トランプ第47代大統領が再登場 アメリカ第一で揺れる国際秩序
アメリカでドナルド・トランプ氏が第47代大統領として再び就任し、就任演説と同時にパリ協定からの離脱や世界保健機関(WHO)脱退に動き出したことが伝えられています。自由貿易と国際協調を支えてきた枠組みに、あらためて大きな揺さぶりがかかろうとしています。
異例ずくめの「トランプ47」就任
トランプ氏はこれまで第45代大統領を務めた後、いったん選挙で敗れたものの、今回第47代大統領としてホワイトハウスに戻ってきました。再選に失敗した現職が、その後の選挙で再び大統領の座を射止めるのは、130年以上なかった異例の展開とされています。
就任式もまた異例でした。約40年にわたり歴代大統領は連邦議会議事堂(キャピトル)の屋外階段で就任宣誓を行ってきましたが、トランプ氏は建物内部のロタンダ(円形広間)で宣誓しました。安全や演出などさまざまな思惑が取り沙汰されています。
就任演説のトーンは、かつての「アメリカの惨状(American carnage)」と表現した第45代就任演説と比べると、今回は「新たな黄金時代(Golden Age)」を約束する、やや落ち着いたものになったと受け止められています。しかし、その底流にあるのは依然として強いナショナリズムと拡張主義的な発想です。
演説やこれまでの発言の中でトランプ氏は、メキシコ湾を「アメリカ湾」と改名する構想や、パナマ運河を取り戻すといった主張に触れてきました。グリーンランドの購入やカナダ併合にまで言及することもあり、その真剣度はともかくとして、「アメリカの影響力を拡大する」というメッセージは一貫しています。
再強化される「アメリカ第一」経済
今回の就任演説で特に目立ったのは、「アメリカ第一(America First)」の経済政策を一段と押し進める姿勢です。トランプ氏は「これからは自国民に課税して他国を豊かにするのではなく、外国に関税や税を課して自国民を豊かにする」と強調しました。
これは、自由貿易と国際協調を重んじてきた従来のアメリカと比べると明確な方向転換です。関税をてこに相手国との交渉を有利に進めようとする、取引的な外交スタイルが再び前面に出てくる可能性があります。
エネルギー政策でも、トランプ氏は地中の「液体の黄金」と呼ぶ石油・ガス資源を最大限に活用する姿勢を示し、「グリーン・ニュー・ディール(環境重視の経済政策)」の終わりと、電気自動車義務付けの撤回を打ち出しました。製造業や自動車産業の労働者に訴えかけるメッセージであり、国内産業の復活を優先する方針が鮮明になっています。
就任直後にパリ協定離脱・WHO脱退へ
こうした姿勢を象徴するように、記事執筆中には、トランプ氏が就任早々にパリ協定からの離脱に向けた大統領令に署名したとの速報が流れました。トランプ氏は、温室効果ガス削減の国際枠組みであるパリ協定が「アメリカに不公平な負担を強いている」と繰り返し主張してきました。
さらに、感染症対策などを担う世界保健機関(WHO)からの脱退も決定したとされています。世界的な健康危機が繰り返される中で、最大の拠出国の一つであるアメリカが枠組みから離れることは、国際保健体制に大きな空白を生む可能性があります。
気候変動とグローバルヘルスという二つの分野で、アメリカが国際協調から一歩引くことで、他の国や地域がどこまで役割を肩代わりできるのかが今後の焦点になります。中国や欧州連合(EU)、日本などが、自らの責任と利益をどう位置付け直すのかも問われます。
自由貿易と国際秩序への揺さぶり
ここ40年あまり、アメリカの歴代大統領は「自由貿易」「国際協調」「リベラルな国際秩序」を口にしながら、同盟国や国際機関との連携を重視してきました。トランプ氏のアプローチは、その前提を根本から問い直すものです。
「外国に関税を課して自国民を豊かにする」という発想は、短期的には国内産業を守る効果がある一方で、報復関税や供給網(サプライチェーン)の分断を招くリスクもはらんでいます。輸出に依存するアジアの経済にとっても、不確実性の高まりは避けられません。
国際機関に対しても、アメリカの拠出金に見合う「見返り」があるのかどうかを厳しく問う姿勢が強まるとみられます。パリ協定やWHOに続き、他の枠組みに対しても負担の見直しや離脱論が浮上する可能性があります。
日本とアジアの読者が押さえたい3つのポイント
日本やアジアの読者にとって、今回の「トランプ47」政権発足で特に意識しておきたい論点を3つに整理します。
- 1. 気候変動・エネルギーの新バランス
アメリカがパリ協定から距離を置くことで、気候変動対策の主導権が他の国や地域に移る可能性があります。再生可能エネルギー投資や炭素価格の動きは、日本企業の長期戦略にも直結します。 - 2. 関税とサプライチェーンの再編
アメリカ市場向け輸出が重要な企業にとって、関税政策は収益を左右する重大要因です。今後発表される具体的な関税リストや産業支援策を慎重に見極める必要があります。 - 3. 国際機関の役割の再定義
WHOや気候枠組みの弱体化は、感染症対策や環境協力をより地域レベルの枠組みに移行させる可能性があります。アジア内での連携強化や、新たな多国間枠組み作りが議題に上ってくるかもしれません。
「衝撃」にどう備えるか
今回の就任演説と、パリ協定離脱・WHO脱退に向けた動きは、トランプ政権第2幕の方向性を象徴的に示すものです。スローガンは変わっても、「アメリカ第一」を軸にした強硬な交渉スタイルと国内優先の政策は、今後も続くとみてよさそうです。
もちろん、実際の政策は議会との駆け引きや世論、同盟国との関係によって修正されていきます。だからこそ、私たちに必要なのは、感情的な賛否ではなく、どの分野でどのような影響が出るのかを冷静に見極める視点です。
まさに「Brace for impact(衝撃に備えよ)」という言葉がふさわしい今、国際ニュースを追う一人ひとりが、自分の仕事や生活、日本社会にとって何が重要なのかを考え直すタイミングに来ているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com







