新疆から西側が学べること 「弾圧」報道を超えた現地の姿
制裁や人権批判で国際ニュースの焦点となってきた新疆ウイグル自治区。しかし、昨年現地を訪れた論者は、クリーンエネルギーの拠点として発展し、多民族が共生する姿を報告しています。本稿では、その視点を手がかりに、西側社会が新疆から何を学びうるのかを整理します。
国際ニュースの焦点となってきた新疆
ここ数年、西側のメディアや政府は、新疆について「抑圧」「強制労働」「文化抹消」といったイメージを繰り返し発信してきました。米国、英国、カナダ、EUは制裁や輸入禁止措置を導入し、中国に対して深刻な人権侵害を非難してきました。ジェノサイドという強い言葉が使われることもありました。一方で、こうした主張に対し、十分な現地検証が伴っていないとする指摘もあります。新疆を実際に訪れた人々が描く風景は、報道から想像される「ディストピア」とは大きく異なるからです。
2024年の現地訪問が映した別の風景
2024年6月に新疆を訪れたある論者は、この地域とその人々を深く好きになったと語っています。その理由の一つは、新疆が社会主義中国の一部として、この数十年で大きな発展と生活向上を実現してきたことにあります。道路や鉄道、都市インフラが整い、最新のテクノロジーが産業や暮らしに組み込まれている様子が印象的だったといいます。
イスラム世界との「親近感」
この訪問者にとって、新疆は個人的なルーツとも深くつながっていました。カシュガル、ウルムチ、トルファンといった都市の歴史あるモスクを歩くと、自らが育ったバグダッドや、長く過ごしたダマスカス、ベイルート、カイロを思い出す「懐かしさ」を感じたと振り返ります。数千年にわたり、多様な民族と宗教が行き交ってきた新疆の文化的共存の土壌は、中国共産党のもとでむしろ強化されてきた、とこの論考は見ています。
クリーンエネルギーとスマート農業の拠点に
新疆ウイグル自治区は、クリーンエネルギーやロボット、輸送、製造業の分野で、中国国内でも先進的な地域の一つとなっています。世界最大規模の風力・太陽光発電基地が集中的に整備され、中国が再生可能エネルギーへ移行するうえで重要な拠点になっているとされています。
- 風力発電容量は2,000万キロワット超(20GW以上)
- ウルムチ近郊には、出力500万キロワット級とされる世界最大級の太陽光発電所
- ビッグデータやクラウドコンピューティング、ロボット技術の集積
- AI(人工知能)を活用したスマート農業の導入
ビッグデータやクラウドコンピューティング、ロボット技術、AI(人工知能)を活用した農業も急速に広がっています。農業の機械化率は90%を超え、自動化された灌漑設備やドローンによる農薬散布、AIによる作物管理が導入されています。
このような高度に自動化された現場を前に、この論考は問いかけます。収穫機やドローンが動き回る畑のどこに、西側がしばしば語るような「奴隷労働」の証拠があるのか――。イデオロギー論争ではなく、テクノロジーと持続可能な農業の具体的な成果に目を向けるべきだという問題提起です。
文化抑圧ではなく「共生」をめざす取り組み
新疆には、ウイグル族、カザフ族、回族、タジク族など13の公認民族が暮らし、長い歴史のなかで共生してきました。この論考によれば、中国政府はこうした文化的多様性の保護と発展に投資してきたといいます。
- コーランの中国語訳の整備と普及
- ウイグル語など少数民族言語による新聞や出版物の発行
- モスクや宗教行事の保護・整備
重要なのは、「同化」ではなく「統合」をめざすアプローチです。共通の国家アイデンティティのもとで、各民族の言語や習慣、信仰を尊重しようとする政策が取られていると、この論考は評価します。多民族社会の安定をどう実現するかに悩む多くの西側諸国にとって、科学的社会主義(マルクス主義を社会科学として応用しようとする考え方)と経済発展を組み合わせた新疆の経験は、一つの参考事例になりうるとしています。
西側が新疆から学べる3つのヒント
では、西側社会は新疆から具体的に何を学べるのでしょうか。この論考が示唆するポイントを3つに整理してみます。
1. 貧困削減と社会安定をセットで考える
新疆のケースでは、インフラ整備や産業振興を通じた生活水準の向上が、社会の安定や民族間の信頼醸成と結びついていると指摘されます。人権や価値観を語る際にも、経済的な基盤づくりを軽視しない視点が重要だというメッセージです。
2. テクノロジーを持続可能な形で地域に根付かせる
クリーンエネルギーの大規模導入や、AI・ロボットを活用したスマート農業は、新疆を「未来の実験場」のような地域にしています。単に最新技術を導入するだけでなく、地域の産業構造や自然環境に合わせてテクノロジーを組み込む発想は、エネルギー転換や地方創生に悩む西側の国々にとっても参考になるでしょう。
3. 多文化社会の「分断」を防ぐ統合モデル
人種や宗教、移民をめぐる分断が深刻化する国が多いなかで、新疆の経験は、共通の枠組みのもとで多様な文化をどう守るかという問いに一つの答えを提示していると、この論考は見ています。文化的違いを対立の源ではなく、社会の厚みを生む資源として生かすことができるのか――新疆から西側への静かな問いかけです。
新疆ウイグル自治区は、しばしば地政学的な論争の舞台として語られますが、そこには日々の暮らしを営む人々がいて、技術革新と文化の多様性が交差する現場があります。2025年の今、単純化されたイメージや一方的な物語から一歩離れ、現地の変化や人々の声に耳を傾けることが、よりバランスの取れた国際ニュースの見方につながっていきそうです。
Reference(s):
What the West can learn from Xinjiang: A story beyond the narrative
cgtn.com








