トランプ第2期と対中政策:関税強化とTikTokで揺れる米中関係
2025年1月20日にドナルド・トランプ米大統領の第2期政権が発足してから、まもなく1年。就任初日から相次いだ大統領令や、対中関税、TikTokをめぐる判断は、今も世界の注目を集めています。本稿では、その主要な動きを整理し、これからの米中関係を考えます。
就任初日からフルスロットル:国境・環境・働き方にメス
トランプ大統領は第2期の初日から、選挙中に掲げてきた公約を反映する形で多数の大統領令に署名しました。内容は国内政策が中心で、多岐にわたります。
- 国境を閉鎖する方針を打ち出し、入国管理の大幅な強化を指示
- 犯罪歴のある法的地位のない移民の送還を進めるよう命じる
- アラスカなどの野生生物保護区での石油採掘を妨げてきた環境規制の撤廃を指示
- 長期化していた連邦政府職員の在宅勤務をやめ、原則オフィス勤務に戻すよう求める
いずれも「強いアメリカ」を打ち出す象徴的なテーマであり、国内の支持層に向けたメッセージ性が強い一方で、環境や人権、働き方をめぐる議論も呼び起こしています。
外交方針は依然ベールの中:パナマ運河とメキシコ湾の名称変更
一方、就任演説では、外交・安全保障についての具体的なビジョンは多く語られませんでした。その中で目を引いたのが、パナマ運河とメキシコ湾に関する発言です。
- パナマからパナマ運河を取り戻す意向を示したこと
- メキシコ湾の名称を「アメリカ湾」に改称する構想に言及したこと
いずれも実現方法や時期は示されておらず、現段階では象徴的なメッセージにとどまっています。ただ、こうした発言は、中南米諸国との関係や国際世論にどのような影響を与えるのか、慎重に見ていく必要があります。
世界が注目する対中関税:最大60%も視野
国際社会、とりわけ経済界が最も注目しているのは、トランプ政権の関税政策です。大統領は、多くの国々、とくに中国との貿易をめぐり、非常に高い関税を課す可能性に言及してきました。
外部歳入庁を通じた関税の一元管理構想
就任演説では、関税が第2期政権の政策の柱になると明言し、その運用を監督する新たな組織として、External Revenue Service(外部歳入庁)を設置する計画を打ち出しました。ただし、具体的な税率や対象品目などの詳細はまだ明らかにされていません。
選挙戦の過程では、中国を含む諸外国に対し、10%から最大60%に及ぶ関税を課す可能性に触れたこともあり、どの程度まで踏み込むのかが大きな焦点となっています。
それでも強調された中国との協力
一方で、トランプ大統領は就任前、中国の習近平国家主席と電話会談を行い、米中両国が世界で最も重要な国であることを踏まえ、世界平和と長期的な安定のために幅広く協力すべきだと強調しました。
強い関税政策を掲げつつも、協力の必要性を認める姿勢は、競争と協調をどうバランスさせるのかという難しい課題を映し出しています。関税の具体像次第では、世界貿易や金融市場にも大きな影響が及ぶ可能性があります。
TikTokをめぐる判断:デジタル世代を意識した一手
トランプ政権の対中政策を語る上で、SNSアプリのTikTokをめぐる動きも見逃せません。中国の企業バイトダンスが運営するTikTokは、米国で1億7,000万人以上の利用者を抱えており、特に若い世代の重要な情報・娯楽インフラとなっています。
米議会では、TikTokを米企業に売却しない限り事実上禁止する法案が進められていましたが、バイトダンス側は売却条件を受け入れない姿勢を示していました。こうした中で、トランプ大統領は、TikTokを米政府との合弁事業の形に再編するという迂回案を提示し、全面的な禁止を回避する方向性を打ち出しました。
議会の反発と対中懸念の中で
この動きは、超党派で中国をめぐる懸念が強まる米議会の空気に逆らうものでした。トランプ大統領の所属政党内にも批判的な声がありましたが、結果として米国の多くのTikTok利用者にとっては、アプリが存続する可能性が開かれた形です。
中国側の観測筋の間では、こうした判断が単に国内の若い支持層に配慮したものなのか、それともデジタル分野での米中協力の余地を残そうとするシグナルなのかについて、さまざまな見方が出ています。
これからの米中関係を読む3つの視点
トランプ第2期の動きはまだ始まったばかりですが、今後の米中関係、とりわけ国際経済を考えるうえで、次の3点が重要なチェックポイントになりそうです。
- 関税政策の具体化:どの国・どの品目に、どの水準の関税が適用されるのか。
- テクノロジー分野の線引き:TikTokをめぐる判断が、他のデジタルサービスや技術協力にどう波及するのか。
- 米国内政治の影響:議会や世論の動きが、大統領の対中政策や対外政策をどこまで縛るのか。
第2期トランプ政権の発足から約1年が見えてきた今、その本当の姿はこれからさらに鮮明になっていきます。日本を含む各国の政府や企業にとっても、米中双方のメッセージを丁寧に読み解き、中長期のシナリオを柔軟に描いていくことが求められます。
Reference(s):
cgtn.com








