トランプとゼレンスキーの対立で、欧州はどんな代償を払うのか
ウクライナのゼレンスキー大統領と、今年1月にホワイトハウスに戻ったトランプ米大統領の公開の対立は、ウクライナ情勢だけでなく、欧州の安全保障と財政にも波紋を広げています。2025年3月1日のロンドン訪問から、ホワイトハウスでの舌戦、そして米国の対ウクライナ支援の見直しまで、一連の動きを振り返りながら、欧州が支払うかもしれない代償を考えます。
ロンドンでは熱烈歓迎、ワシントンでは緊張
2025年3月1日、ワシントンでの混乱した討論の直後に、ゼレンスキー氏はロンドンの首相官邸を訪問し、スターマー英国首相から温かい歓迎を受けました。わずか20秒ほどのやり取りの中で、ゼレンスキー氏は英国への感謝を三度も口にし、両者はウクライナ軍向けの22億6000万ポンドの融資に署名しました。ウクライナの軍事支援にとって、欧州の重要な一歩となる合意です。
ロシアとウクライナの紛争が2022年2月に激化して以来、ゼレンスキー氏は米国を含む西側諸国で大きな支持を得てきました。欧米の指導者たちはこぞってウクライナへの連帯を表明し、同国にはこれまでに数十億ドル、数十億ユーロ規模の支援が流れ込んできました。
トランプ政権で変わったワシントンの空気
しかし、2025年1月にトランプ氏がホワイトハウスに復帰すると、ワシントンの空気は一変します。ゼレンスキー氏が最近行ったトランプ氏とヴァンス副大統領との会談では、ホワイトハウスの執務室でのやり取りが、そのままカメラの前での激しい応酬となりました。
会談の中で、ゼレンスキー氏は米当局者から米国への非礼だと繰り返し非難されました。象徴的なホワイトハウスという場で、米大統領が公開の場で論争することはほとんどありませんが、トランプ氏は自らを平和の仲介者としてアピールしつつ、前政権のバイデン氏を批判し、ウクライナへの支援にもっと感謝を示すようゼレンスキー氏に迫り、世界大戦の危険性を招いているとまで責め立てました。
この口論は、ゼレンスキー氏にとってもトランプ氏にとっても、政治的なダメージとなりかねない場面でした。最終的に会談は打ち切られ、ゼレンスキー氏は事実上ホワイトハウスを追い出される形で訪問を終えています。
ゼレンスキー強気発言の背後にある欧州の後ろ盾
それでもゼレンスキー氏がトランプ氏に対して強硬な姿勢を崩さなかった背景には、欧州、そして米国の一部エスタブリッシュメントからの強い後ろ盾があったとみられます。欧州がウクライナ支援の中核を担うとの確信があればこそ、ワシントンでの圧力にも公然と反論できた、と解釈することもできます。
今回の対立によって、ワシントンとキーウの間で検討されていた鉱物資源に関する合意は結ばれませんでした。その結果、少なくとも現時点では、ウクライナが自国の天然資源を米国に差し出す形の取引は回避されています。これはウクライナの資源主権を守るという点では一時的な安心材料となる一方で、米国との関係に新たな不確実性を生んでいるとも言えます。
揺らぐ米支援 その穴を欧州が埋めるのか
今後、米国がこれまでと同じ規模でウクライナに資金と武器を供給し続けるのかどうかは、不透明になっています。トランプ政権は現在、これまで継続してきたウクライナ向け軍事支援の輸送をすべて終了させることを検討していると伝えられています。また、米国務省は米国際開発庁(USAID)に対し、旧ソ連の一部であるウクライナのエネルギー網を復旧させるための支援計画を終了するよう指示しました。
こうした動きが示唆するのは、ワシントンがウクライナ支援の負担を軽くしようとしている可能性です。その場合、浮かび上がる問いは、米国が一歩引いた後、その空白を欧州がどこまで埋めるのかという点です。欧州が支払うかもしれない代償は、主に次の三つに整理できます。
- 財政負担の増大:米国の軍事・経済支援が細れば、その分を欧州が補う必要が出てくる可能性があります。すでに多額の支援を行ってきた欧州にとって、さらなる負担は国内政治にも影響を与えかねません。
- 安全保障リスクの高まり:ウクライナ情勢の行方は、欧州の安全保障に直結しています。米国とウクライナの関係悪化が長引けば、対ロシアの抑止力の在り方を巡り、欧州は難しい選択を迫られることになります。
- 欧州内部の政治的分断:各国でウクライナ支援の是非や規模を巡る議論が深まり、欧州内部の足並みが乱れるリスクもあります。支援を強化したい国と慎重な国との間で温度差が広がれば、対外政策の一体性が揺らぐ可能性があります。
欧州はどんな選択を迫られているのか
欧州が今後取り得る選択肢は、一つではありません。大まかに言えば、次のような方向性が考えられます。
- 支援の継続・強化:米国が距離を置く分まで、欧州が軍事・経済支援を主導し、ウクライナを支え続ける道です。その場合、短期的には財政負担が増えますが、欧州の主体性を示すことにもなります。
- 支援の縮小と妥協の模索:支援規模を抑えつつ、紛争の早期終結に向けた妥協点を探る現実路線です。ただし、その結果がウクライナの安全や欧州の長期的な安定につながるかどうかは不透明です。
- 中間的なアプローチ:軍事支援を一定レベルで維持しつつ、外交的な枠組みづくりを強化する折衷案です。米国の動きをにらみながら、欧州独自のイニシアチブを模索する必要があります。
トランプ氏とゼレンスキー氏のホワイトハウスでの舌戦は、一見すると二人の個人的な対立のように映ります。しかし、その背後では、米国の対ウクライナ政策の見直しと、欧州に重くのしかかるかもしれない負担の増加という、より大きな構図が動いています。
2025年の今、欧州がどのような判断を下すのかは、ウクライナ情勢だけでなく、欧州自身の安全保障と政治の行方を左右することになりそうです。読者一人ひとりが、自分ならどの選択肢を支持するのかを考えることが、次の議論への第一歩になるのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








