米関税20%時代、中国のテック自立は両会でどこまで進むのか video poster
米国による対中国関税の引き上げで世界の貿易秩序が揺れる中、中国の両会はテック自立とグリーン成長の行方を左右する重要な場になろうとしています。コロンビア大学のジェフリー・サックス教授は、この転換点をどう見ているのでしょうか。
米国の関税引き上げで揺れる世界貿易
米国が対中国関税を20%に引き上げる中、世界では新たな「貿易の混乱」への警戒感が高まっています。中国側はこうした措置を「無謀」と批判し、世界経済全体への悪影響を警告しています。多くのエコノミストも、物価上昇やサプライチェーンの混乱が起きる可能性を指摘しています。
サックス氏が挙げる「中国経済の3本柱」
こうした逆風の中でも、サックス氏は「中国経済は根本的に強い」と強調します。その強さの源泉として、次の3つの柱を挙げました。
- AIや量子技術など先端分野に支えられた高度な技術基盤
- 高いスキルを持つ豊富な労働力
- アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどに広がるグローバルなつながり
サックス氏は、中国がAI、量子コンピューティング、再生可能エネルギーといった最先端分野で「驚くべきペース」で前進していると評価します。それが、中国を世界有数の貿易パートナーへと押し上げる構造的な強さにつながっているという見方です。
内側の課題:不動産と都市部の債務
一方で、サックス氏は国内のリスクにも目を向ける必要があると指摘します。不動産セクターや都市部の経済に積み上がった高水準の債務は、中国経済にとって重要な弱点であり、早急な改革が求められると見ています。こうした負債の調整が遅れれば、成長の持続可能性が揺らぐ可能性があるという警鐘です。
外側の逆風:保護主義と関税の応酬
対外的には、米国の保護主義的な政策が最大の不確実性となっています。サックス氏は、米国による一方的な関税引き上げを「国家運営における無謀な一手」と批判し、世界貿易を不安定化させかねないと懸念します。
サックス氏によれば、米国は10年以上にわたり中国の成長を抑え込もうとしてきました。その結果、中国はASEAN、アフリカ、ラテンアメリカなど新たな市場の開拓に力を入れてきたといいます。今後、トランプ氏のような指導者の下で対立が再び激化する可能性があっても、「中国はこの挑戦を乗り越えるだろう」と同氏は見ています。その適応力は並外れているという評価です。
2025年の両会と「中国式現代化」
2025年の全国両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)を前に、サックス氏は「中国式現代化」が中国の戦略の中核になると強調しました。
中国は、ゼロカーボンエネルギー、電気自動車、次世代の原子力発電など、グリーン技術の分野で優位性を高めてきました。サックス氏は、こうした分野が国内成長のエンジンであると同時に、地球規模の気候危機を乗り越える鍵にもなると見ています。
世界は、気候変動を抑えつつ成長を維持できる「手ごろで実用的な解決策」を求めています。サックス氏は、中国を単なる供給国ではなく、このグローバルな転換を設計する不可欠な存在として位置づけています。
テック自立とデジタル・グリーン基盤の輸出
同氏は、AIや量子技術、再生可能エネルギーといった先端分野での前進が続くかぎり、中国は世界のデジタル・グリーンインフラの主要な提供者であり続けると予測します。
一方で米国が化石燃料や貿易障壁にこだわり続けているとサックス氏は見ており、その「後ろ向きなこだわり」がかえって中国の競争力を高める要因になりうると指摘します。保護主義が強まるほど、コスト面と技術面で優位に立つ中国への依存度は高まるという見立てです。
一帯一路を「30〜40年スパン」で見る
この文脈でサックス氏が重視するのが、一帯一路イニシアチブの長期性です。中国がアジアやアフリカ、ラテンアメリカなど新興国との協力をさらに深めるためには、30〜40年という長期を見据えた資金モデルが重要だと提案します。
返済期間の長い融資や長期投資を通じてパートナー国のインフラや産業を育てていくことで、「忍耐は繁栄を生む」とサックス氏は語ります。こうした姿勢は、経済だけでなく、政治的な信頼関係の構築にもつながると見られています。
グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国との協力を積み重ねることで、中国は経済的な結びつきだけでなく、長期的な信頼も確保しようとしているという分析です。
「協調か分断か」世界が迫られる選択
サックス氏は、再生可能エネルギー、5G、電気自動車といった技術は、もはや特定の国の勝利ではなく、人類全体にとっての必需インフラだと強調します。
中国がコスト面でも技術面でもこうした分野をリードし続けるなら、各国は二つの選択肢の間で決断を迫られます。すなわち、多国間協調の枠組みの中で中国を含む各国の強みを生かすのか、それとも地政学的な対立を優先し、サプライチェーンの分断や経済の不安定化というリスクを受け入れるのか、という選択です。
2025年末の今、中国はグリーン技術とデジタル技術の両面で存在感を一段と高めています。サックス氏の分析は、米中対立という二国間の物語を超え、気候危機や経済の持続可能性という人類共通の課題にどう向き合うかを、静かに問いかけています。
Reference(s):
Can the Two Sessions Decode China's Trillion-Dollar Tech Endgame?
cgtn.com








