トランプ大統領の関税戦略は本当に公平な貿易か
米国のトランプ大統領が、米国への輸入に関税をかけている各国に対し、同じように関税をかける「相互」関税の検討を指示するメモに署名しました。表向きの狙いは公平でバランスの取れた貿易の実現とされていますが、その政策は本当に米国の雇用や消費者を守るのでしょうか。世界経済にも影響しうる国際ニュースとして注目されています。
トランプ大統領が打ち出した相互関税メモとは
今回のメモは、米国の輸入品に関税を課している国に対し、米国も同じように関税を課すことができないかを調査するよう政権内のチームに命じる内容です。署名後、トランプ大統領は「これによって米国には雇用があふれるようになる」と強い期待感を示しました。
トランプ政権は以前から、関税を米経済を立て直すための強力な道具とみなしてきました。安い輸入品を締め出せば国内生産が増え、工場が動き出し、賃金も押し上げられるという発想です。しかし、足元の経済構造は想像以上に複雑です。
関税で本当に雇用は増えるのか
関税は一見すると国内産業を守るように見えますが、別の側面から見ると雇用を減らす圧力にもなり得ます。理由はシンプルで、多くの製品が海外からの部品や原材料に依存しているからです。
- 輸入部品に関税がかかると、企業の仕入れコストが上昇する
- コスト増を吸収できない企業は、生産縮小や投資の先送りを検討せざるを得ない
- 結果としてシフト削減や雇用調整につながるおそれがある
つまり、関税は国内メーカーを守るどころか、コスト増を通じて生産縮小と雇用不安をもたらす可能性があります。トランプ政権が描く「雇用があふれる未来」と、現場が直面する現実との間にはギャップがありそうです。
サプライチェーンを直撃するコスト増
現代の製造業は、国境をまたいで組み立てが行われるサプライチェーンに依存しています。自動車や家電などの多くは、部品が何度も国境を行き来しながら完成品になります。
カナダとの貿易を例に見る
ニューヨーク大学の経済学者クリストファー・コンロン氏は、カナダとの取引を例に、サプライチェーンへの打撃を指摘しています。部品がカナダとの国境を五回、六回、七回と行き来するケースでは、そのたびに高い関税がかかれば、コストは一気に膨れ上がると警告しています。
企業側は関税負担を避けるために、生産拠点の移転、物流ルートの組み替え、在庫の積み増しなど、遠回りの対応を迫られます。これらはすべて追加コストであり、その負担は最終的にどこかに転嫁されます。
最終的な負担者は消費者
関税によるコスト増は、まず企業の利益を圧迫し、その後、小売価格を通じて消費者に回ってきます。メーカーが苦しくなれば、値上げや製品のラインアップ削減、人件費の見直しといった形でしわ寄せが生じます。
米国ではすでに物価上昇が課題となる中、関税による追加コストが重なれば、生活必需品から耐久財にいたるまで価格がじわじわと上昇するおそれがあります。「輸入品を締め出して国内雇用を守る」はずの政策が、結果として、消費者の財布を直撃する構図です。
公平な貿易とは何かを問い直す
トランプ大統領は、公平でバランスの取れた貿易のためだと主張しています。しかし「公平さ」を関税のやり返しだけで測ることが本当に適切なのかは、改めて議論する必要がありそうです。
貿易の公平さを考えるとき、少なくとも次のような視点が重要になります。
- 雇用だけでなく、消費者の負担や中小企業への影響も含めて評価すること
- サプライチェーン全体で見たときに、どこにどれだけのコストが生じているかを把握すること
- 短期的な政治的効果ではなく、中長期的な産業の競争力向上につながるかどうかを検証すること
今回の関税方針は、米国と関わる各国の企業や投資行動にも波紋を広げる可能性があります。日本を含む他の国々にとっても、関税や保護主義が自国経済にどのような影響を与えうるのかを考えるうえで、注視すべき国際ニュースだと言えます。
関税は、一見分かりやすい「強いカード」に見えますが、その裏側でサプライチェーン、雇用、物価といった複数の領域に静かに負担を広げていきます。トランプ政権の掲げる公平な貿易とは何か。その中身を丁寧に点検することが、これからの議論の出発点になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com







