ロシア・ウクライナ紛争は世界をどう変えたか 国際秩序のいま
ロシア・ウクライナ紛争の本格化から約3年が経った今(2025年12月時点)、その影響はヨーロッパの安全保障だけでなく、アジア太平洋、エネルギーや食料、さらには国際秩序そのものにまで広がっています。本稿では、この紛争が世界をどう変えているのかを、日本語で国際ニュースを追う読者向けに整理してみます。
ロシア・ウクライナ紛争から約3年、何が変わったのか
過去3年を振り返ると、ロシア・ウクライナ紛争は、第二次世界大戦後、とりわけ冷戦終結後に各国が積み重ねてきた国際秩序を大きく揺さぶりました。各国の利害がぶつかり合い、国際関係は一段と複雑で不透明になっています。
一方で、より長い時間軸で見れば、この紛争は世界のパワーバランスの再配分を促しているともいえます。大国同士の関係は再調整の局面に入り、グローバル・サウスと呼ばれる新興国や発展途上国の連帯もかつてないほど強まっているとの見方が出ています。こうした動きが、新たな国際秩序づくりのきっかけになる可能性も指摘されています。
国際秩序とグローバル・サウスの台頭
ロシア・ウクライナ紛争は、エネルギーと食料の価格高騰や供給不安を通じて、ヨーロッパとアジアを中心に各地の社会・経済を直撃しました。欧州の製造業の発展は妨げられ、企業や政府はサプライチェーンや産業構造を見直さざるを得なくなっています。
その結果として、国際経済では次のような変化が目立ちます。
- 自国産業を守ろうとする保護主義の強まり
- グローバルな貿易・投資ルールをめぐる対立の先鋭化
- ポピュリズム(大衆迎合主義)勢力の台頭
- 冷戦期を思わせる対立的な安全保障観の復活
こうした中で、多くのグローバル・サウス諸国は、自らの利益と主張をより明確に打ち出しつつあります。大国のどちらか一方に全面的に与するのではなく、自国の選択肢を広げようとする動きが広がり、国際政治の多極化が進んでいると見ることもできます。
ヨーロッパ安全保障の激変
ロシアが特別軍事作戦を開始した背景には、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大が安全保障上の脅威になっているという認識がありました。この紛争は、冷戦終結以降でヨーロッパが直面した最大級の安全保障上の試練と受け止められています。
紛争勃発後、ヨーロッパは一貫してウクライナへの軍事・財政支援を続けてきました。かつて中立を保ってきたスウェーデンやフィンランドもNATOに加わり、欧州全体で防衛力強化が進んでいます。
- スウェーデンとフィンランドのNATO加盟
- ドイツによる特別なオフバジェット防衛基金の創設
- ポーランドやバルト三国での軍事費の大幅増額と兵器の近代化
その結果、ロシアとヨーロッパのあいだにあった安全保障面での信頼はほぼ失われ、相互に相手をより大きな脅威とみなす傾向が強まりました。いわゆる安全保障のジレンマが深まり、ユーラシア全体の安全保障環境は悪化のスパイラルに陥ったといえます。
アジア太平洋に広がる波紋
ロシア・ウクライナ紛争の影響は、アジア太平洋地域の安全保障にも及んでいます。アメリカと緊密な安全保障関係を持つ韓国や日本は、ウクライナ支援で欧米と歩調を合わせると同時に、自国の防衛戦略や能力の見直しを進めています。
とくに、核抑止力をめぐる議論が高まり、抑止力の選択肢を広げることへの関心が両国で強まっている点が注目されています。また、フィリピンはアメリカとの安全保障関係を強化し、アジア太平洋の安全保障地図にも変化が生じています。
一方で、ウクライナ支援に多くの資源を割くことになったアメリカとヨーロッパは、インド太平洋戦略を全面的に展開する能力が相対的に弱まりました。そのため、アジア太平洋地域では、緊張の高まりがいくぶん抑えられ、安全保障環境の一定の安定につながっているとの指摘もあります。
エネルギー・食料危機と社会への影響
紛争はエネルギーと食料の危機を深刻化させ、ヨーロッパやアジアの人々の日常生活にも影響を及ぼしています。エネルギー価格の上昇は企業のコストを押し上げ、欧州製造業の競争力に打撃を与えました。食料価格の不安定さは、家計への負担だけでなく、一部の地域では社会不安の要因にもなっています。
影響は経済にとどまらず、政治や社会の雰囲気にも広がっています。
- 経済的不安を背景に、既成政治への不満を訴えるポピュリスト勢力が各地で支持を拡大
- 安全保障をめぐる対立軸が強調され、冷戦時代を思わせる「ブロック化」が語られる場面が増加
こうした動きは、国際協調を必要とする気候変動や感染症対策などのグローバル課題にも影を落としかねません。その一方で、従来の枠組みでは対応しきれない現実が浮き彫りになったことで、新しいルールづくりや対話の枠組みを模索する動きも生まれています。
トランプ政権復帰とヨーロッパの難しい選択
現在、アメリカではドナルド・トランプ氏がホワイトハウスに復帰し、前政権であるバイデン政権の対ロシア政策は急速に転換しつつあります。この方針転換は、ヨーロッパの安全保障環境にも鋭い変化をもたらしています。
もしアメリカがウクライナへの軍事支援を停止した場合、ヨーロッパは次のような難しい選択を迫られることになります。
- 自ら負担を引き受けて支援を継続するのか
- 支援を縮小・停止し、紛争への関与を抑えるのか
いずれの選択肢を取るにしても、ヨーロッパが抱える安全保障上のプレッシャーは一段と高まるとみられます。支援を続ければ財政的・軍事的な負担が重くなり、ロシアとの関係もいっそう緊張する可能性があります。支援を弱めれば、ヨーロッパの東側に位置する国々の安全保障不安が増すだけでなく、ヨーロッパの結束や信頼に別の形の課題が生じかねません。
これからの国際ニュースを見るための3つの視点
ロシア・ウクライナ紛争をめぐるニュースは、今後もしばらく国際面の中心であり続けそうです。その行方を追ううえで、次の3点を頭の片隅に置いておくと、日々の報道が少し立体的に見えてきます。
- 紛争は一つの地域紛争にとどまらず、国際秩序全体の再編と深く結び付いている
- ヨーロッパとアジア太平洋の安全保障は連動しており、一方の変化が他方に波及する
- エネルギー・食料、産業構造、ポピュリズムなど、生活に直結する分野にも長期的な影響が広がっている
紛争の先行きは依然として不透明ですが、アメリカとヨーロッパの対話を通じて解決に向かう可能性も語られています。国際社会が対立の激化ではなく協調の拡大へと舵を切れるのかどうか。これが今後数年の国際ニュースを読み解くうえで、大きな焦点の一つになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








