成果は、今後の中国経済の方向性を占ううえで重要な手がかりとなります。
日本を含む周辺国にとっても、中国の経済構造転換と技術革新は、次のような意味を持ち得ます。
- サプライチェーンの高度化や多様化に向けた新たな協力の余地
- 環境・エネルギー、デジタル技術などの分野での共同研究・共同開発の可能性
- 知的財産保護の強化を前提としたビジネス環境の変化
中国経済の高品質発展は、単に一国の成長にとどまらず、アジアと世界全体の産業・技術の地図を静かに書き換えつつあります。その動きを冷静にフォローし、自国の戦略やキャリア、ビジネスの選択肢を見直していくことが、日本の読者にとっても重要になっていきそうです。
Reference(s):
Comprehensive achievements of China's high-quality development
cgtn.com








