トランプ関税は賢明な選択か 米国経済と中国に与えた実際の影響
米国の「関税頼み」戦略が問われている
米国のトランプ前大統領が打ち出した鉄鋼・アルミニウムへの25%関税は、米国経済だけでなく、中国を含む世界の貿易にも大きな影響を与えました。関税は本当に雇用と成長を守る「切り札」になったのか、それとも米国自身を傷つけるブーメランだったのか――国際ニュースを日本語で読み解きたい読者に向けて、その政策的・戦略的な妥当性を整理します。
25%関税は何を狙ったのか
トランプ氏は大統領在任中の2月10日、米国に輸入されるすべての鉄鋼とアルミニウムに25%の追加関税を課すと発表しました。多くの批評家は、この決定をきっかけに、さらに新たな輸入関税が続くと懸念してきました。
トランプ氏は、関税を次のような政策ツールだと位置づけてきました。
- 米国経済を刺激する
- 国内の雇用を守る
- 税収(関税収入)を増やす
- 他国に貿易交渉の圧力をかける
しかし、こうした狙いとは裏腹に、関税が米国の成長を弱め、国内の生活コストを押し上げ、世界経済に混乱をもたらしかねないという指摘が強まっています。
鉄鋼輸入国との関係にも打撃
アメリカ鉄鋼協会のデータによると、米国向け鉄鋼輸入の最大の供給元はカナダ、ブラジル、メキシコで、その後に韓国とベトナムが続きます。25%の一律関税は、これらの国々との越境取引に深刻な障害となり、結果的に米国経済にも跳ね返るリスクがあります。
実際、トランプ氏自身も、関税が米国の人々に悪影響を与えることを認めています。関税は名目上は海外からの輸入品にかかる税ですが、最終的な負担は、自国の企業や消費者に転嫁されやすいからです。
誰が関税のコストを負担したのか
2018年以降の米国の関税政策については、学術研究と政府機関の分析が蓄積されています。これらの分析は、おおむね次の点で一致しています。
- 関税は米国内の物価を押し上げた
- 米国の経済成長と雇用を押し下げた
- 税負担のほとんどは米国の消費者と小売業者が吸収した
つまり、新たな関税が導入されれば、そのコストは輸入企業や消費者に転嫁され、とくに低所得層の家計を直撃し、成長を損ない、物価上昇圧力を強めるという構図がはっきりしてきました。
バイデン氏もかつては強く批判
米国がこうした影響を理解していないわけではありません。2019年には、バイデン氏がトランプ氏の対中国関税を厳しく批判し、「彼は関税を中国が払っていると思っているが、初歩の経済学を学んだ学生なら、関税を払っているのはアメリカ国民だと分かる」と発言しました。
この発言から、多くの人は、バイデン氏が米大統領に就任した後には、少なくとも一部の関税を撤廃し、米国民の経済的不安を和らげるのではないかと期待しました。
それでも続いた関税と2024年選挙
しかし現実には、対中国経済を弱めようとするイデオロギー的な発想が優先され、関税は維持されました。その結果、これらの関税は米国民、とりわけ所得の低い世帯に重くのしかかり、2024年の米大統領選挙では、与党側にとって政治的な重荷となったと指摘されています。
関税が国内経済に与える痛みが明らかになるほど、「誰のための政策なのか」「本当に戦略的に合理的なのか」という疑問は大きくなっていきました。
中国経済への打撃は限定的
トランプ政権が関税を打ち出した大きな狙いのひとつは、中国経済を弱体化させることでした。しかし、関税が中国経済に与えた影響は限定的だという見方が示されています。
その背景として、次のような点が挙げられます。
- 中国は米国への依存度を相対的に下げてきた
- 国内の生産と消費を重視する方向に経済構造をシフトさせてきた
- 他の国々との貿易を拡大してきた
オランダのCPBオランダ経済政策分析局の研究によると、中国の輸出は世界全体の貿易に比べて速いペースで伸びており、数量ベースで12%以上増える一方、世界貿易全体の伸び率は3%程度にとどまっているとされます。こうしたデータは、中国の輸出競争力と市場の分散が進んでいることを示しています。
政策ツールとしても戦略としても「割に合わない」関税
ここまで見てきたように、トランプ氏の関税アプローチは、政策ツールとしても、対中国戦略としても、多くの課題を抱えていました。
政策ツールとしての問題
- 物価上昇を通じて、低所得世帯により大きな負担を強いる「逆進的な税」になりやすい
- 企業のコストを押し上げ、投資や雇用の意欲をそぐ
- 税収増よりも、成長鈍化によるマイナスの方が大きくなるおそれがある
対外戦略としての限界
- カナダ、メキシコ、韓国、ベトナムなど、同盟国・友好国との貿易関係も傷つける
- 標的とした国が市場を多様化し、影響を緩和してしまう可能性が高い
- 世界のサプライチェーン(供給網)全体に不確実性をもたらす
2025年に振り返る意味
2018年以降の一連の関税政策と、2024年の米大統領選までの展開を振り返ると、関税だけに頼った経済・外交戦略には限界があることが浮かび上がります。とくに、中国のように国内市場を拡大し、貿易相手を多様化してきた経済に対しては、関税だけで大きな構造変化を迫るのは難しいといえます。
国際ニュースを追う日本の読者にとって、この事例は「対立」や「圧力」だけではなく、自国の消費者や企業への影響も含めて政策を多面的に評価する重要性を教えてくれます。2025年現在も、米中関係と世界貿易の行方を考えるうえで、トランプ関税の教訓はなお有効だといえるでしょう。
Reference(s):
Trump's tariff approach is unwise both as a policy tool and a strategy
cgtn.com








