ダボス会議で浮き彫りに 保護主義と米中デカップリング懸念
今週、スイス・ダボスで開幕した世界経済フォーラム(WEF)年次総会では、米トランプ新政権の保護主義や米中デカップリング(経済の切り離し)への懸念が、世界貿易と国際秩序の行方を左右するテーマとして浮上しています。
ダボス会議で浮かぶ「保護主義」への警戒
今回の世界経済フォーラム年次総会では、世界経済の減速リスク、地政学的なショック、エネルギー転換など幅広い国際課題が議題になっています。その中で、とくに注目されているのが「保護主義」と米中関係です。
会議が始まった同じ日に、ドナルド・トランプ氏が第47代アメリカ大統領に就任しました。世界最大の経済大国であるアメリカの新しい指導部が、どのように国際ルールや同盟関係を組み替え、世界第2の経済大国である中国との関係を再定義していくのかが、ダボスの主要な論点になっています。
トランプ新政権と米中デカップリング懸念
就任前から、ワシントンでは中国に対する保護主義的な姿勢が強まってきました。関税引き上げの示唆に加え、動画共有アプリ「TikTok」への規制措置や、中国の電気自動車に対する貿易障壁などが、その最新の例として挙げられています。
こうした動きは、米中経済を意図的に切り離す「デカップリング」につながるのではないかという懸念を呼んでいます。しかし、ダボスに集まった国際社会の多くは、それを望んでいません。
「世界は米中の分断を望んでいない」
中東を拠点とする英字紙「ザ・ナショナル」の編集長であるミナ・アル=オライビ氏は、ダボスでのインタビューで「世界の多くは、アメリカと中国の間でデカップリングが起きないことを望んでいる」と語りました。
同氏は、中国が「台頭しつつあるだけでなく、すでに重要な存在」になっていると指摘します。そのうえで、歴史を振り返れば、既存の覇権国が新興勢力の台頭を抑えようとする傾向があるとし、アメリカにはとくに中国の技術的な進歩を抑制しようとする「組織的な試み」が見られると分析しました。
関税は本当に「自国を守る」のか
トランプ大統領は就任直後こそ、中国に対する「初日からの関税」には踏み切りませんでしたが、いわゆる「不公正な」貿易慣行に対処するよう政権に指示しています。とはいえ、世界経済フォーラムの参加者の多くは、関税を中心とした保護主義は逆効果だと見ています。
経済誌「エコノミスト」の外国編集長であるパトリック・フーリス氏は、関税について「中国にとってまったく助けにならないどころか、状況をさらに悪化させる」と指摘し、中国には自国経済を再加速させる力があると述べました。
米誌「タイム」の編集長サム・ジェイコブス氏も、「アメリカ人の大多数は、関税がモノの価格を引き上げることを理解している」と語り、関税の負担が企業だけでなく消費者にも広く及ぶ現実を示唆しました。
関税は、輸入品に追加で課される税金です。企業はそのコストを価格に転嫁しやすく、結果として消費者の負担増につながります。また、相手国が報復関税で応じれば、双方の市場が狭まり、サプライチェーン(供給網)が不安定になる可能性もあります。ダボスに集う専門家たちは、こうした悪循環を警戒していると言えます。
資本主義とグローバル化への試練
アル=オライビ氏が強調したのは、保護主義が「資本主義の中心的な価値」と矛盾する点です。アメリカはこれまで、市場経済と自由貿易の代表的な支持者と見なされてきました。しかし、国境を閉ざす方向に進めば、資本やモノ、人材の自由な移動を前提とする資本主義の土台が揺らぎかねません。
同氏は「資本主義と市場は開かれた国境を必要としている」と述べ、保護主義の高まりは米中関係だけでなく、「世界経済がどこへ向かうのか」というより大きな問題につながると指摘しました。
エネルギー転換、デジタル技術、気候変動への対応など、多くの課題は一国だけでは解決できません。経済ブロックごとに壁が高くなれば、技術共有や投資が滞り、世界全体の成長力が削がれるリスクがあります。
日本とアジアにとっての意味
日本やアジアの企業・投資家にとっても、米中デカップリングと保護主義の動きは他人事ではありません。サプライチェーンが分断されれば、製造拠点や調達先の見直しを迫られ、コストやリスク管理の在り方が変わってきます。
同時に、世界が分断に向かうのか、それとも協調のルールを模索できるのかは、日本の外交・経済戦略にも直結します。ダボスで示された懸念や議論は、今後の日本の政策判断を考えるうえでの重要な材料になるでしょう。
これから何を注視すべきか
ダボス会議での議論を踏まえると、今後とくに注目したいポイントは次のように整理できます。
- 米トランプ政権が実際にどのような関税や貿易措置を打ち出すのか
- アメリカと中国の間でデカップリングを回避する対話や枠組みが構築されるのか
- 保護主義の高まりに対し、他の国や国際機関がどのようなルールづくりを提案するのか
- 企業がサプライチェーンの再設計や価格転嫁をどのように進めるのか
保護主義か、開かれた市場か。米中の動きに世界が影響を受ける時代だからこそ、ニュースを追う私たち一人ひとりも、その帰結が自分たちの暮らしや仕事にどう跳ね返ってくるのかを意識しておきたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








