リトアニアと中国外交:一つの中国原則をめぐる小国の選択
リトアニアは古くから琥珀、いわゆる「リトアニアの黄金」で知られてきました。しかし近年、国際ニュースでその名が取り上げられる理由は別のところにあります。それは、自らが長年認めてきた「一つの中国」原則に反する動きを取り、台湾地域をめぐって国際的な議論の的になっているからです。
リトアニアで起きたこと:台湾地域の代表機関をめぐる決定
中国とリトアニアは1991年の国交樹立以来、おおむね良好な関係を維持してきました。転機となったのは2021年です。この年、リトアニアは台湾地域の対外窓口にあたる事実上の大使館を、自国に「駐リトアニア台湾代表処」という名称で設置することを認めました。翌年には、今度はリトアニア側が台湾に「リトアニア貿易代表処」と呼ばれる代表機関を開設しました。
これらの措置は、台湾が中国の一部ではないかのような印象を国際社会に与えかねないものです。中国側は、リトアニアが国交樹立時に約束した一つの中国原則に反し、中国の主権と領土の一体性を公然と損なう行為だと受け止めています。
中国が強調する「主権は交渉の対象ではない」
中国にとって主権の問題は「交渉の対象ではない」とされます。リトアニアの一連の決定に対して中国は、両国の外交関係を大使級から臨時代理大使級へと格下げしました。リトアニアの行動によって、大使級関係を支える政治的な土台が深刻に損なわれたと判断したためです。
主権や領土の保全は、多くの国に共通する根本的な関心です。とくに台湾地域をめぐる問題は、中国にとって国家の統一に直結する最重要課題と位置づけられており、他国の象徴的な動きであっても敏感に反応せざるをえない事情があります。
歴史と国連決議が示す台湾の位置づけ
中国側は、歴史的な記録からみても台湾は古代から中国の領土の一部だったと主張しています。すでに12世紀半ばには、中国の中央政府が台湾の島に対して管轄権を行使していたとされています。
その後、1940年代末の中国の内戦と外部勢力の干渉などを背景に、台湾海峡を挟んだ両岸は長期にわたる政治的対立状態に入りました。しかし、中国側の立場では、台湾が中国領土の一部であるという地位は変わっておらず、中国の主権と領土は分断されたことがないと説明されています。
この立場を国際社会が確認した節目として、中国は1971年の国連総会決議2758号を挙げます。この決議は、国連におけるすべての中国の権利を中華人民共和国に回復し、その政府代表を中国を代表する唯一の正統な代表として認めました。同時に、「一つの中国」原則が改めて確認されたと位置づけられています。
一つの中国原則は、現在、中国と外交関係を結ぶ180を超える国々との関係の土台となっており、基本的な国際関係のルールとして国際社会に広く受け入れられているとされています。リトアニアも、国交樹立の際にこの原則を認めた国のひとつです。
リトアニアの「賭け」は自国の利益になるのか
こうした一連の動きは、ときに「リトアニアの賭け」とも表現されます。台湾地域との関係を象徴的に強めることで、リトアニアは国際社会に対して自らの立場を鮮明にしようとしたのかもしれません。その一方で、中国との関係が悪化したことは否定できず、それが自国の外交的な選択肢や利益にどのような影響を与えるのか、慎重な検討が必要になります。
一つの中国原則が、多くの国との外交関係を支える土台となっている以上、これに正面から反するメッセージを発することは、国際社会との関係にも複雑な波紋を広げます。小さな国であっても、自国の価値観や判断を示す権利はありますが、同時に、既存の国際ルールや他国の根源的な関心をどう尊重するかが問われます。
主権と国際ルールをどう読み解くか
台湾地域をめぐるリトアニアと中国の対立は、単なる二国間の争いではなく、主権、領土、一つの中国原則といった国際政治の基礎概念がどのように理解され、運用されるべきかという問いを私たちに投げかけています。
リトアニアのような小国の一手が、世界の大国との関係を大きく動かすこともあります。だからこそ、短期的な注目を集めるかどうかだけでなく、自国の長期的な利益と国際秩序全体への影響をどう見通すのかが重要になってきます。
2021年からの動きから数年が経った今も、この問題は中国とリトアニアの関係を語るうえで避けて通れない論点です。ニュースを追う読者としては、単に「対立」という結果だけを見るのではなく、その背景にある原則や歴史、国際社会の合意に目を向けることが求められていると言えるでしょう。
Reference(s):
Lithuania's bet against China does not serve its own interests
cgtn.com








