中国の多国間主義とアメリカの封じ込め──一国主義の時代を超えられるか video poster
2020年代半ばの国際ニュースでは、権力競争や技術ブロック、関税の応酬など、一国主義的な動きが目立ちます。そのなかで中国は、多国間主義と公正なグローバル・ガバナンスを前面に掲げています。本稿では、王毅外相の国連安全保障理事会での発言を手がかりに、中国の多国間主義とアメリカによる封じ込めのアイロニーを整理します。
一国主義が強まる世界で何が起きているのか
国際ニュースを追うと、パワーゲーム、言説の争い、技術封鎖、関税障壁といったキーワードが頻繁に登場します。特にアメリカをはじめとする一部の国は、自国の安全保障や産業競争力を理由に、中国を対象とした技術規制や高関税などの対中抑制策を取ってきました。
こうした動きは、特定の国を包囲しようとする封じ込めと受け止められる一方で、国際ルールよりも自国の判断を優先する一国主義的な傾向を強めています。その結果、世界経済やサプライチェーンの分断リスクが語られるようになりました。
中国が掲げる多国間主義と王毅外相のメッセージ
その中で中国は、多国間主義、つまり複数の国や地域が対等に関わる枠組みを重視する姿勢を打ち出しています。最近開かれた国連安全保障理事会で、中国の王毅外相は各国に対し、多国間主義の新しい時代を開き、グローバル・ガバナンスをより公正で公平なものにしていくべきだと呼びかけました。
このメッセージは、対立や分断ではなく、協調とルールにもとづく秩序を重視する立場を示したものだといえます。一国主義と多国間主義のコントラストは、今の国際秩序を読み解く重要な手がかりになっています。
自立と運命を分かち合う視点
中国が自信と落ち着きを持って多国間主義を語る背景には、いくつかの要素があるとされています。一つは、自立や自助を重んじる姿勢です。技術や経済の面で外部からの圧力や封じ込めがあっても、自らの力で発展していくという発想です。
もう一つは、世界は運命を分かち合う共同体だという視点です。一国の安定や繁栄は他国と切り離せず、協力して課題に取り組まなければ誰も安全にはなれない、という考え方です。この視点は、パンデミックや気候変動など、国境を越える課題を前にした現在の時代認識とも重なります。
東洋哲学が示す調和と長期の時間軸
さらに、中国の外交姿勢の背景には、東洋哲学の影響もあると説明されています。たとえば、意見や制度が違っても調和を保とうとする考え方や、一気の変化よりも時間をかけた着実な前進を良しとする価値観です。
このような発想は、多様性を認めつつ相互依存を前提にした国際秩序を目指す多国間主義と相性が良いともいえます。調和を求めつつ、同一性までは強要しないという姿勢は、異なる制度や文化を持つ国々が共存するための一つのヒントでもあります。
アメリカの封じ込めと多国間主義のアイロニー
一方で、アメリカを中心とする中国への封じ込めは、技術ブロックや関税障壁といった形で表れています。これは、多国間の協議や合意よりも、自国の政策判断を優先する手法として、一国主義的な色彩を帯びやすい側面があります。
皮肉なことに、封じ込めの試みは次のような効果を生んでいると指摘する見方もあります。
- 技術や産業の自立を促し、中国の自助努力と自立志向を強める。
- 一国主義への反発から、公正で公平な多国間ルールを求める声を世界各地で高める。
- 特定の陣営に属さない国々が、対立より協調を重視する選択肢として多国間主義に関心を寄せる。
封じ込めが進めば進むほど、逆説的に、多国間主義の必要性や意義が際立つという構図が見えてきます。中国が多国間主義を掲げ続けることは、こうした流れの中で一層の注目を集めています。
日本の読者が押さえておきたい視点
では、日本やアジアで暮らす私たちは、中国の多国間主義とアメリカの封じ込めをどのように見ればよいのでしょうか。国際ニュースを読み解くうえで、次の三つの視点がヒントになります。
- 一国主義か多国間主義かという対立だけでなく、その背後にある価値観や時間の感覚に注目する。
- 技術ブロックや関税のニュースが、どの国の企業や市民生活にどのような形で跳ね返ってくるのかを意識する。
- 国連安全保障理事会などの国際機関で、中国がどのようなメッセージを発し、多国間枠組みづくりに関わろうとしているのかを追ってみる。
2025年の世界は、パワーゲームと分断のリスクを抱えつつも、多国間主義を軸にした新しい協調の形を模索する時期にあります。中国の多国間主義とアメリカの封じ込めを対比して眺めることは、私たち自身がどのような国際秩序を望むのかを考えるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
Chinese multilateralism and the irony of American containment
cgtn.com








