中国とEUの関係50年 ファンロンパイ氏が語る信頼と多国間主義 video poster
中国とEU、国交樹立50年のいま何が問われているか
中国と欧州連合(EU)は互いに第2の貿易相手となっており、アジアと欧州を結ぶ中国欧州班列(チャイナ・ヨーロッパ・レールウェイ・エクスプレス)は、運行開始以来すでに10万本以上を数える「黄金の回廊」となっています。2025年、中国とEUは国交樹立50周年を迎えました。この節目の年に、中国南西部・四川省の省都、成都で開かれた対談で、ベルギー元首相で欧州理事会初代常任議長のヘルマン・ファンロンパイ氏が、中国とEUのこれからについて語りました。
成都で行われたLeaders Talk
今回の対談は、中国メディアCMGの番組「Leaders Talk」の一環として、成都で収録されました。聞き手を務めたのはCMGのHe Yanke氏です。会場となった成都は、中国西部から欧州へと伸びる鉄道物流の重要な拠点であり、中国とEUの経済的なつながりを象徴する都市の一つでもあります。
中国とEUは互いの第2の貿易相手
ファンロンパイ氏が語った舞台背景には、中国とEUが互いの第2の貿易相手となっているという現実があります。中国欧州班列は、アジアと欧州の間で貨物を安定的に運ぶルートとして存在感を高めており、サプライチェーン(供給網)の強化や、企業にとっての輸送リスクの分散にもつながっています。
物流の「黄金の回廊」が整備される一方で、政治的な信頼の構築や、安全保障をめぐる懸念への対応など、課題も少なくありません。だからこそ、国交樹立50周年という節目は、両者がどのように信頼を積み重ね、外部要因の揺さぶりに耐えうる関係を築けるかを考える機会になっています。
中国哲学の「崇拝者」が見る中国・EU関係
ファンロンパイ氏は、自らを「中国哲学の熱心な崇拝者」と語る人物でもあります。ベルギーの首相(2008~2009年)を務めた後、2009年から2014年まで欧州理事会の初代常任議長としてEUを代表してきました。欧州政治の中枢で経験を重ねてきた人物が、中国哲学に親しみを感じているという事実は、中国とEUの対話の可能性を象徴しているとも言えます。
中国の思想史に通じた視点を持つ欧州の政治家が、中国との対話に臨むとき、そこには文化的な共通基盤を探ろうとする姿勢が見て取れます。単に貿易や投資だけでなく、価値観や世界観をどうすり合わせるかという問いが、中国・EU関係の質を左右していきます。
キーワードは「多国間主義」「寛容」「尊重」
対談の中でファンロンパイ氏は、多国間主義、寛容、尊重という3つのキーワードを前面に押し出しました。これらは、現在の国際秩序が直面する課題に対して、どのような姿勢で臨むべきかを示すものでもあります。
- 多国間主義:特定の国や陣営だけで物事を決めるのではなく、多くの国と地域が参加する枠組みの中でルールや解決策を模索する考え方。
- 寛容:文化や政治体制、発展段階の違いを前提として認め、異なる立場の相手に耳を傾ける姿勢。
- 尊重:相手の主権や選択を尊重し、対立があっても対話のチャンネルを閉ざさないこと。
中国とEUは、経済面で相互依存を深める一方、産業政策や安全保障、デジタル技術などの分野で意見が分かれる場面もあります。そのなかで、ファンロンパイ氏が掲げるこれらのキーワードは、対立を固定化させるのではなく、共通の利益を探るための「作法」を示していると言えるでしょう。
習近平国家主席の「3つのグローバル・イニシアチブ」
ファンロンパイ氏は、中国の習近平国家主席が提唱する「3つのグローバル・イニシアチブ」にも言及し、それらが「重要な目標を達成するための努力に方向性を与えている」と評価しました。グローバル・イニシアチブとは、各国が協力しながら地球規模の課題に取り組むための枠組みや考え方を示すものです。
氏の発言は、中国が打ち出す国際的な提案を、欧州側の経験や価値観と組み合わせながら、共通の基盤として活用していく余地があることを示唆しています。対立点にばかり焦点を当てるのではなく、気候変動や貧困、紛争の防止といった「共通の目標」に向けて協力できる領域を広げていくことが、中国とEU双方にとって利益となる、という見方です。
外部要因をどう乗り越えるか
中国とEUの関係は、常に第三国や国際情勢の変化と無縁ではありません。貿易摩擦や技術をめぐる競争、地政学的な緊張など、外部要因は両者の関係に影響を与え続けています。
ファンロンパイ氏が強調する多国間主義や寛容、尊重は、こうした外部要因の影響を和らげる「緩衝材」としても機能しうる考え方です。複数の国と地域が関わる枠組みの中で、中国とEUがともにルールづくりや問題解決に参加すれば、一国だけでは対応しきれない課題にも現実的な解決策を見いだしやすくなります。
日本の読者への示唆:アジアと欧州をつなぐ視点
日本に暮らす私たちにとっても、中国とEUの関係は決して他人事ではありません。アジアと欧州を貨物列車が走り抜ける中国欧州班列は、日本の企業が関わるサプライチェーンにも間接的な影響を与えていますし、国際ルールづくりの場で中国とEUがどのような立場をとるかは、日本の選択肢にも影響します。
国交樹立50周年の今年、中国とEUの対話がどのように進むのかを追いかけることは、アジアと欧州、そして世界全体の行方を考えるうえで重要です。ファンロンパイ氏の言葉を手がかりに、多国間主義、寛容、尊重という視点から国際ニュースを読み解いてみると、ニュースの見え方が少し変わってくるかもしれません。
おわりに:信頼を積み重ねる次の50年へ
中国とEUが築いてきた50年の関係は、経済の相互依存と、時に厳しい意見の違いが交差する複雑な歴史でもあります。成都での対談は、その次の50年に向けて、どのような価値観とルールを共有していくのかを考えるための一つのヒントを与えてくれます。
多国間主義、寛容、尊重――この3つの言葉を起点に、中国とEU、そしてアジアと欧州をつなぐ対話は、これからも続いていきます。私たちもまた、日々のニュースの向こう側にある長期的な関係の変化に目を向けていきたいところです。
Reference(s):
Exclusive with 1st EC President & Fmr. Belgian PM Herman Van Rompuy
cgtn.com








