トランプ再登場と関税政策 「アメリカ第一」の意外なツケ
トランプ再登場と関税政策 「アメリカ第一」の意外なツケ
トランプ米大統領が第2期政権の最初の一般教書演説で「America is back」と力強く宣言しました。しかし、その直前に打ち出した関税引き上げは、本当に米国を「再び偉大に」するのでしょうか。国際ニュースとしての今回の動きを、関税が誰に負担を強いるのかという視点から整理します。
トランプ第2期の「最初の43日」で何が起きたか
トランプ氏は今回、米議会上下両院合同会議で行われた長時間の一般教書演説で、「就任から43日で、他の政権が4年や8年かけて行う以上のことを成し遂げた」と誇示しました。演説によれば、すでに約100本の大統領令に署名し、400件を超える大統領としての行動を取ったといいます。トランプ氏は、こうした「迅速で容赦ない行動」が、米国史上「最も偉大で成功した時代」をもたらすと強調しました。その代表例の一つが関税政策です。
象徴となった大幅な関税引き上げ
一般教書演説のわずか数時間前、米国政府はカナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を課し、中国からの輸入品への関税率も20%に倍増させました。トランプ氏は「関税はアメリカを再び豊かにし、アメリカを再び偉大にするためのものだ」と述べ、とりわけ米国の農業にとって追い風になると主張しました。しかし、現実はより複雑です。
グローバルなサプライチェーンに跳ね返るコスト
現在の世界経済では、原材料から完成品までの生産工程が国境を越えて分業されるサプライチェーンが当たり前になっています。関税によってカナダ、メキシコ、中国からの部品や素材が値上がりすれば、米国内の製造業は生産に必要な原材料をより高い価格で仕入れざるを得ません。その結果、企業のコストは上昇し、価格転嫁が難しければ生産を縮小せざるを得ない局面も出てきます。トランプ氏が期待するような「雇用拡大」とは逆に、生産調整や人員削減につながる可能性も指摘されています。
負担するのは海外企業ではなく米国の消費者
関税の負担は本当に「外国企業」に押しつけられるのでしょうか。2018年にトランプ氏がさまざまな輸入品に関税を課した際、米シンクタンクのTax Foundationは、関税のコストがほぼそのまま米国企業と最終消費者に転嫁されたと分析しました。その結果、米国経済全体では年間160億ドルの純損失が生じたと推計しています。今回も同様に、輸入品価格の上昇は輸送や流通を経て、最終的にはスーパーやオンラインストアの価格に反映されるとみられます。つまり、「アメリカを豊かにする」はずの関税が、実際には米国の家計を圧迫する追加の税金として機能しかねません。
1世帯あたり年1,200ドル超という「見えない増税」
トランプ氏が政権復帰後も同じ関税政策を繰り返していることについて、米シンクタンクのPeterson Instituteは、カナダ、メキシコ、中国からの輸入品に対する追加関税の直接的なコストを試算しました。その結果、こうした輸入税は、ごく普通の米国世帯1軒あたり年間1,200ドル以上の「余分な税負担」に相当すると指摘しています。名目上は「外国を狙った関税」であっても、実際には米国の企業や家計が多くを負担しているという構図が浮かび上がります。
対抗措置が農業を直撃する可能性
さらに、標的となった国々が報復措置を取れば、状況は一段と複雑になります。米国の貿易障壁に対抗して、中国は米国産の鶏肉、大豆、牛肉、豚肉など主要な農産品に最大15%の追加関税を上乗せしました。米国にとって重要な農産品に追加関税がかかることで、農業部門が打撃を受けるリスクも高まります。輸出減少や価格下落が続けば、守ろうとしたはずの農家が苦境に追い込まれかねません。
「アメリカ第一」の行き先をどう見るか
トランプ氏の「アメリカ第一」路線は、国内向けにはわかりやすいメッセージとして響きます。しかし、サプライチェーンが細かく国際分業されている2025年の世界経済では、一国だけがコストを他国に押しつけることは難しくなっています。今回の関税強化が示しているのは、保護主義的な政策が短期的には政治的な支持を集めても、中長期的には自国の企業や消費者に重い負担として跳ね返ってくる可能性が高いという現実です。国際ニュースとしてこの動きを追うことは、日本を含む他の国や地域が、自国の経済戦略や通商政策を考えるうえでも、多くの示唆を与えてくれます。
Reference(s):
cgtn.com








