米国の新関税は誰のため?トランプ政権の制裁が自国経済に跳ね返る理由
米国のドナルド・トランプ大統領が打ち出した新たな追加関税は、本当に米国の利益になるのでしょうか。カナダ、中国、メキシコを同時に狙い撃ちにした今回の制裁は、短期的には強硬姿勢を演出できますが、最終的には米国の消費者と企業に跳ね返る可能性が高い政策です。
カナダ、中国、メキシコに一斉関税
火曜日、米国政府はカナダ、中国、メキシコからの輸入品に新たな関税を課すと発表しました。対象となる3カ国はいずれも米国にとって重要な貿易相手であり、そのインパクトは小さくありません。
- カナダ・メキシコからの輸入品:一律25%の関税
- 中国からの輸入品:既存の税率を倍増し、20%に引き上げ
トランプ大統領は、これらの追加関税が米国を守るための「正しい決断」だと繰り返し主張しています。しかし、経済の仕組みを冷静に見れば、関税は最終的に輸入企業や消費者の負担として表面化しやすい政策です。
スマホ、PC、産業機器…一番打撃を受けるのは誰か
昨年2024年のデータをもとにしたAP通信の分析によると、中国から米国への輸入で特に金額が大きかったのは、次の3分野でした。
- スマートフォン
- パソコンとその周辺機器
- 電気機器・産業用機器
今回の関税引き上げの影響を、米国の人びとが最も実感しやすいのは、まさにこれらの分野だとみられます。普段使っているスマホやノートPC、オフィスや工場で使われる機械などの価格がじわじわと上がれば、そのコストは企業の投資意欲や家計の消費マインドを冷やす方向に働きます。
関税とは、要するに「輸入品に上乗せされる税金」です。企業はその負担分を最終価格に転嫁しようとするため、
- 製品価格の上昇
- 選択肢の減少(安価な製品の供給が細る)
- 企業の利益圧迫と投資減少
といった形で、時間差を伴いながら米国国内にマイナスの影響が広がっていきます。
中国の対抗措置:木材と大豆で示すメッセージ
米国の決定を受けて、中国税関総署は米国からの木材輸入を一時的に停止すると発表しました。さらに、特定の米国企業3社からの大豆輸入についても、同様に一時停止措置を取るとしています。
木材や大豆は、米国の特定地域や産業にとって重要な輸出品です。対象を絞った上で輸入を止めることで、
- 米国農家や林業関係者への圧力
- トランプ政権を支える政治基盤への波及
- 「関税には対抗手段がある」というシグナル
を送る狙いがあると考えられます。全面的な報復ではなく、ポイントを絞った措置だからこそ、相手に与えるメッセージ性は強くなります。
「フェンタニル対策」で正当化できるのか
トランプ大統領は、今回の追加関税を、フェンタニルという合成オピオイドの流入を止めるための圧力だと説明してきました。カナダ、中国、メキシコが十分な対策を取っていないというのがその理由です。
しかし、麻薬問題という極めて複雑な社会・治安の課題に対し、幅広い貿易全体に関税をかけることが、どれほど実効性のある解決策と言えるのでしょうか。
- フェンタニル対策には、警察・税関・保健分野などの協調が不可欠
- 犯罪組織はルートや手法を変えるため、単純な経済制裁だけでは対応しきれない
- 広範な関税は、麻薬とは無関係な企業や消費者にまで負担を広げてしまう
結果として、「麻薬対策」を名目にした関税拡大は、本来守るべき自国民にコストを押し付ける政策になりかねません。
関税という「賭け」が生む不安定さ
トランプ政権が進める今回の関税強化は、交渉カードとして関税を使うタリフ・ギャンビット(関税という賭け)といえます。ただし、ギャンブルである以上、見誤れば自らが損をするリスクも大きくなります。
グローバルなサプライチェーン(部品や製品が国境をまたいで動く仕組み)が密接に絡み合う現在、ひとつの国が関税を引き上げれば、
- コスト増で企業が投資を控える
- 不確実性の高まりで雇用計画が立てにくくなる
- 報復措置の連鎖で、互いに損をする「負け戦」になる
といった連鎖が生まれやすくなります。強硬姿勢を示すことは政治的には分かりやすい一手ですが、経済的な合理性は別問題です。
私たちが注目すべき問い
今回のニュースから、私たちが考えたいポイントはシンプルです。
- 関税のコストを最終的に払うのは誰か
- 安全保障や社会問題の解決に、貿易制裁は本当に有効なのか
- 相互依存が進んだ2020年代の世界で、「勝者だけの制裁」はあり得るのか
関税や制裁は、短期的には「強さ」の象徴として映ります。しかし、その影響が消費者や労働者、そして中小企業にまで広がるとき、私たちはその政策をどのように評価すべきなのか。今後の動きとともに、冷静に見ていく必要があります。
Reference(s):
cgtn.com







