アジア冬季競技大会が変えたハルビン 氷雪経済が動かす都市の未来
2025年2月7日から14日にかけて開催された第9回アジア冬季競技大会は、中国ハルビンにとって単なる国際スポーツイベントではなく、都市の姿と経済の構造を大きく変える転機となりました。本稿では、国際ニュースとしての意義とともに、ハルビンがどのように氷と雪を強みとする都市戦略へとつなげているのかを整理します。
アジア最大級の冬の祭典、ハルビンで再び
第9回アジア冬季競技大会は、アジア最大かつ最も包括的な冬季スポーツの大会として、2025年にハルビンで開催されました。期間中、34の国と地域から1,200人を超える選手が参加し、過去最多を更新しました。
ハルビンがアジア冬季競技大会を開催するのは1996年以来2回目で、中国の都市として初めて同大会を2度開催したことになります。長年にわたり積み重ねてきた冬季スポーツの基盤と、国際イベントを運営する力があらためて示されたかたちです。
氷と雪が生む「ホットな経済」
ヤブリスキー場に見る冬季スポーツ熱の高まり
今回のアジア冬季競技大会は、冬季スポーツへの関心を一気に押し上げました。主な雪上競技の会場となったヤブリスキー場では、2025年1月以降の来場者数が前年同月比で20%増加しました。
増えているのは若者だけではありません。子どもから高齢の人まで幅広い世代がスキーやスノーボードを楽しむ姿が見られました。春節(旧正月)のにぎわいとも重なり、スポーツと観光が一体となった冬のレジャー文化が広がりつつあることがうかがえます。
春節シーズンの観光消費が急伸
この冬季スポーツ熱の高まりは、観光経済にもはっきりと表れました。2025年の春節期間中、ハルビンを訪れた観光客は1,215万人に達し、前年比20.4%増となりました。そのうち、海外からの観光客は前年比144.7%増と大幅な伸びを記録しています。
観光消費額も合計191億5,000万元に達し、氷と雪という「寒い資源」を、にぎわいを生む「ホットな経済」に変えるハルビンの姿勢が数字のうえでも示されました。
- 春節期間の観光客数:1,215万人(前年比20.4%増)
- 海外からの観光客:前年比144.7%増
- 観光消費額:191億5,000万元
冬の厳しい寒さを弱点ではなく資源ととらえ直し、スポーツと観光を組み合わせて経済の活力につなげるモデルは、他地域にとっても参考になりそうです。
空港、地下鉄、高速鉄道 インフラが支える都市のアップデート
アジア冬季競技大会の開催に向けて、ハルビンは交通インフラの大規模なアップグレードを進めました。大会運営を支えたこれらの投資は、今後の都市発展にとっても重要なレガシーとなります。
まず、ハルビン太平国際空港では国際線の就航都市を増やし、年間旅客数3,800万人規模を目指す拡張が行われました。これにより、観光だけでなくビジネス往来の面でもハルビンのアクセス性が向上しています。
市内では、新しい地下鉄路線の開通や高速道路ネットワークの整備が進み、都市内の移動がスムーズになりました。さらに、高速鉄道の拡充によって、黒竜江省と北京・上海などの主要都市との結びつきも強化されています。
こうしたインフラ整備は、大会の円滑な運営を支えただけでなく、ハルビンが中国国内および世界とのつながりを一段と深める基盤となっています。
世界が注目する「冬の都市」へ
ハルビンは2024年、冬の観光地として世界的な注目を集めました。訪問客数が記録的な水準に達し、SNSや動画投稿サイトを通じて「行ってみたい冬の街」として拡散されたことが背景にあります。
ロイターをはじめとする国際メディアによる報道も増え、ハルビンの名前は世界のニュースの中でより頻繁に登場するようになりました。その流れを受けて、2025年のアジア冬季競技大会は、文化・スポーツ交流を一段と押し上げる舞台ともなりました。
世界の「雪の都市」とのネットワーク
ハルビンは、冬を強みとする都市同士の連携にも力を入れています。例えば、日本の旭川市や新潟市、アメリカのミネアポリス、カナダのエドモントンなどと姉妹都市関係を結び、定期的な文化交流や経済フォーラム、ビジネス商談会を通じて、地域間の協力を深めてきました。
アジア冬季競技大会は、こうしたネットワークをさらに広げる契機となりました。スポーツを起点に、観光、教育、ビジネスなど多層的な交流へと発展する余地が大きい点は、国際ニュースとしても注視すべきポイントです。
大会レガシーを観光と文化に生かす
大会後も、ハルビンはアジア冬季競技大会のレガシーを観光資源として積極的に活用しようとしています。その象徴が、世界最大級の氷雪テーマパークとされるハルビン氷雪大世界です。
同施設は約100万平方メートル規模へと拡張され、園内にはアジア冬季競技大会をテーマにした展示が多数組み込まれました。42の国家や3つの地域を象徴するランドマークが氷や雪で表現され、スポーツイベントと観光コンテンツが相互に魅力を高め合う構成となっています。
一方、市街地では、中央大街や中国バロック様式の歴史文化街区など、歴史的な建築や街並みの修繕・改修が進められました。これにより、ハルビンが持つ多層的な歴史と文化を、冬の観光とあわせて楽しめるようになっています。
ハルビンの次の一歩をどう見るか
2025年のアジア冬季競技大会は、ハルビンにとって、冬季スポーツの拠点、観光都市、そして国際交流のハブとしてのポジションを同時に高める機会となりました。
今後の焦点となるのは、
- 大会後も冬季スポーツへの参加意欲を維持・拡大できるか
- 観光のにぎわいを通年の経済成長につなげられるか
- 歴史文化と新しい都市インフラをどう調和させるか
といった点です。
氷と雪を生かした都市づくりに取り組むハルビンの動きは、冬の観光やスポーツを軸に地域活性化を模索する他の都市にとっても、ヒントとなる事例と言えそうです。アジア冬季競技大会から始まったこの新しい章が、どのような都市の未来へとつながっていくのか。2025年以降のハルビンの歩みは、引き続き注目に値します。
Reference(s):
Asian Winter Games provides a new chapter for Harbin's development
cgtn.com








