貿易戦争とグローバルサウス:米関税ショックを成長の転機に変えるには
貿易戦争の余波、揺れるグローバルサウス
米トランプ政権が、すべての鉄鋼・アルミニウム輸入に対して25%の追加関税を発表しました。この措置は、世界貿易機関(WTO)のルールに基づいて築かれてきた国際貿易秩序を揺さぶるだけでなく、グローバルサウスと呼ばれる国々の発展に大きな試練を突きつけています。
国際貿易への依存度が高いグローバルサウスは、こうした貿易戦争の「直撃」と「間接的な波及」の両方を受けやすい立場にあります。関税引き上げや輸出規制の連鎖は、市場アクセスの機会を狭め、サプライチェーン(供給網)を混乱させ、先行きの不透明感を一段と高めています。
輸出主導型モデルが突きつけられる限界
とくに深刻なのは、グローバルサウスの多くが頼ってきた「輸出主導型成長モデル」が揺らいでいることです。安価な労働力を武器にした労働集約型産業は、関税引き上げや非関税障壁が増えることで、世界の分業体制の中での居場所を失うリスクがあります。
一方、一次資源の輸出に依存してきた国々は、価格変動や需要減といった外部ショックにいっそう翻弄されやすくなります。貿易戦争は、単なるモノのやりとりの摩擦ではなく、こうした成長モデルの弱点をあぶり出す「ストレステスト」として作用しているのです。
国家レベルで求められる転換:内側の「底力」を強くする
保護主義が再び頭をもたげるなか、グローバルサウスにとって重要なのは、「外部環境の悪化」を嘆くよりも、自らの成長エンジンを鍛え直すことです。記事が指摘する国家レベルの課題は、次のように整理できます。
- 財政・金融政策の連携による景気と雇用の下支え
- 構造改革とビジネス環境の改善を通じた競争力の底上げ
- 教育投資と技術革新による長期的な生産性向上
とくに資源依存度の高い国々にとっては、一次資源の輸出頼みから脱し、付加価値の高い製造業やサービス産業を育てることが不可欠です。グローバル・バリューチェーン(国境をまたぐ生産・分業のネットワーク)の中で、自国のポジションを引き上げることが、対外ショックへの耐性を高める近道になります。
デジタル経済とグリーン経済という新しい「成長エンジン」
次の一歩として注目されるのが、デジタル経済とグリーン経済です。記事は、これらがグローバルサウスの貿易と成長の新しい原動力になり得ると指摘します。
デジタル貿易の拡大は、地理的な制約を乗り越え、中小企業や個人事業者にも国際市場への扉を開きます。また、再生可能エネルギーや省エネ技術などの「グリーン産業」を育て、関連する技術や製品を輸出できれば、持続可能性と成長を両立させる道が見えてきます。
地域・南南協力で貿易ネットワークを再設計する
国家レベルの取り組みと並んで重要なのが、二国間・地域レベルの戦略です。米国の保護主義的な動きに対して、グローバルサウスは次のような方向で動くことが提案されています。
- 南南協力を積極的に進め、グローバルサウス同士の貿易と投資を拡大する
- 米国以外の先進経済ともパートナーシップを広げ、特定市場への依存度を下げる
- 多様な相手と結びついた「多層的な貿易ネットワーク」を構築する
貿易相手を分散させることは、「どこか一つの市場で関税が引き上げられても、全体としては立ち続けられる」体制づくりにつながります。
BRICSが示す協力のかたち
南南協力の枠組みの中で、とくに存在感を増しているのがBRICSです。BRICSは三本柱の協力モデルの一部として、経済・貿易・金融面での連携を深めてきました。こうした取り組みは、グローバルサウス同士の経済協力に強い推進力を与えているとされています。
貿易戦争のリスクが高まるなかで、資金の流れや決済、投資などの分野を含め、グローバルサウスが互いに支え合える仕組みを整えていくことは、今後の安定と成長のカギとなるでしょう。
「弱者」ではなく「ルールメイカー」へ
今回の関税引き上げは、グローバルサウスの脆さを浮き彫りにした一方で、成長モデルを見直し、より強靱で包摂的な経済へと転換するきっかけにもなり得ます。
外からのショックを受けるだけの「弱い立場」にとどまるのか、それともデジタルやグリーン分野、南南協力などを通じて、新しい貿易ルールやビジネスモデルを提案する側に回るのか。グローバルサウスの選択は、今後の国際経済の姿を大きく左右していきます。
ニュースを追う私たちにとっても、関税や貿易摩擦のヘッドラインの裏で、どの国・地域がどのような戦略転換を図っているのかに目を向けることが、これからの世界を読み解くヒントになりそうです。
Reference(s):
Brewing trade wars: How the Global South can turn the tables
cgtn.com








